天は地に夢をみる

秋赤音

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思いやる心

4.幸せの、その先を

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煉に加護を与えるようになってからは、色々なことがあった。
まず、煉の結婚と子供の誕生。煉の早すぎる妻との別れ。
魔力の強い子供を想い悩む煉は、国を出ようとしていた。
そこで、”偶然”に出会うよう仕向けたヴァン・クレイドと煉は出会う。
強い魔法士を探していたヴァンは、煉の望みを叶える手伝いを約束して契約は成立。
クレセントの神官の席を用意して、煉をクレイド家の養子に迎えた。
入りびたるヴァーレンは、煉が作る食事が気に入り、
ますます入りびたるようになる。
人間の変動する事情に初めて興味をもったことは、貴重な経験だった。
生みの親にお気に入りがいて、それが煉の娘に関わっていることには驚いた。
事態は収拾し、アルヴァはお気に入りの魂を得たと聞く。
お気に入りがあの国王だとは思わなかったが、幸せそうなので良しとする。


「なあ、煉」
「なんですか」
「煉は、今、幸せか?」

その問いに、一瞬だけ不思議そうな顔をした。
そして、目じりをさげて、嬉しそうに笑う。

「おかげさまで。とても。ありがとうございます」
「よかった」

心の底から、そう思った。
楽ではない道のりだが、面白く、
楽しい毎日にたどり着いた奇跡を守ろうと改めて決意する。
見守ることしかできないけれど、それでも、きっと、意味はあると信じて。

「そろそろ、一壬がきます。
お菓子ができるまでは、一応、隠れてください」
「はい。神官様」

隠れたすぐ後に、遠くから三つの気配がする。

「お父様、お父様ー」

会えるのが嬉しいことを隠さない様子で、神官様ではなく堂々と父と呼ぶ一壬。

「おい、走らなくても神官様は逃げないって…」
「レオン。一壬は、もう向こうにいます」

悔しそうな王子と王女は、ため息をつきながらも、優しく見守っている。
他人を思いやる心に、クレセントの未来は、きっと明るいと感じる。

「…レイア、ゆっくり行こう」
「そうですね」

煉の傍で一壬が二人の方へ手を振ると、二人は同時に駆ける。
四人が集まると、食堂へ向かう。
今日は一緒にお菓子を作るそうなので、出来上がりを楽しみに待つことにした。

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