24 / 53
思いやる心
4.幸せの、その先を
しおりを挟む煉に加護を与えるようになってからは、色々なことがあった。
まず、煉の結婚と子供の誕生。煉の早すぎる妻との別れ。
魔力の強い子供を想い悩む煉は、国を出ようとしていた。
そこで、”偶然”に出会うよう仕向けたヴァン・クレイドと煉は出会う。
強い魔法士を探していたヴァンは、煉の望みを叶える手伝いを約束して契約は成立。
クレセントの神官の席を用意して、煉をクレイド家の養子に迎えた。
入りびたるヴァーレンは、煉が作る食事が気に入り、
ますます入りびたるようになる。
人間の変動する事情に初めて興味をもったことは、貴重な経験だった。
生みの親にお気に入りがいて、それが煉の娘に関わっていることには驚いた。
事態は収拾し、アルヴァはお気に入りの魂を得たと聞く。
お気に入りがあの国王だとは思わなかったが、幸せそうなので良しとする。
「なあ、煉」
「なんですか」
「煉は、今、幸せか?」
その問いに、一瞬だけ不思議そうな顔をした。
そして、目じりをさげて、嬉しそうに笑う。
「おかげさまで。とても。ありがとうございます」
「よかった」
心の底から、そう思った。
楽ではない道のりだが、面白く、
楽しい毎日にたどり着いた奇跡を守ろうと改めて決意する。
見守ることしかできないけれど、それでも、きっと、意味はあると信じて。
「そろそろ、一壬がきます。
お菓子ができるまでは、一応、隠れてください」
「はい。神官様」
隠れたすぐ後に、遠くから三つの気配がする。
「お父様、お父様ー」
会えるのが嬉しいことを隠さない様子で、神官様ではなく堂々と父と呼ぶ一壬。
「おい、走らなくても神官様は逃げないって…」
「レオン。一壬は、もう向こうにいます」
悔しそうな王子と王女は、ため息をつきながらも、優しく見守っている。
他人を思いやる心に、クレセントの未来は、きっと明るいと感じる。
「…レイア、ゆっくり行こう」
「そうですね」
煉の傍で一壬が二人の方へ手を振ると、二人は同時に駆ける。
四人が集まると、食堂へ向かう。
今日は一緒にお菓子を作るそうなので、出来上がりを楽しみに待つことにした。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
伝える前に振られてしまった私の恋
メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。
そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
【本編完結・R18】旦那様、子作りいたしましょう~悪評高きバツイチ侯爵は仔猫系令嬢に翻弄される~
とらやよい
恋愛
悪評高き侯爵の再婚相手に大抜擢されたのは多産家系の子爵令嬢エメリだった。
侯爵家の跡取りを産むため、子を産む道具として嫁いだエメリ。
お互い興味のない相手との政略結婚だったが……元来、生真面目な二人は子作りという目標に向け奮闘することに。
子作りという目標達成の為、二人は事件に立ち向かい距離は縮まったように思えたが…次第に互いの本心が見えずに苦しみ、すれ違うように……。
まだ恋を知らないエメリと外見と内面のギャップが激しい不器用で可愛い男ジョアキンの恋の物語。
❀第16回恋愛小説大賞に参加中です。
***補足説明***
R-18作品です。苦手な方はご注意ください。
R-18を含む話には※を付けてあります。
慰み者の姫は新皇帝に溺愛される
苺野 あん
恋愛
小国の王女フォセットは、貢物として帝国の皇帝に差し出された。
皇帝は齢六十の老人で、十八歳になったばかりのフォセットは慰み者として弄ばれるはずだった。
ところが呼ばれた寝室にいたのは若き新皇帝で、フォセットは花嫁として迎えられることになる。
早速、二人の初夜が始まった。
最悪なお見合いと、執念の再会
当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。
しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。
それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。
相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。
最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
えっと、幼馴染が私の婚約者と朝チュンしました。ドン引きなんですけど……
百谷シカ
恋愛
カメロン侯爵家で開かれた舞踏会。
楽しい夜が明けて、うららかな朝、幼馴染モイラの部屋を訪ねたら……
「えっ!?」
「え?」
「あ」
モイラのベッドに、私の婚約者レニー・ストックウィンが寝ていた。
ふたりとも裸で、衣服が散乱している酷い状態。
「どういう事なの!?」
楽しかった舞踏会も台無し。
しかも、モイラの部屋で泣き喚く私を、モイラとレニーが宥める始末。
「触らないで! 気持ち悪い!!」
その瞬間、私は幼馴染と婚約者を失ったのだと気づいた。
愛していたはずのふたりは、裏切り者だ。
私は部屋を飛び出した。
そして、少し頭を冷やそうと散歩に出て、美しい橋でたそがれていた時。
「待て待て待てぇッ!!」
人生を悲観し絶望のあまり人生の幕を引こうとしている……と勘違いされたらしい。
髪を振り乱し突進してくるのは、恋多き貴公子と噂の麗しいアスター伯爵だった。
「早まるな! オリヴィア・レンフィールド!!」
「!?」
私は、とりあえず猛ダッシュで逃げた。
だって、失恋したばかりの私には、刺激が強すぎる人だったから……
♡内気な傷心令嬢とフェロモン伯爵の優しいラブストーリー♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる