願いと欲望

秋赤音

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封じられた欲望

慈しむ者(1)

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「この中で、誰が良い?」

お兄様の婚約者を探すパーティが終わると、お父様が言った。
齢三歳だった僕は、両親に連れられ歩いていた。
一人だけ気になった少女の特徴を言った。
二番目のお兄様の婚約者探しでも同じことを繰り返し聞かれたが、
特別に気になる人はいなかったことを言った。
翌日からは大人になるための勉強も加わり、覚えることが増えて大変になった。
勉強と武術の訓練に集中したおかげもあり、何事もなく時間は過ぎた。

ある日。
両親に「会わせたい人がいる。婚約者になる人だ」と言われた。
僕の婚約鞘を決めるパーティが開かれなかった理由は、おそらく決まっていたからだろう。
貴族の結婚は、家同士の関係や高貴な血で後継者を作るためのものでしかない。
民のように愛情を必要としないのは、ある意味で救いだった。

「セレン・リリスです。よろしく、おねがいします」

緊張で染まる赤い頬と、懸命に浮かべる笑み。
澄んだ声と青紫が煌めく瞳。
感情が制御しきれていないでこぼれる魔力は温かかった。
僕が守りたい。僕だけのものにしたい。
芽生えた感情は、僕なりの愛。
四歳の生誕祭の翌日だった。
ウィルネス・ローザは、大きな決心した。
三男らしさと、跡取り候補としての責任を背負う身に初めて生まれた欲だった。


愛する人と親睦を深め、「互いに支え合い、生涯を共に生きよう」と約束した。
これからも一緒にいられると、思っていた。

日ごと美しくなるセレン。
その姿に魅了されるのは僕だけではない。
隙あらば、と機会を狙う貴族も増えていく。
王宮を揺るがそうと企む者の的にもなっている。
僕との婚約を破棄させるよう仕向けようと企てる者もいたが、
リリス家の者と協力し潰した。
しかし、あまりにも数が多く処理が大変になってきた末、僕たちは一つの結論を出した。

用意が整い、温かな日差しが降り注ぐ下、僕はセレンの手をとり歩く。
王宮の中にある別館に、セレンと信頼できる僕の従者を連れた。

「しばらくは、ここが、セレンの家になります。
僕の部屋もありますし、帰る場所はここです。
これからは、一緒にいられる時間が増えますね」

「ウィル様…ありがとうございます」

何か言おうとしたセレンは息をのんで、何かをのみこんだ。
苦しそうな笑みを浮かべる頬に口づけ、そっと抱きしめる。

「大丈夫。何があっても僕たちは一緒です」

「はい」

弱い力で握られた上着の裾。
何をしてでも守ろう。
傷一つさえ、つけさせない。
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