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叶えられた欲望
愛される者(2)
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セレン・リリスは、親同士が決めた婚約相手と会う日が憂鬱だった。
パーティで気の合う異性がいた。
両親は、「家の位は同じくらいで問題はない」と言ってくれたのに。
「三女だから、許容の範囲なら好きな相手といてもいい」と言ってくれた。
また会おうね、と約束したのに。
二度と、今までのように気安く話すことはできなくなった。
「ウィルネス・ローザです。
ウィルと呼んでください。
僕は、セレン様を絶対に幸せにします」
自信に満ちるキラキラとした笑顔。
明るくハリのある声が宣言した言葉に、なぜか惹かれた。
赤紫色の目は宝石のようだった。
セレン・リリスは、一目で恋に落ちた。
齢三歳。初恋だった。
歳が一つ上のウィル様。
三番目の子供同士ならではの共感もあり、ウィル様と楽しく過ごした一年。
大人になっても続くと思っていた未来。
しかし、待っていたのは別れだった。
四歳で聖女候補に決まった。
ウィル様との婚約はなかったことにされた。
習わしに従い、セレン・リリスは貴族から平民になり、
ただのセレンとして孤児院で暮らすことになった。
寂しかった。
魔術の勉強で気を紛らわし、教会でウィル様の幸せを祈る日々。
おそらく、今頃は新しい婚約者を選んでいるのだろう。
哀しさと嫉妬で裂けそうになる心は見ないようにして封じた。
孤児院にきて七日が過ぎた夜、変化は訪れた。
「彼に、会いたいですか?」
いつものように祈りを捧げてベッドで眠った、はずだった。
声が聞こえて目を開けると、真っ白な空間に立っていた。
そして、目の前には白金の光が浮かんでいる。
「聞こえてますか?僕はここです」
「本当に声が…あなたは、天使様ですか?」
大人は言っていた。
「祈っていれば天使様が見つけてくれる。
そして、大いなる知恵を授けてくださる」と。
「はい。僕は皆様から天使と呼ばれています。
あなたは、彼と会いたいですか?
いつも幸せを祈っている彼に」
優しい声に揺らいだ。
もう、彼とは終わった関係だから。
誰にも言ってはいけないことだから。
でも、叶うなら。
でも、叶えてはいけないから。
「ここにいるのは僕たちだけです。
誰にも言わないし、聞こえない。
目が覚めても、この体には何の関係もないです」
耳元で囁された言葉は甘い毒のようだった。
良くないと分かっていても、抗えない何かがあった。
「会いたい、です」
「会うだけで、良いんですか?」
「彼の婚約者は、私、が…私がいい!!」
吐き出した言葉はとまらない。
「叶うとしたら、どうしますか?」
「叶う方法を、選びます」
溢れた感情はとまらない。
「セレン・リリス…今は、セレンでしたね。
僕が、あなたの幸せを手伝います。
違えられない契約を交わしますか?」
「契約します。
セレン・リリス…いえ、セレンは天使様と契約します」
「わかりました。
我が名はリーシャ。
夢にいるときだけ、セレンだけが呼んでもいい名前です。
目が覚めているときは存在を誰にも明かさないでくださいね」
「はい。リーシャ様」
返事をすると光から現れたのは、綺麗な白金の髪に青い瞳の青年だった。
初めて交わした口づけは、甘く濃い魔力が行き交い温かかった。
明るい時間は勉強や訓練と施設の整備をする。
食事を終えてベッドで眠れば、リーシャ様と楽しく淫らなお話の時間がやってくる。
夢の中だけ大人の姿にしてもらい、ベッドの上で異性を悦ばせる練習をする。
ある日は、男の証を咥えて愛撫をする。
ある日は、うつ伏せて背後からリーシャ様の魔力を注いでいただく。
今日はリーシャ様の腰に跨り、自ら胎の奥に男の証を受け入れる。
そして、重く圧迫するそれから、たくさんの魔力をいただく。
毎夜欠かさないで続けているおかげか、目が覚めても体に保つ魔力が増えている。
「そう。上手くなっています。
彼は、きっとセレンに夢中になります」
「ん…ぁっ、はい…っ、嬉しい、です。
もっと、がんばり、ます…ぅん…ぁっ、はっ、んんっ」
初めて貫かれたときは痛かったが、知った気持ちよさはやめられない。
早くウィル様と繋がりたい。
ウィル様の魔力を溢れる程に注いでほしい。
「受け取ってください。今日の分です」
「んっ、は、ぃ…っ!いただきます…っ、ん、んぁっぁあああああっ!!」
注がれる魔力を感じながら目を閉じる。
「また明日ですね」
優しい声は遠くなる。
目が覚めると、見慣れた孤児院の天井がある。
今日も一日が始まる。
孤児院にきて一年が過ぎた頃。
ウィル様と再会する機会を得た。
「セレン。
聖女の役目を終えたら、王宮を継ぐ者をウィルネスと共に育んでほしい」
突然の訪問だった。
元婚約者のお父様で、国を統べる王のシェルネス・ローザ様は、
優しい笑みで告げた。
後日。
応接室に呼ばれて行くと、近づくたびに恋しい気配を感じた。
部屋に入ると、懐かしい温度に抱きしめられた。
ウィル様はご両親を連れて、目の前に現れた。
「セレン。会いたかったです。
今日は、婚約を結び直すためにきました。
ご両親は承諾しています」
「ああ…息子の態度が悪く、申し訳ない。
一度、離れなさい」
「嫌です」
さらに強くなった抱きしめられる腕の圧。
隙間がないくらいの抱擁も、再び巡り合えたことも嬉しい。
声に出せないので、少しだけウィル様の腕に手を添えた。
パーティで気の合う異性がいた。
両親は、「家の位は同じくらいで問題はない」と言ってくれたのに。
「三女だから、許容の範囲なら好きな相手といてもいい」と言ってくれた。
また会おうね、と約束したのに。
二度と、今までのように気安く話すことはできなくなった。
「ウィルネス・ローザです。
ウィルと呼んでください。
僕は、セレン様を絶対に幸せにします」
自信に満ちるキラキラとした笑顔。
明るくハリのある声が宣言した言葉に、なぜか惹かれた。
赤紫色の目は宝石のようだった。
セレン・リリスは、一目で恋に落ちた。
齢三歳。初恋だった。
歳が一つ上のウィル様。
三番目の子供同士ならではの共感もあり、ウィル様と楽しく過ごした一年。
大人になっても続くと思っていた未来。
しかし、待っていたのは別れだった。
四歳で聖女候補に決まった。
ウィル様との婚約はなかったことにされた。
習わしに従い、セレン・リリスは貴族から平民になり、
ただのセレンとして孤児院で暮らすことになった。
寂しかった。
魔術の勉強で気を紛らわし、教会でウィル様の幸せを祈る日々。
おそらく、今頃は新しい婚約者を選んでいるのだろう。
哀しさと嫉妬で裂けそうになる心は見ないようにして封じた。
孤児院にきて七日が過ぎた夜、変化は訪れた。
「彼に、会いたいですか?」
いつものように祈りを捧げてベッドで眠った、はずだった。
声が聞こえて目を開けると、真っ白な空間に立っていた。
そして、目の前には白金の光が浮かんでいる。
「聞こえてますか?僕はここです」
「本当に声が…あなたは、天使様ですか?」
大人は言っていた。
「祈っていれば天使様が見つけてくれる。
そして、大いなる知恵を授けてくださる」と。
「はい。僕は皆様から天使と呼ばれています。
あなたは、彼と会いたいですか?
いつも幸せを祈っている彼に」
優しい声に揺らいだ。
もう、彼とは終わった関係だから。
誰にも言ってはいけないことだから。
でも、叶うなら。
でも、叶えてはいけないから。
「ここにいるのは僕たちだけです。
誰にも言わないし、聞こえない。
目が覚めても、この体には何の関係もないです」
耳元で囁された言葉は甘い毒のようだった。
良くないと分かっていても、抗えない何かがあった。
「会いたい、です」
「会うだけで、良いんですか?」
「彼の婚約者は、私、が…私がいい!!」
吐き出した言葉はとまらない。
「叶うとしたら、どうしますか?」
「叶う方法を、選びます」
溢れた感情はとまらない。
「セレン・リリス…今は、セレンでしたね。
僕が、あなたの幸せを手伝います。
違えられない契約を交わしますか?」
「契約します。
セレン・リリス…いえ、セレンは天使様と契約します」
「わかりました。
我が名はリーシャ。
夢にいるときだけ、セレンだけが呼んでもいい名前です。
目が覚めているときは存在を誰にも明かさないでくださいね」
「はい。リーシャ様」
返事をすると光から現れたのは、綺麗な白金の髪に青い瞳の青年だった。
初めて交わした口づけは、甘く濃い魔力が行き交い温かかった。
明るい時間は勉強や訓練と施設の整備をする。
食事を終えてベッドで眠れば、リーシャ様と楽しく淫らなお話の時間がやってくる。
夢の中だけ大人の姿にしてもらい、ベッドの上で異性を悦ばせる練習をする。
ある日は、男の証を咥えて愛撫をする。
ある日は、うつ伏せて背後からリーシャ様の魔力を注いでいただく。
今日はリーシャ様の腰に跨り、自ら胎の奥に男の証を受け入れる。
そして、重く圧迫するそれから、たくさんの魔力をいただく。
毎夜欠かさないで続けているおかげか、目が覚めても体に保つ魔力が増えている。
「そう。上手くなっています。
彼は、きっとセレンに夢中になります」
「ん…ぁっ、はい…っ、嬉しい、です。
もっと、がんばり、ます…ぅん…ぁっ、はっ、んんっ」
初めて貫かれたときは痛かったが、知った気持ちよさはやめられない。
早くウィル様と繋がりたい。
ウィル様の魔力を溢れる程に注いでほしい。
「受け取ってください。今日の分です」
「んっ、は、ぃ…っ!いただきます…っ、ん、んぁっぁあああああっ!!」
注がれる魔力を感じながら目を閉じる。
「また明日ですね」
優しい声は遠くなる。
目が覚めると、見慣れた孤児院の天井がある。
今日も一日が始まる。
孤児院にきて一年が過ぎた頃。
ウィル様と再会する機会を得た。
「セレン。
聖女の役目を終えたら、王宮を継ぐ者をウィルネスと共に育んでほしい」
突然の訪問だった。
元婚約者のお父様で、国を統べる王のシェルネス・ローザ様は、
優しい笑みで告げた。
後日。
応接室に呼ばれて行くと、近づくたびに恋しい気配を感じた。
部屋に入ると、懐かしい温度に抱きしめられた。
ウィル様はご両親を連れて、目の前に現れた。
「セレン。会いたかったです。
今日は、婚約を結び直すためにきました。
ご両親は承諾しています」
「ああ…息子の態度が悪く、申し訳ない。
一度、離れなさい」
「嫌です」
さらに強くなった抱きしめられる腕の圧。
隙間がないくらいの抱擁も、再び巡り合えたことも嬉しい。
声に出せないので、少しだけウィル様の腕に手を添えた。
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