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封じられた欲望
清らかな者(1)
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新しい食事方法を覚えて数か月後。
成人の証である七歳の生誕祭の夜に、ヒカリさんはさらに新しい方法を教えてくれた。
ここでしたことは体に影響しない、という前置きから始まった説明は魅力しかなかった。
口を合わせるよりも魔力が体に入ると聞き、迷わず提案を受け入れた。
魔力は少ないよりも多い方がいい。
舐めていた光の棒がお腹に入ったときは痛かったが、
ゆっくりと馴染んで一つになった温かさが心地よかった。
注がれた液体に込められた魔力は濃厚で、
今まで飲みこぼしていたことに後悔をした。
空腹が満たされたらしいヒカリさんは上機嫌に私を抱きしめる。
「本当の名前はね」
リーシャ、と。
繋がったまま耳元で囁かれた名前を心に刻む。
私だけが知り、私だけが呼んでいい名前だという。
「私たちだけの秘密、ね」
二人だけの特別で嬉しい気持ちと温かさを感じながら、
瞼を閉じた。
翌日。
魔力測定で王宮の目の止まったらしい私は、魔王封印の要になる巫女に選ばれた。
すぐに孤児院から四の島に移動が決まり、秘宝の鞘を埋め込まれて隔離された。
『取り出すには、外側から直接、体に魔力を注がなければいけない』と残して。
盾を渡すには、勇者と交わることは避けられないだろう。
私は、妾だから乙女でなくてもいいのかもしれない。
一人だけの島だが、寂しくはなかった。
眠れば会える友人がいる。
一人きりの寂しさはない。
私は、とても幸せだ。
日が高いうちは掃除と魔術の鍛錬。
月がのぼればベッドに入って目を閉じる。
リーシャと体が意識を放すまで熱を交わす。
目を開ければ、朝の陽がただ眠っていただけの体を照らす。
いつの間にか、食事はリーシャと交わす魔力だけで充分に空腹が満たされるようになっていた。
どれくらい時が流れたのかは分からない。
ある日、鳥居の前を掃除していると体から力が抜けて尻が地面に落ちる。
近くまで感じた秘宝の魔力で体の奥が震える。
手足で地を這い鳥居にもたれかかるが、剣に共鳴するような鞘の魔力は体の感覚を狂わせていく。
「ぁ、ぁんぁあっ、な、に、これ、あつ…ぃっっ」
触っていないのに腹の奥が強く波打った。
溢れて足や地に伝う水はとまらない。
夢で覚えた感覚が現実で再現されている。
「あっ、なん、で…っ、なにも、してな、ぁ…んっっ」
しかし、思い浮かべた熱の圧はない。
力が入らない体は、触れずに迎える何度目かの最果てで意識を放す。
「アンナ」
恋しい声と温かさで目を開けると、会いたい人に包まれていた。
暴走ずる魔力は暴力のように体の内を巡り、夢にまで現実は続いている。
リーシャが蜜口にふれることなく、魔力を含んだ水はこぼれている。
「ぁ、ぁあああっ、ん、んっ、ぁ、リーシャ、わた、し、、変、なの…っ」
「大丈夫。僕が鎮めるから」
「んんっ、リーシャ、りーしゃぁ…ぁああああぁあっ」
待っていた熱の圧が一気に身の奥までを満たした。
本能のまま求めあえば鎮まった暴走だが、ぐったりとした倦怠感と眠気で瞼が重い。
「いつでも僕は傍にいるからね」
優しい声にうなずくと、ゆっくり気配が遠くなる。
「おやすみ、僕のアンナ」
濡れている衣服が乾く感覚と、温かい何かで体が包まれる。
抗うことなく微睡に身を委ねた。
再び魔力が暴走し始めた感覚で目が覚める。
身に宿した鞘が解放を促しているようだ。
久しぶりに感じる空腹感に、
さっきまで食べたはずのリーシャの魔力が恋しくなる。
しかし、ここにはいない。
「おなかすいた」
少しだけ、ほんの少しだけ、リーシャに近い魔力を感じた。
乙女のままなら、少しくらい、食べてもいいはず。
まだフラフラする体に力をいれて、魔力の在るところへ近づいた。
成人の証である七歳の生誕祭の夜に、ヒカリさんはさらに新しい方法を教えてくれた。
ここでしたことは体に影響しない、という前置きから始まった説明は魅力しかなかった。
口を合わせるよりも魔力が体に入ると聞き、迷わず提案を受け入れた。
魔力は少ないよりも多い方がいい。
舐めていた光の棒がお腹に入ったときは痛かったが、
ゆっくりと馴染んで一つになった温かさが心地よかった。
注がれた液体に込められた魔力は濃厚で、
今まで飲みこぼしていたことに後悔をした。
空腹が満たされたらしいヒカリさんは上機嫌に私を抱きしめる。
「本当の名前はね」
リーシャ、と。
繋がったまま耳元で囁かれた名前を心に刻む。
私だけが知り、私だけが呼んでいい名前だという。
「私たちだけの秘密、ね」
二人だけの特別で嬉しい気持ちと温かさを感じながら、
瞼を閉じた。
翌日。
魔力測定で王宮の目の止まったらしい私は、魔王封印の要になる巫女に選ばれた。
すぐに孤児院から四の島に移動が決まり、秘宝の鞘を埋め込まれて隔離された。
『取り出すには、外側から直接、体に魔力を注がなければいけない』と残して。
盾を渡すには、勇者と交わることは避けられないだろう。
私は、妾だから乙女でなくてもいいのかもしれない。
一人だけの島だが、寂しくはなかった。
眠れば会える友人がいる。
一人きりの寂しさはない。
私は、とても幸せだ。
日が高いうちは掃除と魔術の鍛錬。
月がのぼればベッドに入って目を閉じる。
リーシャと体が意識を放すまで熱を交わす。
目を開ければ、朝の陽がただ眠っていただけの体を照らす。
いつの間にか、食事はリーシャと交わす魔力だけで充分に空腹が満たされるようになっていた。
どれくらい時が流れたのかは分からない。
ある日、鳥居の前を掃除していると体から力が抜けて尻が地面に落ちる。
近くまで感じた秘宝の魔力で体の奥が震える。
手足で地を這い鳥居にもたれかかるが、剣に共鳴するような鞘の魔力は体の感覚を狂わせていく。
「ぁ、ぁんぁあっ、な、に、これ、あつ…ぃっっ」
触っていないのに腹の奥が強く波打った。
溢れて足や地に伝う水はとまらない。
夢で覚えた感覚が現実で再現されている。
「あっ、なん、で…っ、なにも、してな、ぁ…んっっ」
しかし、思い浮かべた熱の圧はない。
力が入らない体は、触れずに迎える何度目かの最果てで意識を放す。
「アンナ」
恋しい声と温かさで目を開けると、会いたい人に包まれていた。
暴走ずる魔力は暴力のように体の内を巡り、夢にまで現実は続いている。
リーシャが蜜口にふれることなく、魔力を含んだ水はこぼれている。
「ぁ、ぁあああっ、ん、んっ、ぁ、リーシャ、わた、し、、変、なの…っ」
「大丈夫。僕が鎮めるから」
「んんっ、リーシャ、りーしゃぁ…ぁああああぁあっ」
待っていた熱の圧が一気に身の奥までを満たした。
本能のまま求めあえば鎮まった暴走だが、ぐったりとした倦怠感と眠気で瞼が重い。
「いつでも僕は傍にいるからね」
優しい声にうなずくと、ゆっくり気配が遠くなる。
「おやすみ、僕のアンナ」
濡れている衣服が乾く感覚と、温かい何かで体が包まれる。
抗うことなく微睡に身を委ねた。
再び魔力が暴走し始めた感覚で目が覚める。
身に宿した鞘が解放を促しているようだ。
久しぶりに感じる空腹感に、
さっきまで食べたはずのリーシャの魔力が恋しくなる。
しかし、ここにはいない。
「おなかすいた」
少しだけ、ほんの少しだけ、リーシャに近い魔力を感じた。
乙女のままなら、少しくらい、食べてもいいはず。
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