願いと欲望

秋赤音

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叶えられた欲望

2.恐怖と羞恥心

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「こんばんは」

「こんばんは」

今日も会えた。
口を合わせるようになって、数か月。
ヒカリさんに触れると、存在が確かなことに安心する。
温かい良いことを期待して体が熱を持ち始める。

「アンナ。今日は何があったの?」

「今日はね」

毎日変わらないことを楽しそうに聞いてくれるヒカリさん。
全てを放し終える頃に聞こえる空腹の音を始まりに、
私たちは口を合わせる。
体が熱い。
お腹が疼いて気持ち悪い。
こんなの、知らない。
助けて。怖い。

「…アンナ。大丈夫?」

「ヒカリさん…お腹、気持ち悪い」

「うん。お腹のどこ?」

違和感がある場所に手をあてると、ヒカリさんの気配が近づいてきた。
手に重なった温かな感覚は、きっとヒカリさんの手。

「大丈夫。今、良くするから。まかせて」

「お願い、ヒカリさん…っ、な、に?ゃ、ぁ、あっ、なにを…っ」

ヒカリさんの手が動く。
自分ではあまり直接触れたことがないところが、
股が広げられたことで晒される。
股に温かい何かが擦れて疼き、避けようとすればさらに押し当てられる。
ついに足に水が落ちてきた。
お漏らしをしているかもしれないと思うと恥ずかしい。
それに、ここは結婚する人にしか見せてはいけないと教わっていた。

「アンナ。まだお腹がいっぱいになってないよ」

「ひかり、さ…んっ、魔力、食べて…っっ」

いけないと知りながら、空腹を告げるヒカリさんを満たすことを選んだ。
どこかで水が流れる音がする。
やはりお漏らしをしている。
でも、ヒカリさんは気にしていないらしい。
今は空腹を満たしてもらおう。
再び口を合わせると、温かい舌が口の中を這う。
熱い体はさらに熱く、しだいに意識が霞んでくる。

「アンナ」

「ひかり、さ…っ!」

嬉しそうに呼ばれた名前。
ふいに感じた目の眩しさで瞼を閉じる。
お腹の違和感が消えたと同時にヒカリさんも消えた。


目を開けると、見慣れた天井。
今日も孤児院は変わらない時間が過ぎた。
夜になりベッドに入り、目を閉じる。

「こんばんは」

「こんばんは」

最後に呼ばれた声色と直前の感覚を思い出す。
あれは何だったのだろうか。
気にしないように意識するほど、疼く体はすでに熱い。

「アンナ。顔が赤いけど、大丈夫?」

「だ、大丈夫…っ」

急に気配が近くなった。
額に感じる感触に、ヒカリさんの手か額が触れているのが分かる。

「そう?今日はご飯食べるの、やめようか?」

「だめ。ご飯は、食べないと」

「まあ…あ、昨日は、いつもより美味しかった」

嬉しそうに言うヒカリさん。
ご飯が美味しいのが嬉しいのは当たり前だ。
あれが良いことだとすれば、私にもヒカリさんにも良いことだ。
でも、いけないこともある。

「よかった。でも、口を合わせるだけにしてほしいな?」

「わかった。ありがとう。アンナ、大好き」

体を包まれ温かさに身を預けると、ゆっくり背中に地面が当たった。
口を塞がれるが、いつもと違う状況に戸惑うが従う。
擦れ合う体が相手の体温を伝える。
この熱さは私のものか、ヒカリさんのものかは分からないが心地よい。
お腹の違和感もなくなり、しだいに眠くなってくる。

「おやすみ。アンナ」

優しい声はゆっくりと遠のいていった。

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