願いと欲望

封じられた欲望

2.期待と不安

七歳という成人の翌年は、生きる道を分ける。
男子にとって勇者という役目は憧れの一つ、らしい。
女子は巫女や聖女を目指す者もいる、らしい。

「俺が勇者だ」

「いいや。俺だよ」

「いいーや。俺だね」

集められた同じ年の男子たちは、選ばれるのは自分だと自信に満ちた顔で言い合っている。
魔王の封印を強化するために、選ばれた巫女と共に封印を行うのが役目。
巫女と聖女と勇者は魔力が高い者から選ばれるので、孤児も候補審査の対象となる。
見事に達成すれば豪華か褒美がもらえる。
さらに、王宮側から望まれれば王宮の仲間入りも不可能ではなく、
良い暮らしをしようと苦労は大きくても目指す者は少なくない。
最終選考に残っただけでも仕事の幅も増えることから、
勇者になってもなれなくても良さがあるのが大きな魅力だと俺は思う。
最後まで残れただけで満足なので、今日は早く帰って眠りたい。

「僕だって…」

小さな声だが念がこもった音で呟かれた声が隣から聞こえた。
横目に見る顔は緊張からか青い。

「そんなに固まってると、頑張ってきた成果が出せないと思うが」

「え…？なんて、言いましたか」

戸惑うような声は、俺に視線を向けながら問う。

「緊張しすぎると、出せるものも出せなくなる、と思っただけだ」

「あなたは、僕を否定しないんですね」

「ここに残ったということは、選ばれている証だ。
それでも十分だと、俺は思うが」

「初めて…です。そんな風に言う人」

少し緊張が緩んだ声に目を向けると、嬉しそうに笑っている。

「そういう反応されたのは初めてだ。面白い人だな」

「僕、ウィネスです。あなたは？」

「俺はクオン」

「クオンさん…ありがとうございます。
僕、おかげでしっかりと頑張れそうです」

無邪気に笑う様に思わずつられて笑う。

「笑いましたね？」

「悪い」

「僕には目標があるんです」

無邪気な笑みも和らいだ声もそのままで、不安をまとった表情に変わる。