操り人形は幸せを見つける

秋赤音

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【第一章】祈り

68.明けない夜

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「レオン、くべる木が残り一本になった」
「とりあえず、今日の分は作るか
【トレース】」

レオンは、最後の一本を真似て複製した木を、暖炉にくべる。
まだ冷え込みが強いクレセント国では、暖をとる方法は生命線。

「【トレース】…私、レイアに渡してくる」
「待って。一緒に行く。
明日の講習は、ちょうどいいな」
「そうだね。”少ない魔力でたくさん生み出す”こと」
「会得すれば、魔法疲れが減るのがいいことよね」

正面からレイアがきて、話に加わる。

「くべる木を分けていただこうと思っていたけど…」
「リビングもちょうどなくなったから、作った。
ついでに分けに来た」

レオンは、一壬の方を一瞬みて、そう言った。

「ありがとう、レオン」
「行こうと言ったのは一壬だ」

レオンに名前を呼ばれた一壬は、少し肩をこわばらせる。
その頬は、少し赤い。

「そうだったの。一壬、ありがとう」

レイアは、レオンの行動と一壬の気持ち、
二人の様子に目じりをさげて微笑む。

「いえ。寒いのは皆同じですから。
ここまできたので、よければ運んでもいいですか?」

レイアの様子を伺うような笑みで、一壬はそう言うと、
レイアの部屋がある先を視線で見た。

「お願いするね。ありがとう」

そう言って、レイアは一壬がもっている短い木の束の一つをもつ。
一壬が申し訳なさそうに慌てていると、言葉を言う前に
一壬の目を見て笑う。

「…助け合い、だよね?」
「…はい。ありがとうございます」

観念した一壬と、満足そうなレイアの様子を黙ってみるレオン。
レイアの部屋につくと、暖炉へ木をくべて、予備を置く。
部屋の出口まで二人を見送ったレイアは、
寒さで指先や頬を赤くする一壬とレオンが手を繋いで、
きた道を戻るの姿を見て扉をしめた。

静かになった部屋で、窓のカーテンをあけ、
その先に広がる景色をみる。
漆黒と紫紺、赤みのある深い紫、そして昼のような青空が混じる明るい空。
月は変わらず、星も見えるが、これで眠ると長い夕寝のような気分になる。
気づけば当たり前になっていた、明るい夜。
日を追うごとに明るい時間が増えていると聞く。
長い日照時間、雨が降っても足りない程の干ばつから始まった異常は、
確実に日常生活の当たり前を変えている。

「何も、ないといいのだけれど」

レイアは平穏を祈り、カーテンをしめ、寝台にはいり、眠った。


祈るような思いは叶わず、魔法が使えない民から亡くなっていく。
家族のため、自分のためと、まだ続く寒さと、水と食料の確保に必死になる。
暴動や争いが起きないようにと、
王族は率先して必要な物を魔法で作り、民に分け与えながら、
民よりは安定しているが贅沢だらけの豪華さとは遠い自分たちの生活も維持している。
絢爛豪華な生活を送っている一部の貴族は、当然のように民への支援をするが、
非難を恐れて生活も少し質素に変えた。

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