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【第一章】祈り
24.クレセント魔法学院
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オーヴァル国にある魔法学園で式が行われている時間と同じころ。
クレセントでも同じことが行われていた。
クレセントの王族が運営する、この国で唯一の魔法研究所と学校を兼ねた学院。
黒曜石が柱や床すべてに使われた複数の建物で構成されている。
足元には、建物ごとに生地の色を変えて銀の刺繍で縁どられた織物。
窓には建物ごとに違う上品な淡い色に透かし柄あるの布が取り付けてあり、
ガラスの向こうにある景色を引き立てている。
「お疲れ様。学院長、話が長いよな」
「そうかな?お父様の方がもっと長いよ」
「確かに」
入学式を終えて教室に移動する人の群れの中に三人はいた。
王子と王女が和やかに話す後ろへ、話す二人をみて穏やかに微笑むアスカ国の王女がいる。
三人とも王族で、見た目も麗しいので人の目をひいている。
王子とアスカ国の王女の胸元には揃いのペンダントがあり、
大衆の好奇心を刺激する要素しかない。
しかし、当人たちは気に留めることなく目的地に着いた。
「ここがSクラス。生徒会でもあるけど、詳しくは後で。
一壬、これからもよろしくな」
「生徒会長は私です。レオンは副会長。一壬は書紀です。
活動の過程で、この国について学ぶことにもなります。
困ったことがあれば、私たちに遠慮なく言ってください。
よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
三人を除けば数名しかいない教室。
そのの一角で小さくまとまり、改めた挨拶をかわす三人。
嬉しさを隠さない王子のレオンと、緊張で笑顔がぎこちないアスカ国の王女の一壬。
それを、微笑ましく見守るように笑う王女のレイア。
「先に渡しますね。つけてください」
と、レイアが三つの腕輪を出す。
白銀の金属でできた細く中ぶりのものに、三つの小さな透明の石がついている。
それを一つずつ、一壬とレオンへ渡す。
ほぼ同時につけると、それぞれの腕に合う長さになり、三つの小さな石に色がつく。
『レイアです。繋がりましたか』
『こちらレオン。よく聞こえてる』
『一壬です。聞こえています』
三人は向き合ったまま目を合わせて笑う。
表情はそのままで、クレセント国の王族は話を続ける。
『フィンやラウスもメンバーにしていますが、実際はあまり出てきません』
『都合により難しいってことになってる。院の勉強と研究の掛け持ちで忙しいから』
『わかりました』
「では、そろそろオリエンテーションですね」
「そうだな。また後で」
「はい」
うなずき合い、それぞれの机につく。
直後、先生の足音がして、ドアが開くのと同時に始まりを合図する鐘がなった。
「はじめまして。これから三年間、あなた方の担任のヴァンです。
早速ですが、週があけた初めの授業で魔法試験をします。
各自、週末で準備をしておくように」
明るい声、不満な声、もはや声も出せないくらい緊張する者と様々な反応がでる。
懐かしむように目元が緩むヴァンは、眼鏡ごしに元気のいい生徒たちを眺めながら
話を続けた。
「秘密の話も筒抜けだよお。某も通いたい。れっつ、すくーる、らいふ!」
恨めしそうに水鏡に映る一壬たちを見ながら駄々をこねている神様。
「ヴァーレンは何を言ってるんだ」
「言うだけで満足するなら、逆にいいのでは」
「確かにな」
「二人ともひどいよお…」
和やかに話をする神たち。目は水鏡に向いたままで。
今日も穏やかな神殿では、保護者達がにぎやかに楽しく見守っている。
クレセントでも同じことが行われていた。
クレセントの王族が運営する、この国で唯一の魔法研究所と学校を兼ねた学院。
黒曜石が柱や床すべてに使われた複数の建物で構成されている。
足元には、建物ごとに生地の色を変えて銀の刺繍で縁どられた織物。
窓には建物ごとに違う上品な淡い色に透かし柄あるの布が取り付けてあり、
ガラスの向こうにある景色を引き立てている。
「お疲れ様。学院長、話が長いよな」
「そうかな?お父様の方がもっと長いよ」
「確かに」
入学式を終えて教室に移動する人の群れの中に三人はいた。
王子と王女が和やかに話す後ろへ、話す二人をみて穏やかに微笑むアスカ国の王女がいる。
三人とも王族で、見た目も麗しいので人の目をひいている。
王子とアスカ国の王女の胸元には揃いのペンダントがあり、
大衆の好奇心を刺激する要素しかない。
しかし、当人たちは気に留めることなく目的地に着いた。
「ここがSクラス。生徒会でもあるけど、詳しくは後で。
一壬、これからもよろしくな」
「生徒会長は私です。レオンは副会長。一壬は書紀です。
活動の過程で、この国について学ぶことにもなります。
困ったことがあれば、私たちに遠慮なく言ってください。
よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
三人を除けば数名しかいない教室。
そのの一角で小さくまとまり、改めた挨拶をかわす三人。
嬉しさを隠さない王子のレオンと、緊張で笑顔がぎこちないアスカ国の王女の一壬。
それを、微笑ましく見守るように笑う王女のレイア。
「先に渡しますね。つけてください」
と、レイアが三つの腕輪を出す。
白銀の金属でできた細く中ぶりのものに、三つの小さな透明の石がついている。
それを一つずつ、一壬とレオンへ渡す。
ほぼ同時につけると、それぞれの腕に合う長さになり、三つの小さな石に色がつく。
『レイアです。繋がりましたか』
『こちらレオン。よく聞こえてる』
『一壬です。聞こえています』
三人は向き合ったまま目を合わせて笑う。
表情はそのままで、クレセント国の王族は話を続ける。
『フィンやラウスもメンバーにしていますが、実際はあまり出てきません』
『都合により難しいってことになってる。院の勉強と研究の掛け持ちで忙しいから』
『わかりました』
「では、そろそろオリエンテーションですね」
「そうだな。また後で」
「はい」
うなずき合い、それぞれの机につく。
直後、先生の足音がして、ドアが開くのと同時に始まりを合図する鐘がなった。
「はじめまして。これから三年間、あなた方の担任のヴァンです。
早速ですが、週があけた初めの授業で魔法試験をします。
各自、週末で準備をしておくように」
明るい声、不満な声、もはや声も出せないくらい緊張する者と様々な反応がでる。
懐かしむように目元が緩むヴァンは、眼鏡ごしに元気のいい生徒たちを眺めながら
話を続けた。
「秘密の話も筒抜けだよお。某も通いたい。れっつ、すくーる、らいふ!」
恨めしそうに水鏡に映る一壬たちを見ながら駄々をこねている神様。
「ヴァーレンは何を言ってるんだ」
「言うだけで満足するなら、逆にいいのでは」
「確かにな」
「二人ともひどいよお…」
和やかに話をする神たち。目は水鏡に向いたままで。
今日も穏やかな神殿では、保護者達がにぎやかに楽しく見守っている。
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