操り人形は幸せを見つける

秋赤音

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【第一章】祈り

9.懇親会

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「レイア?」
「なんでもありません」
「ああ、そろそろティータイムですね」
「よろしければ、アスカ国で流行りの米を使った焼き菓子はいかがでしょうか?
お土産に緑茶もどうぞ」
「焼き菓子でしたら、オーヴァル自慢の紅茶もいかがですか?」
「いいな。土産にはクレセントの珈琲をぜひ」
「でしたら、ティーポットなど用意します」
「今、茶葉を渡します。リリィ」

頬の赤いレイアを気にかけるが、レイアがいた先を見て納得する獅子王。
あえて追求せず、時計をみて話題をみつける。
とんとんと話が進み、獅子王は従者を呼ぶ。

「ありがとう。戻ってください」

純白の髪に蜂蜜色の目をした女性は、綺麗に包まれた物を渡しお辞儀をして消えた。

「ご用意しますのでお待ちください」

部屋の隅にいたアスカ国の従者が、茶葉を受け取り部屋を出た。

「今のうちにプレゼント交換だな。ガレット」

狼王が呼んだ瞬間に褐色肌に深い赤色の目をした男性が現れる。
可愛く包まれた物を渡し、静かにお辞儀をして消える。

「先ほどお渡しした茶葉と同じものです。どうぞ」
「珈琲というものだ。豆を挽いたものをカップに入れて
湯を注ぐだけで飲める。簡単だろう」
「どちらも素晴らしい品ですね」

交換しあい扱い方の説明を終える頃、ノックとともに
ほのかに甘い香りの米粒が四角くまとまったお菓子と紅茶がきた。

器が空になり、大人が夢中に談笑していると
窓の外に夕暮れを伝える星がまたたく。

「そろそろディナーの支度ですね」
「見事な夕日だな。では、後ほど」
「はい。楽しみにしていてください」

盛大な歓迎パーティは穏やかに幕をとじた。
獣族たちは、明日の朝までそれぞれ用意されている和洋あわせた部屋で過ごす。
親子は見慣れた光沢のある木の床ではなく、植物性の敷物に座る。
窓にさがる”植物性の目隠しと日よけらしきもの”にも注目する。
未知な肌触りを楽しみつつ、備えてあった緑茶を飲みながら郷土本を読んでいる。

「「…美味い(美味しいですね)」」

それぞれの部屋で、ほぼ同じの時間に、同じことを考える獣王たち。
お土産用に手をつけないよう、薄くなるまで味わう。

「「「お父様、この葉の出涸らしは床の埃取りになるそうです。
少し試してもいいですか?」」」

獅子王の子と狼王の子らは、『先祖の知恵袋』と表紙に書かれた本の一部をみている。
まだ飲めると思っていた父親から少し茶葉をもらい、魔法で敷物の掃除を真似ていた。

「「…持ち帰るか?(楽しいか?)」」
「「「はい。面白いです」」」

王様用の連絡魔法具で初めて三者会話する話題は、
出涸らしの茶葉を持ち帰ることでした。



「我もお腹すいたな」
黒い気配が、遠くの空からつぶやいている。
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