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公園に1人でいた男の子の奇怪な話

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会社の帰り道。
俺は公園に行くのが日課だ。
夜の公園は人がいなくて静かだからホッとするんだよね。
今日もはやる気持ちを抑えて、公園へと向かった。

公園にはいつも通り誰もいない・・・
いや、子供が砂場で遊んでいた。
「珍しいな。こんな時間まで遊んでるの」
気にはなったけど・・・
買ってきた弁当で頭がいっぱいで、それどころではなかった。
ベンチに座った俺は弁当を食べる。
「ん~、美味しい!この店のから揚げ弁当はやめられない!」
俺は口いっぱいに唐揚げをほうばった。

弁当を食べ終えた。
ふと、ブランコの方へと目を向ける。
さっき見た子供が座っていた。
ずっと下を向いて。
「どうしたんだろう?親は迎えに来ないのかな?」
腕時計を見ると、もう20時過ぎだ。
子供が1人でいる時間じゃないだろうに。
「ね、どうしたの?お母さんは?」
って聞いた。
すると、男の子がゆっくりと顔をあげた。
目にいっぱい涙をためながら。
「僕、おいてかれちゃったの」と言う。
「子供を置いて帰る親がいるか?」
怒りがこみ上げる。
「家はどこ?送っててあげるよ」
「本当!やった」
男の子は俺の手を握るとニコッとほほ笑んだ。

公園を出て、100mほど歩くと男の子は立ち止まった。
「僕の家、ここなの」
「え?ここ?ここって・・・」
そこは空き地だった。
「家なんてないけど」
男の子の方を向いて聞いた。
「え?!坊や、どこ?」
手をつないでいたはずの男の子が消えていた。
ぼうぜんと立ち尽くす俺。
「なにしてんの?」
男性が声をかけてくる。
「いや、公園から男の子と歩いて来たんですけど」
「ああ、またか」
「え?」
「いやね、ここに住んでいた親が夜逃げしちまってね」
「夜逃げ?」
「ああ、子供だけ置いて」
「え?!」
「発見されたときは亡くなっててね」
「亡くなってた?」
子供を育てられなくなった夫婦が子供を置き去りにした。
柱につながれ、口にはガムテープが貼られていた。
だから、助けも呼べなかった。
そして、子供は餓死した。
家は取り壊され、今では空き地になっているとのこと。
子供は成仏できないのか、親子で遊びに行っていた公園で目撃される。
「本当は家に帰りたいけど、帰る家がないんだ・・・」
だから、公園で親が迎えに来てくれるのを待ってるのか。

俺はコンビニでお菓子を買い、公園の入り口に置いた。
「天国へ行ってな」
そう手を合わせた。

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