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スカイツリーの展望台で無邪気にはしゃぐ単身赴任中の夫の姿に唖然・・・嬉しそうに若い女性の顔を見つめるので、私は鬼と化す。
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「もう寝たか?まなみは」
「ええ、ぬいぐるみを抱きながら寝てるわ」
「そうか、もう半年も会ってないんだよな」
「ね、今度の週末、東京駅で待ち合わせて街ぶらしましょうよ」
「・・・いや、週末は釣りに誘われているから無理なんだ」
「あら、そう」
「じゃ、また電話するよ」そう言って夫は電話を切ってしまった。
週末、私は娘に夫が誕生日に買ってきた赤い花柄のワンピースを着させて外出した。
「ママ、今日はどこへ行くの?」
「スカイツリーに行くのよ」
「ええ!?やったー」飛び跳ねて喜ぶ娘の姿に心が躍る。
スカイツリーは平日だというのに、大勢の人で溢れかえっていることに驚いた。
エレベーターに乗り、展望デッキがある階へと行くことにした。
「ね、ママ、あそこに私と同じ服着た女の人がいる」そういって展望台にいるカップルを指差す。
目を向ければ・・・赤い花柄のワンピースを着た若い女が街を眺めてうっとりしていた。
娘と同じ花柄のワンピースを着ているだなんて・・・不思議な感覚を覚える私は少しの間その女性を見ていた。
「おっまたせー」と陽気な掛け声をかけて小走りに走ってくる男性がいた。
「あなた!」手に持ったソフトクリームを女性に渡して、ニコッと微笑む夫はすごく楽しそう。
「美味しいね」と見つめ合いながらソフトクリームを舐める2人の姿にただ唖然とする私。
「結婚生活ってきっと楽しいんだろうな」
「ええ、子供がいて、あなたがいて。いつも明るい家庭を作りましょう」
赤い花柄のワンピースを着た女は夫の顔を見つめてはニコッと微笑む。
夫は若い女を見つめ返しては照れくさそうに「子供ってかわいいんだろうな。早く欲しいよ」とあたかも独身を装って笑うのだから嫌になる。
「じゃ、写真撮るね」カメラを取り出した夫は右から左から女性の姿を撮りまくる。
「いいよ、すごくかわいい」そう褒めながらクルッと回ってみたり、地べたに伏せて撮る姿はまるでカメラマンのよう。
「なんて力の入れようかしら・・・」ここ数年、私の写真なんて撮ってくれたことなんてないのに。
写真を撮り終えた夫は満足げににんまり笑うと、「さ、行こうか」と展望デッキに立ち、「こっちへおいで」と女性の手をとる。
女性を前に立たせて左右の手を取り、腕を伸ばしてまるで十字架のように形作る。
「なんなの?これ」
「タイタニックだよ。ハハハッ」
「あは、もう恥ずかしい」
「早く結婚したいな」
「私も!」
私は手に持っていたペットボトルをミシミシッと潰す。
そんなにでれでれと若い女にうつつを抜かすなら、もっと恥ずかしい思いをしてもらいましょう。
夫と若い女は腕を組み、人でごった返すエレベーターの前に立った。
ピンポンパンポーン♪「大江様、お嬢様が1階の出口でお待ちです」と放送が流れる。
「ね、大江様ってナオ君の苗字じゃない?お嬢様って言ってるけど、子供がいるの?」
「え?!そんなわけないだろう、俺は独身だぞ」
「パパー!どこにいるの?!早く迎えに来て」娘は大きな声で呼びかけた。
「あなた!どうしてこんな所にいるのよ?!大阪に単身赴任してるんじゃなかったの?」
「りさ!いや、あなたは誰です?」しらばっくれる夫の顔に溶けたチョコレートを塗りたくってやった。
「ナオト、あたしを騙したのね!」ゴンッと浮気相手から激しく殴られて顎を押さえる。
「い、いや、あの、あのさ。ごめん」両手を合わせる夫に「そじゃ誠意を感じないわ!ここで土下座して謝りなさいよ」私は叫んだ。
「こ、ここで?」
「嫌なら離婚よ」
「わ、わかった」
多くの人が見ている前で土下座した夫の頭に飲みかけのブラックコーヒーをかけてやった。
ひどい有り様の夫は女の足にしがみつき、「ごめん、本当に愛しているのはまなみだけなんだ!捨てないでくれ」そう言う夫に心を決めた。
後日、離婚届と家にある夫の荷物をすべて単身赴任先に送り、二度と娘には会わせることはなかった。
「ええ、ぬいぐるみを抱きながら寝てるわ」
「そうか、もう半年も会ってないんだよな」
「ね、今度の週末、東京駅で待ち合わせて街ぶらしましょうよ」
「・・・いや、週末は釣りに誘われているから無理なんだ」
「あら、そう」
「じゃ、また電話するよ」そう言って夫は電話を切ってしまった。
週末、私は娘に夫が誕生日に買ってきた赤い花柄のワンピースを着させて外出した。
「ママ、今日はどこへ行くの?」
「スカイツリーに行くのよ」
「ええ!?やったー」飛び跳ねて喜ぶ娘の姿に心が躍る。
スカイツリーは平日だというのに、大勢の人で溢れかえっていることに驚いた。
エレベーターに乗り、展望デッキがある階へと行くことにした。
「ね、ママ、あそこに私と同じ服着た女の人がいる」そういって展望台にいるカップルを指差す。
目を向ければ・・・赤い花柄のワンピースを着た若い女が街を眺めてうっとりしていた。
娘と同じ花柄のワンピースを着ているだなんて・・・不思議な感覚を覚える私は少しの間その女性を見ていた。
「おっまたせー」と陽気な掛け声をかけて小走りに走ってくる男性がいた。
「あなた!」手に持ったソフトクリームを女性に渡して、ニコッと微笑む夫はすごく楽しそう。
「美味しいね」と見つめ合いながらソフトクリームを舐める2人の姿にただ唖然とする私。
「結婚生活ってきっと楽しいんだろうな」
「ええ、子供がいて、あなたがいて。いつも明るい家庭を作りましょう」
赤い花柄のワンピースを着た女は夫の顔を見つめてはニコッと微笑む。
夫は若い女を見つめ返しては照れくさそうに「子供ってかわいいんだろうな。早く欲しいよ」とあたかも独身を装って笑うのだから嫌になる。
「じゃ、写真撮るね」カメラを取り出した夫は右から左から女性の姿を撮りまくる。
「いいよ、すごくかわいい」そう褒めながらクルッと回ってみたり、地べたに伏せて撮る姿はまるでカメラマンのよう。
「なんて力の入れようかしら・・・」ここ数年、私の写真なんて撮ってくれたことなんてないのに。
写真を撮り終えた夫は満足げににんまり笑うと、「さ、行こうか」と展望デッキに立ち、「こっちへおいで」と女性の手をとる。
女性を前に立たせて左右の手を取り、腕を伸ばしてまるで十字架のように形作る。
「なんなの?これ」
「タイタニックだよ。ハハハッ」
「あは、もう恥ずかしい」
「早く結婚したいな」
「私も!」
私は手に持っていたペットボトルをミシミシッと潰す。
そんなにでれでれと若い女にうつつを抜かすなら、もっと恥ずかしい思いをしてもらいましょう。
夫と若い女は腕を組み、人でごった返すエレベーターの前に立った。
ピンポンパンポーン♪「大江様、お嬢様が1階の出口でお待ちです」と放送が流れる。
「ね、大江様ってナオ君の苗字じゃない?お嬢様って言ってるけど、子供がいるの?」
「え?!そんなわけないだろう、俺は独身だぞ」
「パパー!どこにいるの?!早く迎えに来て」娘は大きな声で呼びかけた。
「あなた!どうしてこんな所にいるのよ?!大阪に単身赴任してるんじゃなかったの?」
「りさ!いや、あなたは誰です?」しらばっくれる夫の顔に溶けたチョコレートを塗りたくってやった。
「ナオト、あたしを騙したのね!」ゴンッと浮気相手から激しく殴られて顎を押さえる。
「い、いや、あの、あのさ。ごめん」両手を合わせる夫に「そじゃ誠意を感じないわ!ここで土下座して謝りなさいよ」私は叫んだ。
「こ、ここで?」
「嫌なら離婚よ」
「わ、わかった」
多くの人が見ている前で土下座した夫の頭に飲みかけのブラックコーヒーをかけてやった。
ひどい有り様の夫は女の足にしがみつき、「ごめん、本当に愛しているのはまなみだけなんだ!捨てないでくれ」そう言う夫に心を決めた。
後日、離婚届と家にある夫の荷物をすべて単身赴任先に送り、二度と娘には会わせることはなかった。
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