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4話

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「峰岸君。そっちの超が付くぐらい儚げで大人しそうな美少女は誰?」

「竜也さん。そちらの明るくて誰からも好かれそうなモデルが逃げ出しそうな完璧なプロポーションを持つ美少女はどなたですか?」

 僕が何かを言う前に天川さんと二階堂さんがお互いの姿を値踏みするようにじっくり観察している。
 一体どうしてそのような視線を初対面の相手に向けているのだろうか?

「えっと……今日のところは解散にしない? あんまり遅くなるとあれだしさ」

 出来る事なら紹介したく無い。そんな思いが僕にはあった。

 そんな僕の提案に二人はコクリと頷いてくれた。どうやら一難去ったようだ。

「私は二階堂茉莉花《にかいどうまりか》。峰岸君とは同じ中学出身で三年間同じクラス。良く恋の相談とか乗ってもらったりしている親密な仲だよ」

 突然。二階堂さんが自己紹介を始めた。

「わたくしは天川陽菜《あまかわはるな》。春休みの間、彼に居候させて頂いている従妹です」

 それに受け答えるように天川さんが返事をする。
 おい二人とも。さっき頷いたのは何だったんだよ?

「「なるほど」」

 僕の内心をよそに。二人は妙に納得したかのようにお互いを見ていた。

 そして……。

 くるりと顔をこちらへと向けてきた。まるでユニゾンのよう。

 シンクロ率の高い動きに不気味な物を感じた僕は背筋が寒くなるのを感じた。

「えっと。天川さんそろそろ帰ろうか。二階堂さんもまた今度ね」

 そう言って歩き出そうとするものの、天川さんは動かず。二階堂さんも返事を寄越さない。

「折角知り合ったんだからさ。もう少しだけ駄目かな?」

 二階堂さんが甘えるような声でにじり寄ってくる。

「私も退屈してたので、女の子と少し話したいです」

 逆側からは天川さんが距離をつめてきた。
 気がつけば僕は両側から美少女に懇願されるという夢のような事態に陥っていた。




 ◆三人称視点◆


 峰岸竜也は混乱していた。
 結局二人の提案を呑んだ。同世代の友達と話をしたいという陽菜の気持ちは良くわかったし。

 竜也の近くに居る陽菜にたいして茉莉花がどのような感情を抱いているのかも理解できたから。

 三人は公園のベンチに並んで腰かけている。
 右から順番に茉莉花・竜也・陽菜と座っている。

 どちらもクラスはおろか、学年一――いや、学校一と豪語しても足り無い程の美少女。そんな美少女を侍らせた竜也に周囲の嫉妬の視線は鋭かった。

「へぇ~。天川さんって読書が好きなんだ」

 右から茉莉花が陽菜へと話しかける。

「そうなんです。読み始めるとすぐに時間が経過して。この前も気付いたら夕方だったんです」

 茉莉花の質問に陽菜は楽しそうに答えていた。
 どうでも良いが、何故この二人は僕を挟んで会話をしているのだろうか?

 言ってくれれば場所を変わるのに。
 竜也がそんな疑問を感じたのは当然だろう。

 興奮しているのか茉莉花も陽菜も距離が近い。お互いの話をよく聞こうと身体を寄せているからだ。

 竜也の右腕に何か柔らかくて温かいものがポヨンポヨンと当たっている。

 いや。何かと濁すまい。それは男子高校生の……いや、男の夢と希望が詰まった胸だった。日本語でいうと「おっぱい」それが触れているのだった。

 そして左から太ももに感じるのは、同じく温かい感触。
 白磁のように艶やかで、温かい陽菜の太もも。それが竜也のそれに密着している。

 まるで桃源郷のような感触に竜也は言葉を失っていると……。

「峰岸君? どうかした?」

 話題に入らなかったせいで心配そうに覗き込んでくる茉莉花。

「もしかして風邪をひかれたのでしょうか? 顔が赤いです」

 そっと竜也の手を握り締めて見せたのは陽菜。
 二人とも竜也の様子を心配していた。

「だ。大丈夫だから。問題ないよ。うん」

 まさか、「二人の密着している部分に意識を持っていかれてました」などと言う訳にもいかなかった竜也は咄嗟にごまかす事にした。

「ほんとうですか? 無理しないでくださいね」

 罪悪感が沸き起こってくる。

「そうだ。二人とも。喉乾いたでしょ? 僕ちょっと飲み物買ってきてあげるよ」

 達也は咄嗟にそういうと、自販機へと駆け出した。




「あの二人。放置してて平気かな?」

 知り合って間も無い二人なのだ。仲介に自分が居ないとどうなるか解らない。
 更に言うと竜也には茉莉花に話されると不味い事が幾つかある。

 取り急ぎ、自販機で飲み物を三本購入する。
 珈琲と紅茶とココアだ。誰がどんな好みかわからないので、なるべく違う飲み物をチョイスしてみせる。

 時間にして数分程度だろうか?
 二人の元に戻ってみるとそこには見知らぬ男が二人佇んでいた。

「いいじゃんいいじゃん。そっちも二人みたいだし。俺等と遊びに行こうよ」

「なんだったら奢るよ俺。最近ビットコインで大儲けしたからさ。金持ちなんだよねー」

 二人のチャラい男達は言葉を変えては二人に言い寄っていた。

「あの……困ります……」

 不安そうな顔をして怯える陽菜。

「私達。連れがいるんで無理なんですよー」

 あくまで笑顔を絶やさないで対応している茉莉花も内心では大の男二人に恐縮していた。

「じゃあさ。明日とかどうかな? 折角だから電話番号交換しようぜ」

「ナンパかよっ! って。じゃあ俺も俺もー」

「いや……日にちの問題ではなくて……」

 男達の強引さに徐々に圧される茉莉花。不安げに周りをキョロキョロと見渡すと……。

「あっ。竜也さん」

 いち早く達也を発見した陽菜が嬉しそうに駆けてくると竜也の腕を取り抱きつく。

「竜也君。おっそーい」

 それに便乗して茉莉花も近寄ってきてその豊満な胸を押し付けてきた。

「えっと……」

 どういうリアクションをとればよいのか。竜也が困惑していると……。

「いいからあわせて。私達は今をもって竜也君の彼女って事で」

「流石にそれは……」

 一人でもありえないのに二人揃って彼女とか、身の丈にあっていない。

「お願いします。助けてください」

 だが、断ろうにも陽菜は目を潤ませて懇願してくる。どうやら本気で男達の絡みが嫌だったらしい。

 竜也は溜息を吐くと。

「うちのタレントに何か御用でしょうか?」

 アイドル事務所のマネージャーを装って男達を追い払った。

 ナンパ男達もこれ程の美少女ならアイドルグループに所属していても無理も無いと思ったのかすんなりと信じた。
 それ所かどんな雑誌に載っているのかを聞かれたので竜也は自分が知っている有名な雑誌を幾つか上げておいた。

 その後、またナンパされたら不味いという事でその場は解散となった。
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