上 下
34 / 41

第34話 相談②

しおりを挟む
「さて、次は私の方の購入アイテムですが、どうしましょうか?」

 キキョウはそう言うと俺に探るような視線を送ってきた。

「……どうしようかな?」

 その視線を受けて俺も困った表情を浮かべる。

 何せ彼女の便利アイテムはすべて消耗品で購入価格も中々に高いからだ。

「ランダムテレポーテーションの巻物は同じ階層の違う場所に転移できる。これはある意味便利ではあるんだよな」

 たとえば何度か転移した先の目の前にボス部屋があったり、上に登る階段があったりすれば大幅な時間の短縮に繋がる。

「でもそれだと、ライアスと離れ離れになります。お互い近くにいた方が良いですよ」

「ごもっともだ」

 一人で飛び回ってボス部屋や階段前で記録石を使うごり押し戦法も有効だが、アイテム購入費用がばかにならない。

 現状、多少時間は掛かっても前に進めているのだからこの方法は最終手段で構わないだろう。

「後は、これらの身体能力を強化する巻物ですね」

 キキョウはモノリスに映るアイテムを見て眉を歪める。どういう物なのかあまり理解していない様子だ。

「俺の元居た場所で仲間の一人がこの手の支援魔法を使えたんだが、これがあると身体能力が引き上がるから、今まで苦戦していたモンスター相手に有利に戦えるようになるぞ」

 支援魔法は希少なので、体験した人間はそう多くない。

 俺はメアリーと同じパーティーだったので、戦闘時によく掛けてもらっていたが、逆に常に支援魔法があった状態だったので、この迷宮前に飛ばされた時は支援がないことに不安を覚えたものだ。

「ですが、現状ではあまり必要がない気がしますね。二階のモンスターは既に余裕をもって倒せますし、ライアスの白いオーラのようなものですよね?」

 仕組みはまだ解明されていないが俺は意識的に身体能力を上げることができる。その際に白いオーラが出るのだが、この方法での身体能力強化はメアリーから受ける支援魔法よりも効果が上だったりする。

「俺は自前で強化できるけど、キキョウは最低限揃えておいた方が良いと思うぞ」

「そう……ですかね?」

 難しそうな顔をするキキョウ。なまじここまで上手く立ち回れているせいか、この消耗品でポイントを消費することに踏ん切りがつかないようだ。

「これがあれば、不測の事態で苦戦しても態勢を整え直すことができるし、キキョウの身に危険が及ぶ可能性を減らすことができるだろ? 確かに、高い買い物かもしれないがまずはキキョウの身の安全が第一だと思う。納得できないかもしれないが、念のためにもっておいてくれないか?」

 脱出石があるとはいえ何が起こるかわからないのが迷宮だ。彼女の身の安全を守るアイテムなら持っておいた方がいい。

「あ、あなたがそう言うのなら持っておくことにしますけど……」

 キキョウは顔を逸らすとモノリスを操作して各種巻物を購入する。
 尻尾を振っているので、上機嫌ということはわかった。

 少しして箱が開き、注文した巻物が置かれていた。
 キキョウはそれを回収すると並べ、半分を俺に渡してきた。

「あなたの分です」

「えっ? 俺の分まで買ったのか?」

 巻物が6種類で一人12000pt。二人分なので24000ptともなると結構なポイントの浪費だ。

「先程、あなたが言ったのではないですか。念のために持っておくようにと」

「それはそうなんだが、俺は自前の強化もできるし……」

「その場合でも、この巻物の効果が上乗せできる可能性はあります。私だってライアスの身を案じているのですよ」

 照れているのか顔を逸らした。

 俺はそんな彼女の頭に手を置き撫でてやる。

「な、何ですか、急に……」

 上目遣いに見つめてくるキキョウに、

「俺の身を案じてくれてありがとう。嬉しいよ」

 俺は心の底からお礼を言うのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります

まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。 そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。 選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。 あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。 鈴木のハーレム生活が始まる!

2年ぶりに家を出たら異世界に飛ばされた件

後藤蓮
ファンタジー
生まれてから12年間、東京にすんでいた如月零は中学に上がってすぐに、親の転勤で北海道の中高一貫高に学校に転入した。 転入してから直ぐにその学校でいじめられていた一人の女の子を助けた零は、次のいじめのターゲットにされ、やがて引きこもってしまう。 それから2年が過ぎ、零はいじめっ子に復讐をするため学校に行くことを決断する。久しぶりに家を出る決断をして家を出たまでは良かったが、学校にたどり着く前に零は突如謎の光に包まれてしまい気づいた時には森の中に転移していた。 これから零はどうなってしまうのか........。 お気に入り・感想等よろしくお願いします!!

俺だけ成長限界を突破して強くなる~『成長率鈍化』は外れスキルだと馬鹿にされてきたけど、実は成長限界を突破できるチートスキルでした~

つくも
ファンタジー
Fランク冒険者エルクは外れスキルと言われる固有スキル『成長率鈍化』を持っていた。 このスキルはレベルもスキルレベルも成長効率が鈍化してしまう、ただの外れスキルだと馬鹿にされてきた。 しかし、このスキルには可能性があったのだ。成長効率が悪い代わりに、上限とされてきたレベル『99』スキルレベル『50』の上限を超える事ができた。 地道に剣技のスキルを鍛え続けてきたエルクが、上限である『50』を突破した時。 今まで馬鹿にされてきたエルクの快進撃が始まるのであった。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

処理中です...