俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい

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第61話 捜索

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「ううむ……この辺にはいないっすかね?」

 ゴミ箱の蓋を締めると、サリナはアゴに手を当て難しい顔をする。

「お前の探してるやつはゴミ箱に隠れてるのか?」

 彼女を派遣してきたナブラ王国には俺の情報がどのように伝わっているのかが気になる。
 それとも、アリサやこの国の諜報機関による情報操作が優秀なのだろうか?

「念のためっす。相手は常識が通じない存在っすからね。私も常識をとっぱらっているところっすよ」

「元々常識のないお前が、常識を取り払ったら一周回るどころか本気でやばいから止めろ!」

 どういう発想をしてもゴミ箱の中に俺ははいらん。

「それに、全然成果上がってないじゃねえか。いい加減付き合わされるこっちの身にもなれよ」

 サリナから『オーラ』を習うようになってから一週間が経過した。
 その間、彼女は路地裏やゴミ捨て場など、とにかく臭い場所ばかり重点的に探すので、いい加減うんざりしている。

 どうせ見つからないのだし、無駄な場所に行くのは止めろ。

「ムッ……何もしないくせに口だけは達者な! だったら、コウなら人探しをする時どうするつもりっすか?」

 サリナに詰め寄られ、俺は考える。ここで適当なことを言って、さらに時間を稼ぐこともできるのだが、的外れな提案をしてこいつに馬鹿にされるのは許せない。

「俺だったらそうだな……。酒場で情報集めとか?」

 酒も呑めるし、一石二鳥。どうせ身にならないのなら、ダラダラと楽しんだ方が良いに決まっている。
 サリナは、口元に手を当て考え始める。

 そんな俺のよこしまな考えを見抜いたのだろうか、真剣な目で俺を見ている。ところが……。

「それっす! んじゃあ、早速行くっすよ! コウの奢りで!」

 どうやら彼女が真剣だと思ったのは間違いだったらしい。次の瞬間には愛嬌のある笑みを浮かべると、俺の腕に身体を絡みつかせてきた。

「おい、抱き着くなよ!」

「ええ~~! コウも嬉しいっすよね?」

 俺は彼女に連行されると、酒場へと入って行くのだった。


          


「美味いっ! 他人の奢りで呑む酒は最高っす!」

 ぷはっ!と景気よく口元を拭い、コップをテーブルにダンッと置く。サリナは実に気持ち良い飲みっぷりでどんどん酒と料理を注文すると、次々と平らげていった。

 隣に俺をはべらせ、ぐいぐいと身体を押し付けてくるサリナ。良く育っている双丘の温もりが伝わってくる。
 酒のせいでほんのりと赤くなっており、艶やかな唇と綺麗な黒髪が目に映った。

 彼女のキラキラとした黒い瞳を見ていると、日本のことを思い出す。
 特に不満なく異世界に召喚された俺だが、現実世界のことを完全に忘れることはない。

 たまに、現実世界の料理やゲームに漫画・動画配信などの娯楽が恋しくなってくる。

「なんすかぁ、私がこれだけ良くしてあげてるのに、コウはつれないっすよ!」

 頭をぐりぐりと押し付けてくるサリナ、こんな姿をアリサが見たら焼き殺されるかもしれない。

「おい、情報収集はどうなった?」

 いつになく積極的に身体を絡めてくるサリナを押し戻しながら、俺は彼女を咎める。
 確かに、手を抜きたくて酒場での情報収集を提案したのだが、これでは俺が酔っ払いに絡まれているだけ。手を焼かされるのは本意ではない。

「そんなのどうでもいいっすよ、今日はお休みっ! コウと呑むっす!」

 顔を近付け頬をスリスリと寄せてくるサリナ。こいつ、本気で酒癖が悪い。

「ふざけんな、そういうことなら俺は帰るぞ!」

 サリナは確かにアホの娘なのだが、出るところは出ていて引っ込むところは引っ込む、おまけにこちらの世界では滅多に見ない美貌の持ち主だ。このように迫られてしまうと、退却するしかない。

「あーん、もう……コウ!」

 俺が引き剥がすと、サリナは甘えた声を出した。

「それじゃ、程々にな!」

 俺は顔が熱くなるのを抑えながら、その場を後にするのだった。
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