上 下
47 / 76

第47話 事後

しおりを挟む
「申し訳ない!」

 朝になり、外で小鳥がチュンチュンと囀る。
 俺は、シーツを手繰り寄せ、気だるげな表情を浮かべるアリサに向かって土下座をした。

「はぁ、私から誘ったのに、起きて早々に土下座するなんて、あんたの思考が一切理解できないわ」

 アリサは、髪を弄るを呆れた声を出す。

「それで、どうして謝るのよ?」

 だが、見放すようなことはせず、ちゃんと理由を聞いてくれた。

「俺との子供に能力が引き継がれるかわからないんだ」

 俺は自分がこれまで抱えていた悩みを打ち明ける。
 エリクサーを作り出せる効果は遺伝しないかもしれないこと。
 モンスターの血肉を食べてパワーアップしている部分が大きいので、元の強さは大したことがないこと。
 その辺を曖昧にしたまま、アリサを抱いてしまい、彼女を傷つけてしまったことなどについて説明した。

「ばっかじゃない?」

 彼女は、俺が思っていることをすべて告げると、開口一言目にそう言った。
 呆れた表情を向けられる。これでアリサも俺から離れていくかもしれない。

 ところが……。

「私が能力目当てであんたに近付いたとか……それで、あんな……」

 アリサの身体が震える。目から涙が零れ頬を伝う。

「私は、あんたが好きだから迫ったの! そんな風に思っていたなんて許さないから!」

「ご、ごめんっ! 本当に反省しているから!」

 昨晩の様子を思い出してしまう。
 あれほど情熱的に迫られて、身体を合わせたのだ。彼女の気持ちを疑っていた自分を恥じなければならない。

「許してほしかったら、それなりの態度をとりなさいよ」

 アリサは俺を睨み、誠意を見せろと言う。

「どうすればいいんだ?」

 彼女は自分の横をポンと手で叩くと「後は自分で考えろ」とばかりにじっと見てくる。
 俺はひとまずベッドに上がると、アリサの横に座る。至近距離で目が合い、アリサが頭をもたせかけてきた。

「んっ」

 頭を撫でると、気持ちよさそうな声を上げ目を閉じる。これで正解なのかが解らず、俺はずっとアリサの頭を撫で続けた。

「……ミナトとの間にできた子どもなら、潜在能力に関係なく愛せるに決まっている。あんたはどうなのよ?」

 しばらくして、アリサはポツリと呟いた。

 ユグド樹海で「好きになった女性と結婚して幸せになりたい」と話した時のことを蒸し返してくる。

「俺だって、子どもができたら可愛がるに決まっている。アリサとの子どもならなおさらだ!」

 ようやく話ができたので、俺は素直な想いを彼女に伝える。

「そ……そう?」

 アリサは口元が緩むのを意識して保ちながら俺を見ていた。

「アリサの気持ちを勝手に勘違いしていて悪かった。これからはないがしろにしないように気を付ける」

「ん、なら許してあげる」

 その瞬間、俺とアリサの関係は『仲間』から『恋人』へと変化した。

「言っとくけど、これまで散々我慢してきたんだから。遠慮はしないからね?」

「すべて、アリサの良きに計らってくれ」

 付き合って早々に尻に敷かれてしまっている。
 それから、アリサも強引に迫ったことを謝ってきて、俺たちはベッドの上で今後の相談をした。

「今日は迷宮に行く時間でもなくなったな」

 気が付けば朝の時間を過ぎていて、ここから迷宮に潜るには時間が中途半端になっている。
 とりあえず食事でもして、あとはのんびり過ごそうかと考えていたのだが……。

「どうした、アリサ?」

 隣にいるアリサが、何か言いたそうにしており、俺が見ると目を泳がせ始めた。

「俺たちの間で隠し事はなし。今決めただろ?」

 言いたいことがあれば言うようにと取り決めたばかりだ。こういうのは最初が肝心だからな、俺は決して誤魔化すことを許さないとばかりに、真剣な目で彼女を見続けた。

「わ、わかったわよ! 言う、言うから!」

 アリサは観念すると、顔を真っ赤にする。

「じ、実は、昨日は酔っていたから、途中から何がなんだかわからなくなって……あ、あまり覚えてないの」

 アリサがシーツを脱ぐと、彼女の白い肌が露わになり美しい身体が見える。

「ミナトとの初めてなんだから、ちゃんと想い出として記憶に残しておきたいのよ」

 瞳を潤ませ、身体を寄せ、冷えた手を俺の手に絡めて理性を奪いに来る。

「だから、今から…………駄目?」

 昨晩と違い、恥じらいを見せるアリサに、

「駄目じゃないに決まっている!」

 俺は覆いかぶさるのだった。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる

グリゴリ
ファンタジー
『旧タイトル』万能者、Sランクパーティーを追放されて、職業が進化したので、新たな仲間と共に無双する。 『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる』【書籍化決定!!】書籍版とWEB版では設定が少し異なっていますがどちらも楽しめる作品となっています。どうぞ書籍版とWEB版どちらもよろしくお願いします。 2023年7月18日『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる2』発売しました。  主人公のクロードは、勇者パーティー候補のSランクパーティー『銀狼の牙』を器用貧乏な職業の万能者で弱く役に立たないという理由で、追放されてしまう。しかしその後、クロードの職業である万能者が進化して、強くなった。そして、新たな仲間や従魔と無双の旅を始める。クロードと仲間達は、様々な問題や苦難を乗り越えて、英雄へと成り上がって行く。※2021年12月25日HOTランキング1位、2021年12月26日ハイファンタジーランキング1位頂きました。お読み頂き有難う御座います。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜

平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。 途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。 さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。 魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。 一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。

処理中です...