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第44話 迷宮探索③
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「魔法を教えて欲しい!」
「いやよっ!」
アリサの間髪入れない返事に、俺は呆然とする。
「何でだよっ!」
「嫌ったら嫌なの!」
先程から何度もこのやり取りを数度繰り返している。
サイクロプスを討伐してから、俺はモンスターの肉体を塊で切り出し、そのまま収納魔法でしまった。
その後「もし自分がさっきの魔法を使えたらもっと楽に倒せたのではないか?」と呟いた後から、アリサの機嫌が悪くなりだしたのだ。
「収納魔法は教えてくれただろ?」
「そ、それは……簡単に扱えるようになると思ってなかったし……、あんたに魔法を教えたらすぐに覚えそうじゃないっ!」
アリサの言葉は支離滅裂で、的を得ない。
二人とも同じ魔法を使えたからといって、便利になるだけで不都合は何もないのだから。
「頼むって。アリサが魔法を使うところが格好良かったから、俺も真似してみたいんだよ」
「うっ……」
こうなったら褒め殺し作戦だ。
いっけんすると、強気な性格をしていると思われるアリサだが、その実押しに弱かったりする。
こうして褒めながら頼み込めば、断る罪悪感からか最後には首を縦に振るに違いない。
「頼むよ。俺とアリサの仲じゃないか?」
「ううう」
彼女を壁際に追い詰めると、壁に手を付きさらにせまる。
アリサは顔を逸らすのだが、俺の顔を押しのけるようなことはせず、顔を赤らめて耐えている。
この状況なら間もなく「い、一回だけだからねっ」と言質をとることができそうだ。
ところが、
「やっぱりだめっ!」
後少しで流されそうなタイミングで、アリサは目に力を入れ、キッと俺を睨みつける。
「私は絶対にミナトに魔法は教えません!」
そこまで言い切られてしまうと手の打ちようがなくなってしまう。
アリサに断られてしまい、アゴに手を当て、何を贈れば彼女が折れるのか眉根を寄せて必死に頭を働かせていると……。
「あんた、まさか! 他の魔導師に頼むつもりじゃないわよね?」
アリサは血相を変えると俺に迫り腕を掴んで来た。
「いや、そんなことはまったく考えてもいないぞ。アリサの機嫌を取るための贈り物について考えていたところだ」
とはいえ、アリサが今ポロリと漏らした方法もなくはない。
幸いなことに、この国に伝手もできているし、魔導ギルドのギルドマスターとも認識ができている。
頼めば家庭教師を紹介してくれそうだ。
「どうしようかな~、アリサの言うように家庭教師を雇うのも手なんだよな~」
俺はそう言うと、彼女の反応を見る。
「うううううっ」
アリサは目に涙を溜めると悔しそうに俺を見ていた。
これ以上は冗談を言うのを止めておこう。
「ったく。なんで俺に魔法を教えたくないんだ。言ってくれ」
もしかして健康上の問題があるのか、あるいわ、俺が力に溺れて暴走するとでも思っているのだろうか?
彼女なりの理由があるのなら、俺もこれ以上無理強いをすることはない。
そんな心持で、彼女の肩を叩くと理由を聞く。
「だって、あんたが私と同じ魔法を使えるようになったら、私はもういらなくなるじゃない」
上目遣いに俺を見て、アリサはとても嬉しくなるような理由を告げてきた。
「ユグド樹海の素材の回収だって、もうあんた一人でもできちゃうわけだし、武器で戦ってあれだけ強いあんたが魔法まで覚えたら、常人は傍にいることもできない。そしたら、この国を捨ててどっかに行っちゃうつもりなんじゃないかなって……」
アリサはそう言うとチラリと俺を見た。
思っていたよりも可愛い理由に顔がほころんだ。
「何よ!」
俺にからかわれたと思ったのか、アリサが睨みつけてくる。
「俺が同じ魔法を使えるようになったからって、アリサと別れるわけないだろ」
利用するだけして捨てるような屑男だと思われていたとは中々にショックだ。
俺は彼女に近付き、頭を撫でる。
一瞬、アリサの手が動き弾かれるかと思ったのだが、彼女は動きを止めると素直に撫でられてくれた。
しばらくの間、頭を撫でていると……。
「だったら……魔法教えてあげるわよ」
「本当か?」
半ば魔法を覚えるのを諦めていただけに、起死回生の大逆転。俺は満面の笑みを浮かべ喜んだ。
「よく考えたら、あんたってそう言うやつだったし、私も少し大人げなかったかなって反省したのよ」
頬を掻き、恥ずかしそうにするアリサ。
そんな彼女を見て、俺は今がからかうチャンスなのではないかと思った。
「にしても、俺と離れたくないからなんて、まるで俺のこと好きみたいな発言しない方がいいぞ。俺だから勘違いせずにすんだけど、他のやつなら誤って告白するところだ」
実際、女子の思わせぶりな態度で「自分に惚れている」と自信を増大させて玉砕。翌日、学校の黒板に告白内容の詳細が公開され、学校での地位を失ったやつもいるくらいなのだ。
女子の思わせぶりな態度は厳罰を与える法律でも作るべきではないだろうか?
そんなことを考えていると、
「か、勘違いじゃないからっ! 勘違いしないでよねっ!」
「えっ?」
勘違いを勘違い……。つまりどういうこと?
俺はアリサからの問答を解き明かすべく頭を回転させるのだが、この複雑なロジックに答えなどなく、思考の袋小路へと迷い込む。
「取り敢えず、とっとと迷宮をでましょう」
アリサは俺の服を掴むと、外へでようと促した。この表情も、出たがる理由も、きっと早く食事にありつきたいからに違いない。
何かを期待するような視線を感じる。
俺はこれから先の異世界生活に、もしかするととても幸せな光景が待っているのではないかと期待してしまうのだった。
「いやよっ!」
アリサの間髪入れない返事に、俺は呆然とする。
「何でだよっ!」
「嫌ったら嫌なの!」
先程から何度もこのやり取りを数度繰り返している。
サイクロプスを討伐してから、俺はモンスターの肉体を塊で切り出し、そのまま収納魔法でしまった。
その後「もし自分がさっきの魔法を使えたらもっと楽に倒せたのではないか?」と呟いた後から、アリサの機嫌が悪くなりだしたのだ。
「収納魔法は教えてくれただろ?」
「そ、それは……簡単に扱えるようになると思ってなかったし……、あんたに魔法を教えたらすぐに覚えそうじゃないっ!」
アリサの言葉は支離滅裂で、的を得ない。
二人とも同じ魔法を使えたからといって、便利になるだけで不都合は何もないのだから。
「頼むって。アリサが魔法を使うところが格好良かったから、俺も真似してみたいんだよ」
「うっ……」
こうなったら褒め殺し作戦だ。
いっけんすると、強気な性格をしていると思われるアリサだが、その実押しに弱かったりする。
こうして褒めながら頼み込めば、断る罪悪感からか最後には首を縦に振るに違いない。
「頼むよ。俺とアリサの仲じゃないか?」
「ううう」
彼女を壁際に追い詰めると、壁に手を付きさらにせまる。
アリサは顔を逸らすのだが、俺の顔を押しのけるようなことはせず、顔を赤らめて耐えている。
この状況なら間もなく「い、一回だけだからねっ」と言質をとることができそうだ。
ところが、
「やっぱりだめっ!」
後少しで流されそうなタイミングで、アリサは目に力を入れ、キッと俺を睨みつける。
「私は絶対にミナトに魔法は教えません!」
そこまで言い切られてしまうと手の打ちようがなくなってしまう。
アリサに断られてしまい、アゴに手を当て、何を贈れば彼女が折れるのか眉根を寄せて必死に頭を働かせていると……。
「あんた、まさか! 他の魔導師に頼むつもりじゃないわよね?」
アリサは血相を変えると俺に迫り腕を掴んで来た。
「いや、そんなことはまったく考えてもいないぞ。アリサの機嫌を取るための贈り物について考えていたところだ」
とはいえ、アリサが今ポロリと漏らした方法もなくはない。
幸いなことに、この国に伝手もできているし、魔導ギルドのギルドマスターとも認識ができている。
頼めば家庭教師を紹介してくれそうだ。
「どうしようかな~、アリサの言うように家庭教師を雇うのも手なんだよな~」
俺はそう言うと、彼女の反応を見る。
「うううううっ」
アリサは目に涙を溜めると悔しそうに俺を見ていた。
これ以上は冗談を言うのを止めておこう。
「ったく。なんで俺に魔法を教えたくないんだ。言ってくれ」
もしかして健康上の問題があるのか、あるいわ、俺が力に溺れて暴走するとでも思っているのだろうか?
彼女なりの理由があるのなら、俺もこれ以上無理強いをすることはない。
そんな心持で、彼女の肩を叩くと理由を聞く。
「だって、あんたが私と同じ魔法を使えるようになったら、私はもういらなくなるじゃない」
上目遣いに俺を見て、アリサはとても嬉しくなるような理由を告げてきた。
「ユグド樹海の素材の回収だって、もうあんた一人でもできちゃうわけだし、武器で戦ってあれだけ強いあんたが魔法まで覚えたら、常人は傍にいることもできない。そしたら、この国を捨ててどっかに行っちゃうつもりなんじゃないかなって……」
アリサはそう言うとチラリと俺を見た。
思っていたよりも可愛い理由に顔がほころんだ。
「何よ!」
俺にからかわれたと思ったのか、アリサが睨みつけてくる。
「俺が同じ魔法を使えるようになったからって、アリサと別れるわけないだろ」
利用するだけして捨てるような屑男だと思われていたとは中々にショックだ。
俺は彼女に近付き、頭を撫でる。
一瞬、アリサの手が動き弾かれるかと思ったのだが、彼女は動きを止めると素直に撫でられてくれた。
しばらくの間、頭を撫でていると……。
「だったら……魔法教えてあげるわよ」
「本当か?」
半ば魔法を覚えるのを諦めていただけに、起死回生の大逆転。俺は満面の笑みを浮かべ喜んだ。
「よく考えたら、あんたってそう言うやつだったし、私も少し大人げなかったかなって反省したのよ」
頬を掻き、恥ずかしそうにするアリサ。
そんな彼女を見て、俺は今がからかうチャンスなのではないかと思った。
「にしても、俺と離れたくないからなんて、まるで俺のこと好きみたいな発言しない方がいいぞ。俺だから勘違いせずにすんだけど、他のやつなら誤って告白するところだ」
実際、女子の思わせぶりな態度で「自分に惚れている」と自信を増大させて玉砕。翌日、学校の黒板に告白内容の詳細が公開され、学校での地位を失ったやつもいるくらいなのだ。
女子の思わせぶりな態度は厳罰を与える法律でも作るべきではないだろうか?
そんなことを考えていると、
「か、勘違いじゃないからっ! 勘違いしないでよねっ!」
「えっ?」
勘違いを勘違い……。つまりどういうこと?
俺はアリサからの問答を解き明かすべく頭を回転させるのだが、この複雑なロジックに答えなどなく、思考の袋小路へと迷い込む。
「取り敢えず、とっとと迷宮をでましょう」
アリサは俺の服を掴むと、外へでようと促した。この表情も、出たがる理由も、きっと早く食事にありつきたいからに違いない。
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