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第43話 アタミ ミナトの策略②
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「どうして、そう思われるのですか?」
この情報が入ってきたこともあるが、互いの国にはスパイが入り込んでいて、国が得た情報というのは筒抜けになる。
男の言葉に秘書は頷く。今回情報を得られたのも、宮廷内での事件について噂伝いに話を聞いたからだ。
「通常、召喚された人間は、最初に召喚した者が契約してしまい、その後、在野に出されない。だが、この召喚者は最初に追放されてフリーになってから、どの団体とも契約していない」
この世界での『契約』は絶対で、たとえ神であろうと翻すことはできないとされている。
この世界の人間は、巧みに召喚者を口車にのせ、契約を迫るのだが、この召喚者はそれから逃れていた。
「通常、召喚者は最初に召喚された団体に取り込まれる。そうでなくても、せいぜいがその上位団体、国などだな」
「ええ、そうですね。我が国でも国内にアンテナを張り巡らせ、優れた召喚者が現れた場合は奪取に向かいますし」
契約は早い者勝ちで、互いの認識が一致すれば神の元保障されることになる。国としても優れた人物を他の団体に取り込まれるのは面白くないので、隙あらば接触して契約を持ち掛けているのだ。
「最初に見え見えの嘘をついた点からもわかるように、この召喚者は初見でそれらの目論見を看破したのだろう。野に放たれフリーとなってから自分の有用性をアピールしてみせ、あえて事件を起こし、注目を集めた」
「それですと、最初の団体と契約せずとも、国に注目された時点で目的を達成しているのではないですか?」
より良い条件での雇用を狙っていたのなら、グルタ王国の王城に呼ばれた時点で達成したと言っても良い。
「ふふふ、だからその召喚者はキレると言っているのだよ。普通、国家レベルとの契約ならば誰しも納得する。もし俺が同じ立場なら頷くだろう」
「でしょう?」
「だが、この召喚者はそうはしなかった。そこに狙いが隠されているのだ」
「どのような……ですか?」
男の推理に、秘書はゴクリと喉を鳴らした。
「国に注目され、自分という存在を世界中の団体に知らしめるという目論見だ」
「それは……つまり!?」
秘書も気付いたようで、驚愕の表情を浮かべる。
「ああ、その召喚者は、グルタ王国ではなく、世界中に自分を売り込んでいる最中なのだよ」
召喚が盛んになりはじめてから数百年。あらゆる既得損益から、そのような者がでてきたことはなかった。
異世界に召喚されてから直ぐに冷静に自己を分析し、こちらの世界の住人を手玉に取るように立ち回る。
「発想が人間離れしている……。もしや、予知能力でも持っているのでは?」
一体、その召喚者にはどこまで先が見えているのか、この会話すら覗かれているのではないかと、秘書は背筋を冷たくした。
「いかがなさいますか?」
しばらくして、動揺を抑えた秘書は男から指示を貰おうと質問をする。
「相手の思惑は理解した。このまま放置するのは勿体なさすぎるだろ」
「で、ではっ!」
「サリナを呼べ!」
男は命令を下す。
「グルタ王国に向かい、勝負に勝った方が命令を聞くという『契約』を仕掛けさせろ!」
サリナというのは、この国に召喚された日本人、その娘の名だ。
幼少の頃よりその才能を見出され、武芸を磨き、今では国で一・二位を争う強さを持つ少女。
「はっ! 御命令確かに遂行してみせます」
秘書が部屋から出て行くと、
「面白いことを考える召喚者もいたものだ。他国もとっくに動いているとは思うが……」
情報の伝達速度に差があるので、近隣国は既に手を打っているはず。
「このナブラ王国がその召喚者を手中に収めて見せる!」
ナブラ王国国王は拳を握ると、そう呟くのだった。
★
この情報が入ってきたこともあるが、互いの国にはスパイが入り込んでいて、国が得た情報というのは筒抜けになる。
男の言葉に秘書は頷く。今回情報を得られたのも、宮廷内での事件について噂伝いに話を聞いたからだ。
「通常、召喚された人間は、最初に召喚した者が契約してしまい、その後、在野に出されない。だが、この召喚者は最初に追放されてフリーになってから、どの団体とも契約していない」
この世界での『契約』は絶対で、たとえ神であろうと翻すことはできないとされている。
この世界の人間は、巧みに召喚者を口車にのせ、契約を迫るのだが、この召喚者はそれから逃れていた。
「通常、召喚者は最初に召喚された団体に取り込まれる。そうでなくても、せいぜいがその上位団体、国などだな」
「ええ、そうですね。我が国でも国内にアンテナを張り巡らせ、優れた召喚者が現れた場合は奪取に向かいますし」
契約は早い者勝ちで、互いの認識が一致すれば神の元保障されることになる。国としても優れた人物を他の団体に取り込まれるのは面白くないので、隙あらば接触して契約を持ち掛けているのだ。
「最初に見え見えの嘘をついた点からもわかるように、この召喚者は初見でそれらの目論見を看破したのだろう。野に放たれフリーとなってから自分の有用性をアピールしてみせ、あえて事件を起こし、注目を集めた」
「それですと、最初の団体と契約せずとも、国に注目された時点で目的を達成しているのではないですか?」
より良い条件での雇用を狙っていたのなら、グルタ王国の王城に呼ばれた時点で達成したと言っても良い。
「ふふふ、だからその召喚者はキレると言っているのだよ。普通、国家レベルとの契約ならば誰しも納得する。もし俺が同じ立場なら頷くだろう」
「でしょう?」
「だが、この召喚者はそうはしなかった。そこに狙いが隠されているのだ」
「どのような……ですか?」
男の推理に、秘書はゴクリと喉を鳴らした。
「国に注目され、自分という存在を世界中の団体に知らしめるという目論見だ」
「それは……つまり!?」
秘書も気付いたようで、驚愕の表情を浮かべる。
「ああ、その召喚者は、グルタ王国ではなく、世界中に自分を売り込んでいる最中なのだよ」
召喚が盛んになりはじめてから数百年。あらゆる既得損益から、そのような者がでてきたことはなかった。
異世界に召喚されてから直ぐに冷静に自己を分析し、こちらの世界の住人を手玉に取るように立ち回る。
「発想が人間離れしている……。もしや、予知能力でも持っているのでは?」
一体、その召喚者にはどこまで先が見えているのか、この会話すら覗かれているのではないかと、秘書は背筋を冷たくした。
「いかがなさいますか?」
しばらくして、動揺を抑えた秘書は男から指示を貰おうと質問をする。
「相手の思惑は理解した。このまま放置するのは勿体なさすぎるだろ」
「で、ではっ!」
「サリナを呼べ!」
男は命令を下す。
「グルタ王国に向かい、勝負に勝った方が命令を聞くという『契約』を仕掛けさせろ!」
サリナというのは、この国に召喚された日本人、その娘の名だ。
幼少の頃よりその才能を見出され、武芸を磨き、今では国で一・二位を争う強さを持つ少女。
「はっ! 御命令確かに遂行してみせます」
秘書が部屋から出て行くと、
「面白いことを考える召喚者もいたものだ。他国もとっくに動いているとは思うが……」
情報の伝達速度に差があるので、近隣国は既に手を打っているはず。
「このナブラ王国がその召喚者を手中に収めて見せる!」
ナブラ王国国王は拳を握ると、そう呟くのだった。
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