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第41話 サイクロプス戦
しおりを挟む「グオオオオオオオ?」
唸り声を上げるサイクロプス。眼下に俺とアリサがいることに気付いているのだろうが、現時点では手を伸ばすようなことをしてこない。
俺はというと、溜息を吐くとガッカリしながら魔導剣を抜いた。
「どしたの、ミナト? 相手はサイクロプス。あんたの防御を上回る攻撃をしてくるかもしれないのよ?」
あの巨体に任せた踏み潰しや、棍棒の一撃は、確かにアリサの言う通り一発で俺の命を刈り取る危険があるかもしれない。
だが、動きも鈍いし、余程不覚をとらなければ攻撃を食らうことはなさそうだ。
「もしかして、攻撃が通じない心配でもしてるの? 魔法で援護してあげるから平気よ?」
攻撃に関しても、ドラゴンの皮膚を斬り裂いている。魔力量も増えているので、今ならもっと硬いものでも斬れるので無用の心配だ。
「なんでそんな絶望的な顔をしてるのよ?」
一言も発しない俺に、アリサはとうとう疑問を口にした。
「いや、人型だから、食べる気しないなと思って」
「食べる気だったの!?」
「それはそうだろう。これまでも、散々食ってきたわけだし」
「それ、普通は毒があるから誰も食べないモンスターでしょ!」
「良く言うだろ? 身体に悪いものほど美味しい! って」
「聞いたことないわよ!!」
現実世界での格言だが、少し意味合いが違ったか?
この世界で言う「身体に悪い」は口にすると即死級の毒で死ぬことを言うからな。
「まあ、どちらにせよ人型は食うのに抵抗があるんだよな……」
例えば料理したとして、鍋の中から指などが出てきたらそれがどの部分なのかリアルに判定できてしまう。考えただけで味以前に生理的に受け付けない。
「いい加減真剣になりなさい。来るわよ!」
「了解」
俺たちが会話を続けている間に、サイクロプスは敵と認識してきたようだ。
半眼だった目が大きく見開き、意思が籠った目で睨みつけてくる。
「とりあえず、アリサは距離を取って安全な場所で待機。一応言っておくけど気は抜くなよ。最悪岩を投げつけてくるかもしれないからな?」
「わかってる。取り敢えず身体強化して土壁を作る準備だけしておくわよ。何か欲しい支援ある?」
俺が注意をすると、アリサは質問をしてきた。
「そうだな、敵が大きくて攻撃が届かない。地面を操って隆起させてもらえると助かるぞ」
そうすれば、足場を利用して攻撃を仕掛けることができる。
「わかった……【アースウェイク】」
地面が揺れ、俺の注文通り幾つもの山が出来上がる。サイクロプスを囲うようにできた足場に、俺は飛び乗ると上から攻撃を仕掛けた。
「はっ!」
すべての魔力を込めた魔導剣を振りぬくと、まったく抵抗なく剣が振れた。
「はぁはぁ」
地面に着地すると同時に、用意してあったエリクサーの瓶を口に含むと、中身を飲み干して瓶を捨てる。
――ッズズズン――
次の瞬間、サイクロプスの右腕が音を立てて地面に落下した。
「嘘ぉ……」
アリサが口を開きあり得ないようなものを見るような目で俺を見ていた。
「サイクロプスの皮膚は確かにドラゴンよりは柔らかいけど、この分厚さがあるのよ? それを一振りでなんて……」
それもこれもアリサから譲り受けた魔導剣のお蔭だ。魔力を攻撃力に変換する能力は俺のエリクサーと相性が良すぎる。
通常なら、この一撃が通ったとしてもこれで品切れになるが、俺はこの攻撃力を基本にすることができる。
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
「悪あがきをされる前に左腕も落としておくか」
この時点で勝利は確定しているのだが、不慮の事故に巻き込まれてアリサが負傷する可能性はある。
俺は痛みに叫ぶサイクロプスの隙をついて、左腕も同様に落とした。
「後は、心臓でも一突きすればいいかな?」
倒した後に収納することを考えたら、もう少し細切れにしておくべきか?
その前に、アリサには冷凍魔法を使ってもらう必要がある。
「ま、相手が悪かったということで、諦めてくれ」
俺は高く飛びあがると、サイクロプスの首を一閃。
「グ……オ……オ?」
首が転がり落ち、サイクロプスは完全に動きを止めるのだった。
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