俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい

文字の大きさ
上 下
31 / 76

第31話 国のインフラを支える簡単なお仕事

しおりを挟む
 国王との謁見から一週間が経過した。
 その間、俺は国の施設にある魔導装置に魔力を補充する仕事をしていた。

「ミナト、今日はこれで最後よ」

「おっ、了解。今日も疲れたぁ」

 この世界では魔力があれば大抵のことはできるらしく、現実世界での電気と同じくらい生活に浸透している。
 魔力を溜めておき、各所に配魔する魔導装置のお蔭で生活に必要な火や水を魔導具から生み出すことができ、不自由ない生活を送っている。

「それにしても、まさかここまで引っ張りだこになるとは思わなかった」

 電気と違って、魔導装置への充魔は魔導師や錬金術師が行っている。
 普通の魔導師は魔力を使い切ると回復するには、回復魔法陣がある施設に一週間籠る必要があった。

 魔導師の魔法は有用なので、生活に使う魔力が足りているのならインフラを整えたいという悩みもあるようだ。
 これまでは、魔導装置の魔力を切らさないようにしてはいたが、稼働はギリギリで、道路の整備や壁の補修などなどに費やす魔力が足りなくなっていた。

 ところが、俺が魔導装置を満タンにすることで事情が大きく変わった。
 一時的に、他の魔導師が自由に魔法を使えるようになったのだ。

 そのせいもあってか、現在王都の周辺では生活を改善するための整備が急ピッチで進められているらしい。
 事業が動けば仕事も増えるとばかりに活気づいており、行き交う人々には笑顔いが浮かんでいる。

「皆感謝してるわよ。だって。千人どころか、今の段階で一万人分の魔力を充魔しているのよ」

 ちなみに、アリサは俺の秘書として働いてもらっている。
 王国内の施設の場所がわからなかったり、現場の人間とコミュニケーションがとれなかったりと不安が残るので、仕事を引き受ける際に俺は彼女に助けて欲しいと頼み込んだのだ。

「ちなみに一万人分の魔力って、国の重要施設が三年はもつ魔力量なんだけど……」

 このまま国中にある魔導装置すべてを充魔すれば数年は何もしなくても大丈夫らしい。

「だからあんなに報酬額が高いんだな」

 俺は国王から提示された報酬額を見て驚いた。
 すべての施設を充魔した時にもらえる報酬は、地味に冒険者稼業を続けていてはとても稼げない額だったからだ。

「明日は鍛冶ギルド、明後日は錬金術ギルド、最後は……魔導ギルドだけど、まあここは……一週間くらい休んでからでいっか?」

 アリサは、今後俺が回る順番を読み上げていく。これまでは魔力が尽きかけてきた施設を中心に回ってきたので、最後に残っているのは余裕がある場所となっている。

「何か、私情を挟んでないか?」

 俺はアリサに突っ込みを入れる。

「べっつにー。ミナトのことを売ったからって恨んでないわよ」

 俺が国王に謁見した背景には、魔導ギルドの訴えがある。
 もしあのまま錬金術ギルドに引き籠っていれば、枢機卿やヘンイタ男爵に復讐できていないので、結果だけ見れば感謝すべきなのだが……。

 魔導ギルドと錬金術ギルドは仲が悪いので、そんなことを言い出したら俺も白い目で見られるだろう。

 俺は余計なことは口にせずアリサの後ろについて歩いていると……。

「あっ、ミナト。この後なんだけど……」

 先程まで怒っていたとは思えないくらい満面の笑みを浮かべて彼女が振り返った。

「何?」

 あまりにも早い変わり身に、俺の中で警鐘が鳴り響く。
 というのも、彼女の恨みを一番買っている可能性が高いのが俺だと気付いたからだ。

 よく考えて見れば、魔導装置を勝手に起動して事件を起こし減俸させ、行方不明になって迷惑を掛け、半ば強引に秘書に任命して休みも与えず働かせている。

 俺はエリクサーを飲んで充魔していれば良いので簡単なのだが、彼女は矢面に立ち、役人や貴族、ギルドマスターと交渉をしているので相当大変に違いない。

「何でそんな怯えているのよ?」

 そんなことを考えていると、アリサは怪訝な表情を浮かべ俺に近付いてきた。
 覗き込むように顔を近付ける。整った顔が間近にきて、美少女耐性が低い俺はそれだけで動揺してしまった。

「いや、すっかりアリサを巻き込んでしまってるなと思って、本当に俺の秘書をやってくれてよかったのか?」

「何よ今更、そんなの嫌なら断ってるわよ」

 俺の質問に、アリサは間髪入れず答えた。どうやら俺に対して恨みはもっていないらしい。

「それで、この後が何だって?」

 彼女が嫌がっていなかったことにほっとした俺は、遮ってしまった用件を聞きだした。

「ああそうだ、この後は施設に戻って休むだけじゃない?」

「そうだな」

 いつも通りのことだ、ゆっくりと身体を休めて明日に備える。今日の仕事が終わっているのだからそうなる。そんなのはアリサもわかっているはずだが?

 俺は、アリサが何を言いたいのかいぶかしむと彼女の透明な瞳を覗き込んだ。
 すると、アリサはとても魅力的な提案をする。

「だったらさ、この後一緒にご飯行きましょうよ」

 そう言って手を引くと、繁華街へと向かう。
 夕日のせいでなければ彼女の耳が赤くなっている気がする。

「そう言えば……」

 そんな彼女の後姿を見ながら、俺は以前から考えていることについて近々行動を起こさなければならないと思うのだった。


しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

処理中です...