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第14話 サバイバルをする

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「ここって秘密基地に使えるかもしれないよな?」

 中を歩いてみるとそれなりに広く足元もゴツゴツしていない。
 壁や天井にはヒカリゴケが生えているので薄暗いとはいえ視界も確保できている。

 水分補給はエリクサーで良いし、近くの山には獣型モンスターや植物型モンスターが、川には水棲む型モンスターもいるので素材を集めたりして籠るのに最適なのではなかろうか?

「せっかくここまで来たんだ。しばらくここで暮らしてみるのもありかもな」

 ほとぼりが冷めるまで、俺はここでモンスターを狩って暮らすことを決めた。



「さて、まずは周辺の探索をするか」

 数時間かけて洞窟の浅部を探索した俺は、魔導剣を強化し壁を壊すと外へと出る。
 魔法によって作り出された土壁はそれなりに硬く分厚かったのだが、無限に攻撃力を上げられる俺の前では紙切れのようなものだった。

 エリクサーを飲みながら振ると、豆腐を切るように壁が崩れる。魔力を消費し回復することでこれまで以上の魔力容量を得ているのがわかるので、この作業も苦にならなかった。

「うーん、やっぱり外の空気は気持ちいな」

 雨風凌ぐためならば洞窟も良いかもしれないが、薄暗い中にずっといるのも気が滅入る。

 草木をかき分け来た時とは別な場所を探索してみる。
 ここに来るまで荒野や崖を超えてきた。地図で見ると周囲を絶壁に囲まれているここはまるで世界の中心のようで、俺が立っているのはその入り口に過ぎない。

 ゲームの世界であればこの先の森の真ん中に世界樹でもあるのではなかろうか?

 そんな楽しい想像をしながら歩いていると……。

『ギギギギギイィ』

 毒々しい姿をした巨大な蜘蛛がいた。
 緑と茶のまだら模様の脚、八つある丸眼は血のように赤く不気味さが強調されている。

 口の部分は顎が開閉していて、人の頭が通るかどうかの大きさしか開かないようだがあのアゴ歯で噛み砕いて食べるつもりなのだろう。

 通常であれば蜘蛛はどこかに巣を張り得物を待ち構えていそうなものだが、異世界の蜘蛛は積極的なのか、こうして地面に足を付き狩りを楽しむようだ。

『ギギギギギギ』

 口から涎のようなものを滴らせながら急速に接近してくる。
 八本脚は伊達ではないのか、これまで出会ってきたモンスターの中で一番の動きだ。

「おっと!」

 大型の分、小回りが利かないのか奴が噛みつこうと頭を突っ込ませてきたところを飛びのいて避ける。

「うん、気持ち悪いな……」

 至近距離で見ると脚には毒針のような毛が生えているし、眼の中心に黒点がありこちらの動きを追いかけているのがわかった。
 さらに、口の奥も見えてしまい、中には無数の小歯が生えていてグロテスクだ。

『ギギギギギギギギギギギ』

 通り過ぎたあと、八本の脚を上手く使い回転してみせる。
 側面が弱点のようなので、攻撃に合わせてまわり込んで斬りつければ倒せそうだ。

 だが、そんな俺の思惑とは別に巨大蜘蛛は突進を止めた。先程よりもゆっくりと近付いてくると後ろの四本脚で身体を支えると残る四本の脚を自在に操り突き刺そうとしてくる。

「うわっ! ととっ!」

 慌てて避け続ける。右手に魔導剣を、左手にはエリクサーが入った瓶を持っていたのでバランスを崩しそうになる。
 相手が毒持ちということもあって用意したのだが、ここは一端エリクサーを捨てる。

 俺が瓶を捨てると、巨大蜘蛛は瓶に興味を持ったのか攻撃がピタリとやみ、そちらへと視線を向ける。

(まさか、モンスターには効果があるとかないよな?)

 召喚時に数名が試して効果がなかっただけなので、厳密に言えば俺だけにしか効かないのかは実験不足だ。
 もしモンスターに効果があったらとんでもないことになる。

「何はともあれチャンス」

 巨大蜘蛛はエリクサーの瓶に夢中になっており、側面は俺が押さえている。

「はああああああああああああっ!」

 蜘蛛の心臓は背中にある。現実世界で得た知識を参考にしながら俺は剣を振るい巨大蜘蛛を両断するのだった。


 これまでにない量の光が溢れ出し俺の身体へと吸い込まれていく。
 明らかに力が増している。もしかするとあの巨大蜘蛛はかなり高ランクのモンスターだったのではないだろうか?

「取り敢えず、この死体どうしよう?」

 これまでの冒険で、素材として欲しいのは歯や牙に毛皮などの部分が多かった。

「一応食糧はまだあるけど、籠るならこういうのも食べた方がいいよな?」

 解体の際、冒険者リーダーから「モンスターを食べることもできるけど、大抵は毒を持ってたりするから素人判断で料理はお勧めしないぞ」と教えてもらった。

「最低限、焼いて菌を殺せば行けるんじゃないか?」

 それでも駄目な場合はエリクサーを飲めばいい。

「でも、即死級の毒だったり麻痺する毒だったらまずいか?」

 いざ毒を受けて、エリクサーを飲もうとしても手が震えて飲めない可能性もある。人里離れた場所ゆえ助けは期待できずそのままお陀仏になりかねない。

 そのことを考え、俺がこの巨大蜘蛛を食うのを諦めようかと思ったが……。

「まてよ? この方法ならいけるかも!」

 俺は巨大蜘蛛を解体すると洞窟へと戻るのだった。
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