勇者・賢者・精霊使いの最強能力を得た俺は三つの力を組み合わせ新たな能力で異世界を無双する

まるせい

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第17話 初めての戦闘

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 目の前からゾロゾロとコボルトの群れが姿を現した。

 こちらが気付いていることがわかったのか、待ち伏せをやめたらしい。

 見渡す限り数十匹のコボルトが棍棒やナイフをもち、街道に立ち塞がる。

「私が中央に突っ込んで陣形を崩すから、あんたは私が囲まれた後にでも外から攻撃を仕掛けな」

 ナタリーが俺に指示を出してくる。

「一緒に飛び込んだ方が互いに背中を預けられるんじゃないか?」

 彼女たちの口ぶりからして、コボルトは強いモンスターではないのだろうが、それでも一緒に戦った方が安全だと俺は思った。

「いや、私は一人の方が戦いやすい。戦闘に入ったら目につくものを全部斬り伏せちまうからね」

「そいつは怖いな……」

 獲物は大剣だし、彼女の力量なら縦横無尽に振り回すことができる。助けるつもりが味方に斬られては洒落にならない。

「それに、私はあんたがいうよなか弱い女性でもないからね」

 鍛え上げた鎧や傷が残る身体を見る限り、確かにそのような印象はない。寧ろ普通に強いのではなかろうか?

「それでも、お前さんを囮にするのは気が引ける」

「だったらどうする?」

 俺はブレイブソードを召喚すると告げた。

「どっちが多く倒せるか勝負しようぜ」

「くくく、その勝負受けようじゃないか」

 ナタリーが愉快そうに笑うと、俺たちはコボルトの群れへと突っ込んだ。




「はっ!」

 戦闘に突入して数分が経過した。
 俺とナタリーは左右に分かれて突っ込んでいき、互いにコボルトに囲まれている。

 最初は一斉に襲いかかってきたコボルトだが、攻撃を避けて何匹か斬り倒したところ、一筋縄では行かないと察したのか慎重に距離を取るようになった。
 待ち伏せやこちらの挙動に気付く点といい思っているより知能があるのかもしれない。油断はできないな。

「もっと、かかってこい!」

 離れた場所で剣が肉を経つ音が聞こえる。
 ナタリーは剣の重さと突進力を生かして強引に棍棒ごと押し潰してコボルトを屠っていた。

 このままこう着状態を維持すればすべて彼女が片付けてくれそうな勢いだ。
 だけど、啖呵を切っただけに簡単に負けてやるつもりもない。

「来ないなら、こっちから行かせてもらう!」

 俺はリスクを取るとコボルトの群れに突っ込んだ。

 コボルトたちの表情が驚愕に染まる。俺の移動速度が思っていたよりも速かったせいだろう。
 無理もない。今回はアメリアに支援魔法を掛けてもらっているし、召喚したブレイブソードには敏捷度上昇の効果を付与してある。

 勇者の能力と賢者の能力を掛け合わせたようなものなのだ。

 一瞬でコボルトとの間合いを詰め、剣で斬り伏せると次の目標へと向かって行く。
 これが初めての戦闘ということもあり余裕がない。目の前のモンスターを全滅させなければと焦りが浮かんでいるのがわかる。

「まだだ、もっと速く倒さないと!」

 生き物の命を奪うことはこんなにも大変だったのだなと、実感が湧きどうしようもない不快感が押し寄せる。
 まるで身体が自分の意思で動いていないかのような、何者かに操られている感覚がして、このままでは飲み込まれてしまうのではないか?

 そんなことを考えていると……。

「タクマ! 苦戦してるんじゃないだろうな?」

 ナタリーの声で意識が引き戻された。
 地面にはコボルトの死体が転がっている。冷静になった俺は……。

「こっちはもう八匹倒しているぞ!」

 汗を拭うと彼女に返事をした。

「甘いっ! こっちは十匹だよ!」

「マジかよ……」

 勇者の力と魔法による支援を受けている俺よりも強いとは、一体彼女は何者なのだろう?

「さあ、臆病風に吹かれていないでかかってきな!」

 ナタリーが挑発をするが既に勝てない相手と認識したコボルトは及び腰となり……。

「あっ!」

 全員散り散りに逃げ出してしまった。

「まっ、こんなところかね?」

 逃亡するコボルトを溜息を吐いて見送ると剣を肩に担ぐ。今の戦闘などまるでなんでもなかったかのような振る舞いだ。

「あんたも中々やるじゃないか」

 これまでとは違い、少し柔らかい笑みを浮かべ俺に話しかけてくるナタリー。
 今の戦闘で彼女も俺のことを少しは認めてくれたのだろうか?

 遠くからミアとアメリアが走り寄ってくるのが目に映る。

 すべての敵が片付いたのだと遅れて認識した俺は、

「これが異世界の生活か……」

 初めて奪った命に対して色々考えてしまうのだった。

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