大賢者の遺物を手に入れた俺は、好きに生きることに決めた

まるせい

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第43話 三人部屋

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※最初にお知らせいたします。
ご無沙汰しております、まるせいです。

この度、こちらの作品『大賢者の遺物を手に入れた俺は、好きに生きることにした』がアルファポリス様より書籍化出版となりました。
発売日は12月16日あたりから各書店に並び始める予定です。
1巻の時点でWebの内容よりも9万文字加筆改稿してありますので、2度目の方も楽しめるようになっております。
是非、試しに読んでみてください。



「今日はこの層で終わりかな?」

 あれから、魔石を提出した俺たちはそのまま十一層と十層のダンジョンも条件を満たし、現在は九層の宿屋へと来ていた。

「今日は疲れたよぉ」

 宿に着くなり突っ伏したシーラ。現在は宿の食堂にいる。

「お疲れ様です姫様。にしても本当に魔法が使えるようになっていたのですね」

「うん、苦労したからね。でもこうして成果を得ることができて嬉しいよ」

「魔法は覚えたての頃が一番楽しいからな、俺も経験があるからわかるぞ」

 これまで手の届かなかった範囲にいる敵に有利な場所から魔法で攻撃したり、剣で苦戦するモンスターを一発で倒したり。

 魔法には武器にはない威力があり、魔道士は大抵その威力に魅了されている。

「いいですね、私もただ待つだけじゃなくて姫様についていきたいです」

「だったらピートに一緒に魔法を習っちゃう? 凄く厳しいけど教え方上手いんだよ?」

 ミラと再会してからのシーラは明るい振る舞いをしている。
 よほど彼女のことを信頼しているのだろう。とても嬉しそうに会話をする。

「俺としてはこれ以上は手が回らないかな。シーラにしても昼夜つきっきりでこれだからな、目的がある以上は足踏みしてもいられない」

 言葉通り、寝るギリギリまで追い込んで指導をしている。シーラにならいざ知らずほとんど接点のないミラに同じように教えるのは不可能だ。

「それではピート様、私は今後どうすればよろしいでしょうか?」

 魔法が駄目となるとミラは思考を切り替えたのか俺に指示を仰いできた。

「ミラの主はシーラだろ? 彼女に聞けばいいだろ」

「私はピートの言うとおりに動くつもりだから、ピートの言うことを聞けばいいよ」

 話を振るとすっぱりと言い切った。俺は腕を組みしばらくかんがえると……。

「今日みたいに宿の確保や身の回りのことをやってもらえると助かる。俺もシーラも家事はからっきしだからな」

 洗って干すくらいはできるが、それに時間を取られるのが惜しい。それらをやってくれる人物がいるのなら十分な助けになるだろう。

「わかりました、それでは今後はお二人のサポートをさせていただきます」

 城勤めの本職のメイドだ。行き届いた仕事をしてくれるに違いない。

 それから俺たちは運ばれてきた食事をしながらたわいのない話に花を咲かせていたのだが……。

「俺はそろそろ部屋に行って寝ようと思っている」

「かしこまりました、ご案内します」

 シーラとミラが席を立ち俺たちは宿の階段を上る。

「こちらが今夜泊まる部屋になります」

 ミラが鍵を開けて中へと入る。そこには三つのベッドが並んでいた。

「……なあミラさんや?」

「何でしょうか? ピート様」

「シーラとミラは積もる話もあるだろう。二人はここで寝て俺はもう一部屋に行こうと思うんだが」

「とは申されても、本日空いていたのはこの部屋だけになりますけど?」

「ということはなにか? 男女三人一緒の部屋に泊るつもりか?」

「ええ、ピート様とシーラ様は恋人同士ですから。特に問題はありませんよね?」

 首を傾げるミラ。せっかく休めると思ったのに思いもよらぬ事態だ。

「いや、問題がある。俺は他人がいると寛げない」

「ああ、夜の営みの件でしたら気にしないで下さい。私は耳を塞いでおりますので……」

「ミラっ!?」

 あまりにもストレートな言葉にシーラが赤面した。

「トラテムに残った王族は姫様だけですから。血を絶やさぬためにもピート様には頑張って欲しいです」

「恥じらうそぶりもなしに何を言い出すんだ?」

 どうやら本気で言っているらしい……。

「シーラも、妙なことを考えるなよ?」

「えっ? も、もちろん! 今夜は何もしないよ!」

 義務を持ちだされてその気になられても困る。俺はシーラに釘を刺しておいた。

「とりあえず俺は寝るから、朝まで起こすなよ」

 ためいきを吐くと一番左のベッドへと身体を投げ出す。今日は意外なことが多くて疲れたのだ。

「うん、おやすみ。明日も頑張ろうね」

「お休みなさいませ、ピート様」

 二人の声を聞きながら俺は意識を落とすのだった。
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