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第42話 バベルダンジョン最下層アースワーム
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★
「はっ!」
「目を覚ましたかメリル」
メリルがテーブルから起き上がると、椅子に座って食事を黙々と食べるメリッサとブレッドがいた。
ミラが見当たらないようだが、彼女は戦えない代わりに買い出しなど身の回りの雑用の最中でいないのだとメリルは見当をつけた。
「どうしたの、メリル?」
落ち着いた様子の姉を見てメリルは胸を撫でおろす。
「いやぁー、悪夢を見ちゃってさぁ」
「ほぅ? どのような?」
メリッサの目が光る。妹の見た夢とやらに興味を持った。
「それがさぁ、バベル内でピートに再会した夢なんだけど、なんかピートに女が出来てたの」
「おいっ……それって……」
ブレッドが口を挟もうとするが、その前にメリッサが言葉を返した。
「奇遇。私もさっきまでそのようなあり得ない夢を見ていたところ」
「お姉ちゃんも!? もしかして双子の片方が見た夢を共有するという奇跡かな?」
「そうかも。偶然」
「いやいや、お前ら……」
笑い合う双子の姉妹をブレッドは腫物のように扱い、どうにか現実を見つめさせようとするのだが……。
二人は同時にブレッドに向き直ると……。
「ねぇ、あれは夢だったよね?」
「ピートに、女は、いない」
笑顔なのに目だけはまったく笑っていない。そんな二人にブレッドは、
「お、おう……。そうだな」
ろくに説明責任を果たさずいなくなったピートにそのツケを払ってもらうことにした。
★
「ん、どうしたの。ピート?」
「いや、何でもない」
全身に悪寒が走ったのだがきのせいだろう。
「ここが最下層内のダンジョンか……」
あれからブレッドたちとわかれた俺たちは、早速最下層のダンジョンへと来ていた。
「それにしても移動だけで数時間もかかるのは面倒だよね……」
この【トゥレス領】に限ってだが、えすかれぇたぁでの移動に制限は存在していない。
だが、他の領へ移動する場合は身分証で許された階層からしか出ることができないようになっている。
俺とシーラは現在は、当主の許可を得ているということで二層までなら自由に動くことができるのだ。
「とりあえず、合格基準はモンスター十匹討伐だったよね?」
上層のダンジョンに潜るためにはそれぞれの層が出す条件をクリアしなければならない。
「ああ、ひとまずミラさんを外に待たせているのも可哀想だしさっさと終わらせよう」
俺とシーラは作業を片付けるくらいの気持ちで奥へと進んで行った。
「うう、気持ち悪い……」
目の前には大きなミミズがうねうねと地面をのたうちまわっている。
「【アースワーム】だな、動きは素早くないが土の中に隠れていて足元に絡みつく。潰すと粘液が飛び散って身体を汚すんだ」
殺傷力こそないものの、剣で斬りかかると汚れて手入れをしなければならないし、粘液からは嫌な臭いがするので冒険者の間では嫌われているモンスターだ。
「や、やだ!? 近づいてくる!」
見た目のわかりやすい脅威のコボルトとかの方がまだましな気がする。
こいつらは対象に取り付くことしかできず、意思がはっきりしないので不気味なのだ。
楽に倒せるとはいえ、相手をしたくない気持ちは理解できた。
「とりあえずシーラ。教えた通りに魔法を使ってみろ」
最下層ということもあり、そこらには奴隷落ちしている人間がチラホラ見える。
彼らは黙々とアースワームに武器を突き立てていた。
「う、うん……えーと【アイシクル】」
杖から冷気がでてアースワームへと当たる。
アースワームはその冷気から逃げようと地面へと引っ込んでいった。
「やった追い払ったよ、ピート」
「追い払わずに倒してくれ」
このままではいつまで経ってもこのダンジョンから出ることができない。
「ううう【ファイア】」
嫌そうな顔をしながらもシーラは火の魔法でアースワームを攻撃した。
「この煙、吸い込みたくないなぁ」
アースワームが燃えて嫌な臭いが漂う。
周囲の奴隷は魔法を扱える人間が気になるのかしきりにこっちを見ていた。
やがて、完全にアースワームが焼けきれると……。
「よし、シーラ。魔石を探すんだ」
討伐したモンスターの魔石を回収して提出することで条件がクリアされる。
「うええ、気持ち悪いよぉ」
「慣れろ、それ以外に方法はない」
半泣きになりながら魔石をあさるシーラに俺は言い放った。
育ちが良く、汚れることなどこれまでなかったのだろうが、これから俺と共に生きると決めた以上甘えは許されない。
「そうだよね、こんなのは冒険者がみんな通った道なんだから、私もやらなきゃ」
わりと前向きな発言に俺の頬が緩む。彼女のこういうひたむきな姿を好ましく思う。
「八……九……全部で十二個あったよ」
意外とまとまって倒していたようで目標の数はクリアしている。
「えっと、ピートの分にはあと八個足りないね」
追加でモンスターを倒そうと杖を構えるシーラ。
「自分の分は自分でとるから」
彼女だけにやらせてはフェアではない。
「【ファイア】【アイス】【ウォーター】【ウインド】」
アースワームを一瞬で焼き、冷却魔法で冷やし、炭を水魔法で洗い流し、風魔法で綺麗にする。
「よし十五個取れた」
地面に落ちている魔石を回収してくるとシーラがポカンと口を開いていた。
「どうした?」
俺が不思議に思っていると、彼女は目を吊り上げ……。
「そんな方法があるなら最初に言ってよ!?」
俺が行った魔石回収までの過程に文句をつけるのだった。
「はっ!」
「目を覚ましたかメリル」
メリルがテーブルから起き上がると、椅子に座って食事を黙々と食べるメリッサとブレッドがいた。
ミラが見当たらないようだが、彼女は戦えない代わりに買い出しなど身の回りの雑用の最中でいないのだとメリルは見当をつけた。
「どうしたの、メリル?」
落ち着いた様子の姉を見てメリルは胸を撫でおろす。
「いやぁー、悪夢を見ちゃってさぁ」
「ほぅ? どのような?」
メリッサの目が光る。妹の見た夢とやらに興味を持った。
「それがさぁ、バベル内でピートに再会した夢なんだけど、なんかピートに女が出来てたの」
「おいっ……それって……」
ブレッドが口を挟もうとするが、その前にメリッサが言葉を返した。
「奇遇。私もさっきまでそのようなあり得ない夢を見ていたところ」
「お姉ちゃんも!? もしかして双子の片方が見た夢を共有するという奇跡かな?」
「そうかも。偶然」
「いやいや、お前ら……」
笑い合う双子の姉妹をブレッドは腫物のように扱い、どうにか現実を見つめさせようとするのだが……。
二人は同時にブレッドに向き直ると……。
「ねぇ、あれは夢だったよね?」
「ピートに、女は、いない」
笑顔なのに目だけはまったく笑っていない。そんな二人にブレッドは、
「お、おう……。そうだな」
ろくに説明責任を果たさずいなくなったピートにそのツケを払ってもらうことにした。
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「ん、どうしたの。ピート?」
「いや、何でもない」
全身に悪寒が走ったのだがきのせいだろう。
「ここが最下層内のダンジョンか……」
あれからブレッドたちとわかれた俺たちは、早速最下層のダンジョンへと来ていた。
「それにしても移動だけで数時間もかかるのは面倒だよね……」
この【トゥレス領】に限ってだが、えすかれぇたぁでの移動に制限は存在していない。
だが、他の領へ移動する場合は身分証で許された階層からしか出ることができないようになっている。
俺とシーラは現在は、当主の許可を得ているということで二層までなら自由に動くことができるのだ。
「とりあえず、合格基準はモンスター十匹討伐だったよね?」
上層のダンジョンに潜るためにはそれぞれの層が出す条件をクリアしなければならない。
「ああ、ひとまずミラさんを外に待たせているのも可哀想だしさっさと終わらせよう」
俺とシーラは作業を片付けるくらいの気持ちで奥へと進んで行った。
「うう、気持ち悪い……」
目の前には大きなミミズがうねうねと地面をのたうちまわっている。
「【アースワーム】だな、動きは素早くないが土の中に隠れていて足元に絡みつく。潰すと粘液が飛び散って身体を汚すんだ」
殺傷力こそないものの、剣で斬りかかると汚れて手入れをしなければならないし、粘液からは嫌な臭いがするので冒険者の間では嫌われているモンスターだ。
「や、やだ!? 近づいてくる!」
見た目のわかりやすい脅威のコボルトとかの方がまだましな気がする。
こいつらは対象に取り付くことしかできず、意思がはっきりしないので不気味なのだ。
楽に倒せるとはいえ、相手をしたくない気持ちは理解できた。
「とりあえずシーラ。教えた通りに魔法を使ってみろ」
最下層ということもあり、そこらには奴隷落ちしている人間がチラホラ見える。
彼らは黙々とアースワームに武器を突き立てていた。
「う、うん……えーと【アイシクル】」
杖から冷気がでてアースワームへと当たる。
アースワームはその冷気から逃げようと地面へと引っ込んでいった。
「やった追い払ったよ、ピート」
「追い払わずに倒してくれ」
このままではいつまで経ってもこのダンジョンから出ることができない。
「ううう【ファイア】」
嫌そうな顔をしながらもシーラは火の魔法でアースワームを攻撃した。
「この煙、吸い込みたくないなぁ」
アースワームが燃えて嫌な臭いが漂う。
周囲の奴隷は魔法を扱える人間が気になるのかしきりにこっちを見ていた。
やがて、完全にアースワームが焼けきれると……。
「よし、シーラ。魔石を探すんだ」
討伐したモンスターの魔石を回収して提出することで条件がクリアされる。
「うええ、気持ち悪いよぉ」
「慣れろ、それ以外に方法はない」
半泣きになりながら魔石をあさるシーラに俺は言い放った。
育ちが良く、汚れることなどこれまでなかったのだろうが、これから俺と共に生きると決めた以上甘えは許されない。
「そうだよね、こんなのは冒険者がみんな通った道なんだから、私もやらなきゃ」
わりと前向きな発言に俺の頬が緩む。彼女のこういうひたむきな姿を好ましく思う。
「八……九……全部で十二個あったよ」
意外とまとまって倒していたようで目標の数はクリアしている。
「えっと、ピートの分にはあと八個足りないね」
追加でモンスターを倒そうと杖を構えるシーラ。
「自分の分は自分でとるから」
彼女だけにやらせてはフェアではない。
「【ファイア】【アイス】【ウォーター】【ウインド】」
アースワームを一瞬で焼き、冷却魔法で冷やし、炭を水魔法で洗い流し、風魔法で綺麗にする。
「よし十五個取れた」
地面に落ちている魔石を回収してくるとシーラがポカンと口を開いていた。
「どうした?」
俺が不思議に思っていると、彼女は目を吊り上げ……。
「そんな方法があるなら最初に言ってよ!?」
俺が行った魔石回収までの過程に文句をつけるのだった。
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