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第27話 学園のマドンナの友人は恋をしている
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「アイスコーヒーのLサイズでお願いします」
「はい、かしこまりました」
店員さんに注文を終え、アイスコーヒーを受け取ると店内に入る。
暑いからか、中には薄着の女の子が多く目のやり場に困った。
そんな中、店内を見渡すと、奥の二人掛けテーブル席に俺を呼び出した人物が座っているのを発見する。
沢口さんは、なにやら真剣な表情を浮かべるとテーブルの上にある紙を見ていた。
「お待たせ」
そう声を掛けて向かいの席に座る。アイスコーヒーを横に置く際に内容を確認すると、どうやら花火大会のチラシのようだ。
「んむ、ごくろう。相川っち!」
彼女は右手を上げると、気安い態度で俺に声を掛けた。
沢口さんが今日着ている服は淡いグリーンのキャミソール、それにシースルーの上着だ。
似合っているのだが、思春期の男子としては視線が吸い寄せられてしまうので、できればもう少し露出を抑えて欲しい。
「それで、用件って何?」
蓋を開け、シロップとミルクを流し込みストローで混ぜる。
一口飲むと、甘苦い味わいが口いっぱいに広がった。
俺が内容を確認すると、沢口さんは急に俯き、人差し指でストローを弄り始める。
「実は花火大会の時、告白……しようかと思って……」
そこまで言うと、顔を赤らめながらチラリと俺を見てくる。
「へっ? 告白?」
沢口さんとは思えぬほど乙女な単語に思考が停止しそうになる。俺は聞き間違いかと思い、彼女の様子を窺がった。
「相川っちも、とっくに気付いてるんでしょう? ……の、気持ちに……」
恥じらいを見せるような態度をとる沢口さん。瞳を潤ませ真っすぐに俺を見つめてくる。これはどう考えても……。
「つまり、石川さんが相沢に告白できるように協力して欲しいってことでいいのかな?」
「嘘ぉ! 何で今のでわかるのさ!?」
俺をからかうつもりだったのだろうが、逆に慌てた様子を見せる沢口さん。
「何でも何も……、沢口さんが素直に本当のこと言うわけないし、そうなると俺が知ってる身近な人で、今回の花火大会に来る人となると石川さんしかいないだろ?」
元々、旅行の時から石川さんが相沢を見ている回数が多いことには気付いていた。
初めて海の家に来た時もそうだし、水着を披露した時もそうだし、好意があるのは推測していた。
そこに、彼女が「告白する」というらしくないフェイクをいれてくれば答えを導き出すのは簡単だ。
そう説明をすると、沢口さんは面白くなさそうに口をキュッと結ぶと、
「私は素直な方なんだけどね?」
言い訳がましくそう告げた。
「俺、男女のそう言うのにはあまりかかわりたくないんだけど……」
相談をしてきた沢口さんに、俺は自分の心情を素直に告げる。
これまでそう言ったことに縁がなかったというのもあるのだが、恋愛事は自然に流れるままにして周囲がひっかき回すべきではないと考えているからだ。
特に、相沢は本心を隠すのが上手いので一見すると誰が好きなのかわからない。もし告白が失敗した場合、グループの間に気まずい雰囲気が流れるのは当然として、その後の関りもなくなってしまうだろう。
そうならない為には、無理にことを推し進めるよりは、時間を掛けてもよいのでゆっくりと関係を進めて欲しいと思った。
「なるほど、相川っちも色々考えてるんだねー」
腕を組み、ウンウンと頷く。
「でも、里穂を放っておくと、永遠に思いを告げたりしないと思うんだ!」
「それはまあ、確かに……」
見た目はギャルで言葉遣いもそうなのだが、ときおり見せる大人びた視線と、一歩引いた様子はどちらかというとピュアな女の子のように見える。
相沢が本心を見せない以上、石川さんからアピールをするしかないのだが、慎重な彼女は、ある程度の勝算がなければ行動を起こせないのではないかと想像がつく。
そうなれば高校三年間彼女の片思いで終わるか、相沢に好きな人ができて付き合って終わりな気がする。
「せめて、花火大会で二人きりにするだけ、それくらいならいいでしょ?」
「まあ、それくらいなら自然だと思うけど、その程度で何かが動くとも思わないんだよな……」
ようはシチュエーションだけ用意するから、後は当人同士でよろしくやってくれということなのだろう。支援体制としてはあまりにも雑すぎる。
「ふふふ、甘いよ、相川っち! 女の子はシチュエーションさえあらかじめ設定してあげれば、勝手に盛り上がって頭の中で男を落とす計画を立てている!」
「……知りたくなかったよ、そんな知識」
意外と打算的な発言をする沢口さんにげんなりしていると、彼女は勝ち誇った笑みを浮かべていた。
「ふふふ、夏の夜の花火大会に男女が二人っきり……、何も起こらないはずもなく」
アゴに手を当てて楽しそうに妄想をする沢口さん。
確かに、とてもロマンティックなシチュエーションだとは思う。
「シチュエーションさえ整えてやれば行動を起こすなんて……いや、どうだろう?」
一瞬、沢口さんとの釣りで夕日が沈むのを見たが何もなかったことを思い出し否定しようかと思ったが、渡辺さんの顔が浮かびあがったので言葉を止めてしまった。
あの時、石川さんから電話がなかったら、彼女は何というつもりだったのだろう?
いまだに、あの日の渡辺さんの顔が思い浮かぶ。朝日を浴びてこちらを見つめる瞳が俺の心をざわつかせていた。
右手で胸をギュッと掴み、心臓の鼓動を落ち着かせようとしていると……。
「おーい、相川っち。話聞いてるー?」
「おわっ!」
気が付くと、目の前に沢口さんの整った顔があった。
近くで見る彼女の睫毛は長く、遅れてつけ睫毛をしているのだと気付く。沢口さんはフグの様に「プクー」と頬を膨らませ不機嫌そうにしている。
話し掛けても俺の反応がなかったのでお怒りの様子だ。
「そうすると、俺と渡辺さんと沢口さんの三人で花火を見ることになると思うんだけど?」
誤魔化すため、俺はコホンと咳ばらいをして、あの二人の誘導に成功した後について話しをする。
「その場合、相川っちは解散。任務完了で帰宅していいよ!」
「おいっ!」
頼るだけ頼って斬り捨てるようなセリフを吐く沢口さんに俺は突っ込みを入れる。
皆が花火で盛り上がる中、一人俯いて帰宅させられるとはどれだけ酷いことを言っているのか、目の前の小悪魔は理解しているのだろうか?
「嘘だって! 良かったね、相川っち。美少女二人と花火デートが出来るよ?」
俺が白い目で見ていると、沢口さんは表情をコロリと変化させ、両手を重ねて楽しそうに告げてきた。
「うーん、美少女……。ねぇ?」
そんな沢口さんを見ると、俺は「はっ」と鼻で笑い飛ばす。
「うん、何か文句があるなら拳で語った後で言い訳を聞こうか?」
グググッと拳を握り締め近付けてくる。
「それ、確実に俺が痛い目に合うから止めようよ!」
俺は彼女の拳を押し戻しながらそう言う。意外と力がある上、体重を乗せてきているので必死だ。
鼻で笑って見せたとはいえ、別に俺は沢口さんの容姿を認めていないわけではない。
周囲がチラチラ彼女を見ているので、他の女生徒比べて秀でているのは間違いないのだ。ただ、口を開けば残念なだけの……。
「何か、凄くむかつくこと考えてそうな顔してるよね?」
白い目で俺を見てくる。勘が良いらしく、彼女の前で迂闊な言動をとらないように心がける。
「もしかして、用件ってそれで終わり?」
「えっ? そうだけど?」
到着して、ものの五分で相談が解決してしまった。俺はまだたっぷり残っているアイスコーヒーをストローでかき混ぜながら、この後ここで宿題をやるのも悪くないかな? と考えるのだが……。
「まだまだ、他にも検討することが一杯あるし」
沢口さんは花火大会の見取り図を広げコツコツと突いて見せる。流石に作戦について話す時は真剣なようだ、ここは真面目に聞かないといけないだろう。
「誰がどの出店で何を買ってくるか決めないとね!」
目を輝かせそう言った。これはもしかすると作戦が失敗するのではないか?
俺はそんな不安に襲われるのだった……。
「はい、かしこまりました」
店員さんに注文を終え、アイスコーヒーを受け取ると店内に入る。
暑いからか、中には薄着の女の子が多く目のやり場に困った。
そんな中、店内を見渡すと、奥の二人掛けテーブル席に俺を呼び出した人物が座っているのを発見する。
沢口さんは、なにやら真剣な表情を浮かべるとテーブルの上にある紙を見ていた。
「お待たせ」
そう声を掛けて向かいの席に座る。アイスコーヒーを横に置く際に内容を確認すると、どうやら花火大会のチラシのようだ。
「んむ、ごくろう。相川っち!」
彼女は右手を上げると、気安い態度で俺に声を掛けた。
沢口さんが今日着ている服は淡いグリーンのキャミソール、それにシースルーの上着だ。
似合っているのだが、思春期の男子としては視線が吸い寄せられてしまうので、できればもう少し露出を抑えて欲しい。
「それで、用件って何?」
蓋を開け、シロップとミルクを流し込みストローで混ぜる。
一口飲むと、甘苦い味わいが口いっぱいに広がった。
俺が内容を確認すると、沢口さんは急に俯き、人差し指でストローを弄り始める。
「実は花火大会の時、告白……しようかと思って……」
そこまで言うと、顔を赤らめながらチラリと俺を見てくる。
「へっ? 告白?」
沢口さんとは思えぬほど乙女な単語に思考が停止しそうになる。俺は聞き間違いかと思い、彼女の様子を窺がった。
「相川っちも、とっくに気付いてるんでしょう? ……の、気持ちに……」
恥じらいを見せるような態度をとる沢口さん。瞳を潤ませ真っすぐに俺を見つめてくる。これはどう考えても……。
「つまり、石川さんが相沢に告白できるように協力して欲しいってことでいいのかな?」
「嘘ぉ! 何で今のでわかるのさ!?」
俺をからかうつもりだったのだろうが、逆に慌てた様子を見せる沢口さん。
「何でも何も……、沢口さんが素直に本当のこと言うわけないし、そうなると俺が知ってる身近な人で、今回の花火大会に来る人となると石川さんしかいないだろ?」
元々、旅行の時から石川さんが相沢を見ている回数が多いことには気付いていた。
初めて海の家に来た時もそうだし、水着を披露した時もそうだし、好意があるのは推測していた。
そこに、彼女が「告白する」というらしくないフェイクをいれてくれば答えを導き出すのは簡単だ。
そう説明をすると、沢口さんは面白くなさそうに口をキュッと結ぶと、
「私は素直な方なんだけどね?」
言い訳がましくそう告げた。
「俺、男女のそう言うのにはあまりかかわりたくないんだけど……」
相談をしてきた沢口さんに、俺は自分の心情を素直に告げる。
これまでそう言ったことに縁がなかったというのもあるのだが、恋愛事は自然に流れるままにして周囲がひっかき回すべきではないと考えているからだ。
特に、相沢は本心を隠すのが上手いので一見すると誰が好きなのかわからない。もし告白が失敗した場合、グループの間に気まずい雰囲気が流れるのは当然として、その後の関りもなくなってしまうだろう。
そうならない為には、無理にことを推し進めるよりは、時間を掛けてもよいのでゆっくりと関係を進めて欲しいと思った。
「なるほど、相川っちも色々考えてるんだねー」
腕を組み、ウンウンと頷く。
「でも、里穂を放っておくと、永遠に思いを告げたりしないと思うんだ!」
「それはまあ、確かに……」
見た目はギャルで言葉遣いもそうなのだが、ときおり見せる大人びた視線と、一歩引いた様子はどちらかというとピュアな女の子のように見える。
相沢が本心を見せない以上、石川さんからアピールをするしかないのだが、慎重な彼女は、ある程度の勝算がなければ行動を起こせないのではないかと想像がつく。
そうなれば高校三年間彼女の片思いで終わるか、相沢に好きな人ができて付き合って終わりな気がする。
「せめて、花火大会で二人きりにするだけ、それくらいならいいでしょ?」
「まあ、それくらいなら自然だと思うけど、その程度で何かが動くとも思わないんだよな……」
ようはシチュエーションだけ用意するから、後は当人同士でよろしくやってくれということなのだろう。支援体制としてはあまりにも雑すぎる。
「ふふふ、甘いよ、相川っち! 女の子はシチュエーションさえあらかじめ設定してあげれば、勝手に盛り上がって頭の中で男を落とす計画を立てている!」
「……知りたくなかったよ、そんな知識」
意外と打算的な発言をする沢口さんにげんなりしていると、彼女は勝ち誇った笑みを浮かべていた。
「ふふふ、夏の夜の花火大会に男女が二人っきり……、何も起こらないはずもなく」
アゴに手を当てて楽しそうに妄想をする沢口さん。
確かに、とてもロマンティックなシチュエーションだとは思う。
「シチュエーションさえ整えてやれば行動を起こすなんて……いや、どうだろう?」
一瞬、沢口さんとの釣りで夕日が沈むのを見たが何もなかったことを思い出し否定しようかと思ったが、渡辺さんの顔が浮かびあがったので言葉を止めてしまった。
あの時、石川さんから電話がなかったら、彼女は何というつもりだったのだろう?
いまだに、あの日の渡辺さんの顔が思い浮かぶ。朝日を浴びてこちらを見つめる瞳が俺の心をざわつかせていた。
右手で胸をギュッと掴み、心臓の鼓動を落ち着かせようとしていると……。
「おーい、相川っち。話聞いてるー?」
「おわっ!」
気が付くと、目の前に沢口さんの整った顔があった。
近くで見る彼女の睫毛は長く、遅れてつけ睫毛をしているのだと気付く。沢口さんはフグの様に「プクー」と頬を膨らませ不機嫌そうにしている。
話し掛けても俺の反応がなかったのでお怒りの様子だ。
「そうすると、俺と渡辺さんと沢口さんの三人で花火を見ることになると思うんだけど?」
誤魔化すため、俺はコホンと咳ばらいをして、あの二人の誘導に成功した後について話しをする。
「その場合、相川っちは解散。任務完了で帰宅していいよ!」
「おいっ!」
頼るだけ頼って斬り捨てるようなセリフを吐く沢口さんに俺は突っ込みを入れる。
皆が花火で盛り上がる中、一人俯いて帰宅させられるとはどれだけ酷いことを言っているのか、目の前の小悪魔は理解しているのだろうか?
「嘘だって! 良かったね、相川っち。美少女二人と花火デートが出来るよ?」
俺が白い目で見ていると、沢口さんは表情をコロリと変化させ、両手を重ねて楽しそうに告げてきた。
「うーん、美少女……。ねぇ?」
そんな沢口さんを見ると、俺は「はっ」と鼻で笑い飛ばす。
「うん、何か文句があるなら拳で語った後で言い訳を聞こうか?」
グググッと拳を握り締め近付けてくる。
「それ、確実に俺が痛い目に合うから止めようよ!」
俺は彼女の拳を押し戻しながらそう言う。意外と力がある上、体重を乗せてきているので必死だ。
鼻で笑って見せたとはいえ、別に俺は沢口さんの容姿を認めていないわけではない。
周囲がチラチラ彼女を見ているので、他の女生徒比べて秀でているのは間違いないのだ。ただ、口を開けば残念なだけの……。
「何か、凄くむかつくこと考えてそうな顔してるよね?」
白い目で俺を見てくる。勘が良いらしく、彼女の前で迂闊な言動をとらないように心がける。
「もしかして、用件ってそれで終わり?」
「えっ? そうだけど?」
到着して、ものの五分で相談が解決してしまった。俺はまだたっぷり残っているアイスコーヒーをストローでかき混ぜながら、この後ここで宿題をやるのも悪くないかな? と考えるのだが……。
「まだまだ、他にも検討することが一杯あるし」
沢口さんは花火大会の見取り図を広げコツコツと突いて見せる。流石に作戦について話す時は真剣なようだ、ここは真面目に聞かないといけないだろう。
「誰がどの出店で何を買ってくるか決めないとね!」
目を輝かせそう言った。これはもしかすると作戦が失敗するのではないか?
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