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13日の金曜日
続7
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意識して唾液を絡ませながら、ひとまず緩慢に頭を前後させる。
次第に視界が滲んでくるのは、生理的な涙によるものだろう。
逸樹さんの腰に添えていた片手で、その脇腹を撫でてみる。腰骨を指で辿って、鼠径部をなぞり、徐々にその位置を中心へと向かわせる。
そうすれば焦れったいような火が点るのだ。元彼女の手つきを思い出しながらのそれが正解かはわからないけれど、少なくとも逸樹さんのそれも、俺の口の中でいっそう容積を増していた。だから俺は、心なしか安堵して、浸るように目を閉じたのだ。
それを肯定してくれるように、逸樹さんの指も俺の頭を優しく撫でている。
ちょうど散髪する前で、いつもより長くなっている髪を梳くように触られて、それがまた心地良くて勝手に頬が少し緩んだ。
――なのに、
「直人……?」
次いで頭上から降ってきた声は、思いの外苛立ちを孕んでいるように聞こえて、俺はぎくりとして動きを止めた。
一瞬にして空気が張り詰めたように感じて、俺はおずおずと目を開ける。窺うように上目に見上げると、その瞬間、
「――っんぅ!」
優しく触れていたはずの手のひらが、突然俺の髪ごと掴むようにして、そのまま一気に頭を押さえ込んできた。
必然と限界まで屹立を銜え込まされ、無理矢理こじ開けられた喉の奥が、異物を拒むように収縮する。
「っ! んっ! んん……!」
ぼろぼろと涙がこぼれ落ちる。顔を背けようにも、手で突っ張ろうにも、逸樹さんの剣幕には全く勝てなかった。
そのまま逸樹さんは好き勝手に腰を動かす。俺の髪を指に絡めるようにして押さえ付けながら、まるで自分本位に、最奥を突くような抽挿を繰り返す。
息苦しさに意識が遠退きかける。目の前に星が散る。
縋るように逸樹さんの太腿に引っかけていた指が、ずるずると位置を下げていく。
(苦、し……っ)
信じられない。マジで理解できない。
せっかくその気になったというのに、俺なりに頑張ろうとしていた矢先に、何でいきなりこんな事態《こと》――。
どうにも納得できず、睨むようにして逸樹さんを見遣る。
いつもなら見せたくないくらい酷い泣き顔だったと思うけど、そんなことを気にしている余裕はなかった。
「さっきの……誰のやり方だ、直人……」
「っ……!?」
「何を……誰とのことを思い出して、やってたんだって言ってんだよ……!」
徐々に大きくなる声と共に、逸樹さんはいっそう俺の咽頭を穿った。
「ぐっ……! んっ――んぅうっ!」
声にならない声が漏れる。顔も口元も、涙と唾液でどろどろだ。
結果的に、俺がやったことが不正解だった――要は思った以上に逸樹さんの気分を害してしまったってことはよく分かった。
分かったけど、だからって普通こんなことするか?!
自分の言いたいことだけ言って、俺には何も答えさせねぇとか、マジ頭おかしいんじゃねぇの?!
抗議しようにも、謝ろうにも、逸樹さんが手を離してくれなければ何もできない。
俺は振り回されるように口内を蹂躙された挙げ句、最後には避ける間もなく、一方的に顔や髪にそれを掛けられていた。
(マジ、最低……っ)
開放された途端、盛大に咳き込みながら、ばしゃん、と崩れ落ちた身体が湯面を叩く。
頬から伝い落ちてきた白濁が口元まで届いて、俯いたまま無言でそれを拭った。
自然と訪れた沈黙の中、忙しない呼吸音だけが浴室に響く。
「……悪い」
そこに遅れて落ちてきたのは、ようやく我に返ったような、どこかばつが悪そうな声だった。
「……悪いと思うことをすんなよ」
俺は込み上げる涙を見せたくなくて、なかなか顔を上げられない。
「でもお前も悪いんだからな」
「はぁ?」
上げられないと思ったけど、次には弾かれたように逸樹さんを仰ぎ見ていた。
次第に視界が滲んでくるのは、生理的な涙によるものだろう。
逸樹さんの腰に添えていた片手で、その脇腹を撫でてみる。腰骨を指で辿って、鼠径部をなぞり、徐々にその位置を中心へと向かわせる。
そうすれば焦れったいような火が点るのだ。元彼女の手つきを思い出しながらのそれが正解かはわからないけれど、少なくとも逸樹さんのそれも、俺の口の中でいっそう容積を増していた。だから俺は、心なしか安堵して、浸るように目を閉じたのだ。
それを肯定してくれるように、逸樹さんの指も俺の頭を優しく撫でている。
ちょうど散髪する前で、いつもより長くなっている髪を梳くように触られて、それがまた心地良くて勝手に頬が少し緩んだ。
――なのに、
「直人……?」
次いで頭上から降ってきた声は、思いの外苛立ちを孕んでいるように聞こえて、俺はぎくりとして動きを止めた。
一瞬にして空気が張り詰めたように感じて、俺はおずおずと目を開ける。窺うように上目に見上げると、その瞬間、
「――っんぅ!」
優しく触れていたはずの手のひらが、突然俺の髪ごと掴むようにして、そのまま一気に頭を押さえ込んできた。
必然と限界まで屹立を銜え込まされ、無理矢理こじ開けられた喉の奥が、異物を拒むように収縮する。
「っ! んっ! んん……!」
ぼろぼろと涙がこぼれ落ちる。顔を背けようにも、手で突っ張ろうにも、逸樹さんの剣幕には全く勝てなかった。
そのまま逸樹さんは好き勝手に腰を動かす。俺の髪を指に絡めるようにして押さえ付けながら、まるで自分本位に、最奥を突くような抽挿を繰り返す。
息苦しさに意識が遠退きかける。目の前に星が散る。
縋るように逸樹さんの太腿に引っかけていた指が、ずるずると位置を下げていく。
(苦、し……っ)
信じられない。マジで理解できない。
せっかくその気になったというのに、俺なりに頑張ろうとしていた矢先に、何でいきなりこんな事態《こと》――。
どうにも納得できず、睨むようにして逸樹さんを見遣る。
いつもなら見せたくないくらい酷い泣き顔だったと思うけど、そんなことを気にしている余裕はなかった。
「さっきの……誰のやり方だ、直人……」
「っ……!?」
「何を……誰とのことを思い出して、やってたんだって言ってんだよ……!」
徐々に大きくなる声と共に、逸樹さんはいっそう俺の咽頭を穿った。
「ぐっ……! んっ――んぅうっ!」
声にならない声が漏れる。顔も口元も、涙と唾液でどろどろだ。
結果的に、俺がやったことが不正解だった――要は思った以上に逸樹さんの気分を害してしまったってことはよく分かった。
分かったけど、だからって普通こんなことするか?!
自分の言いたいことだけ言って、俺には何も答えさせねぇとか、マジ頭おかしいんじゃねぇの?!
抗議しようにも、謝ろうにも、逸樹さんが手を離してくれなければ何もできない。
俺は振り回されるように口内を蹂躙された挙げ句、最後には避ける間もなく、一方的に顔や髪にそれを掛けられていた。
(マジ、最低……っ)
開放された途端、盛大に咳き込みながら、ばしゃん、と崩れ落ちた身体が湯面を叩く。
頬から伝い落ちてきた白濁が口元まで届いて、俯いたまま無言でそれを拭った。
自然と訪れた沈黙の中、忙しない呼吸音だけが浴室に響く。
「……悪い」
そこに遅れて落ちてきたのは、ようやく我に返ったような、どこかばつが悪そうな声だった。
「……悪いと思うことをすんなよ」
俺は込み上げる涙を見せたくなくて、なかなか顔を上げられない。
「でもお前も悪いんだからな」
「はぁ?」
上げられないと思ったけど、次には弾かれたように逸樹さんを仰ぎ見ていた。
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