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13日の金曜日
続3
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(あー、この感じ、久しぶり……)
どうにか自分で身体を清めた俺は、先に湯船に入っていた逸樹さんの前に、背中を向けて座り込んでいた。
「なんでそっち向きなんだよ」
「別にいいだろ」
そんなの、単に恥ずかしいからに決まってる。
泡のおかげで身体は隠れてるけど、アンタの視線は露骨すぎるくらい露骨だし……。
「っつーか、別に先に上がってくれていいよ。俺一人でも、もう……」
大丈夫だし、と続けようとした言葉を、「はぁ?」と強めの語気に遮られた。
「この状況で一緒に入らねぇとかねぇだろ」
「……そうですか」
さも俺の方がおかしなことを言ったみたいに――それこそ常識のように言い切られる。
俺は目の前の泡を両手ですくいながら、ははは、と乾いた笑いをこぼした。
まぁ、確かに逸樹さんちのお風呂は広いし、二人で入ってもそこまで狭さは感じない。
浴槽だって、アパートのものとは段違いに容量がある。
だからって……だからって、それが当たり前だと思うなよ。
心の中でつっこみながら、若干遠い目で泡と戯れる。
(まぁ、いいか……)
俺は諦めたようにため息をつき、それから一度目を瞑る。そうすることで、努めて意識を切り替えた。
なんだかんだ思うことはいっぱいあるけど、どうせ言ったって通じないことは分かっている。それならいっそ、現状を楽しんだ方が賢明な気もした。
だってほら、少なくとも泡風呂に罪はないわけだし……。
いや、うん。正直やっぱ気持ちいいんだよな。この主張しすぎない香りもいい感じだし、滑らかに肌を包む泡の感覚もほんと心地良くて。このちょっとした特別感のある光景とかも、なんか楽しいし――。
――とか、ようやくほっと力を抜いた俺は、身体が温まるのに比例して、ほどよく回ってきた酔いに無意識に身を任せてしまう。
少しずつ眠気も降りてきて、まどろみの中で泡を撫でながら、気がつくとこてんと頭が後ろへ傾いている。それを受け止めていたのは逸樹さんの肩だった。
俺は知らず逸樹さんにもたれるようにして目を閉じると、そのままくうくうと寝息を立てそうになり――。
「……っ、ちょ、ちょっと……っ」
けれども、それを逸樹さんは許してくれなかった。
「や、っ……」
肌の上を泡が滑るのに乗じて、逸樹さんの手が俺の胸元へと伸びてくる。
水面から出ていた胸を覆っているのは、吸い付くような濃密な泡だけだった。そのぬるぬるとした滑りを借りて、焦らすように色付きの周辺を撫でられる。かと思うと、息つく間もなく両方の突起を同時に弾かれた。
「ぃん……っ!」
びり、とそこから鮮烈な痺れが走る。
辛うじて声は堪えたけれど、おかげで身体からはいっそう力が抜けてしまった。
「寝んじゃねぇよ」
囁く声が、耳に直接注ぎ込まれる。
「この俺を放って寝るとか、マジあり得ねぇから」
ぴちゃ、と鮮やかすぎる水音がして、耳殻を執拗に舐められる。
耳朶を食まれ、甘噛みされる。その一方で、胸の突起をしつこいくらいに擦られる。
泡を介したまま摘み上げ、押し潰されて、先端を爪先で引っかかれると、そのいつもとはどこか違う感覚に、一際甘い吐息が漏れた。
「んぁっ……ぁ、待……っも、……いっ」
「もう、なんだよ……?」
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