73 / 84
13日の金曜日
1【Side:山端逸樹】
しおりを挟む
「ねえ逸樹《いつき》さん、『13日の金曜日』って映画知ってる?」
久々に直人《なおひと》と会えた金曜日。
たまには宅飲みしようぜと直人を誘って、つまみやら酒やらをしこたま買い込んで、俺は家に彼《恋人》を連れ込んだ。
もちろん、ある程度飲んだら自然の流れで直人を抱くのは大前提だ。
直人はほろ酔いぐらいにさせると感度も上がるし、何より体温がいつもより高くなって、挿《い》れた時、俺自身が直人を抱いてる!って実感できるのが堪らなくいい。
あまり飲ませすぎると眠ってしまうから丁度いい塩梅《あんばい》を見極める必要があるけれど、そういう変化を観察することも含め、直人相手だと楽しいと思えてしまうから不思議だ。
よく冷えたビールを開けて、グラスに移すのが面倒でそのまま口をつけたところで直人に問いかけられた。
一応直人の前にも俺の前にもグラスは置いてあるんだが、直人はまだプルタブに手を掛けてすらいない。まぁ、恐らく彼も缶から直飲みするだろうからグラスは使われないだろう。
「は? なんだそれ」
今日がまさに13日の金曜日だからこんなことを言い出したんだろうか?
敬虔《けいけん》なプロテスタントだったうちの両親は、割とそういうのを気にしている風ではあったけれど、俺自身は糞食らえと思って過ごしてきた。
まさか直人からそんな言葉が出るとは思ってもみなくて、俺は正直戸惑う。
「今日がそうだからか?」
言いながら、「とりあえず飲めよ」と直人の前に置かれたままの缶ビールを、自分が手にした空の缶でほんの少し彼の方へ押しやると、俺は立ち上がって冷蔵庫に新しいのを取りに行く。
「え? もう飲んだの?」
冬の寒い時期によくそんながぶ飲みできるね、とやや呆れ顔の直人を尻目に、「エアコン、ガンガンにきかせてんだから普通に飲めるだろ」と答える。
っていうか実際、俺が飲んでも仕方ねぇんだって。
「けど直人、お前だって冬だからって熱燗《あつかん》つけるようなタイプじゃねぇだろーが」
分かっていて不機嫌そうにそう言うと、「まぁね」と軽く微笑まれた。
くそっ。笑顔、可愛すぎんだろっ。
ほろ酔いにしてから……とか段々どうでも良くなってきて、取ってきたばかりの冷えた缶を手にしたままテーブルに手をついて直人の方へ身を乗り出したら、寸でのところでガードされてしまう。
(くそっ。キスのお預けって……一体何の焦らしプレイだよ!)
「話、まだ終わってない」
どうやら直人は13日の何とやらの話をまだ続けたいらしい。
(俺は今すぐにでもお前を押し倒したいんだよ。あまり長く待ては出来ねーぞ?)
思いながら座ると、俺は半ば自棄《やけ》になってビールを煽る。
久々に直人《なおひと》と会えた金曜日。
たまには宅飲みしようぜと直人を誘って、つまみやら酒やらをしこたま買い込んで、俺は家に彼《恋人》を連れ込んだ。
もちろん、ある程度飲んだら自然の流れで直人を抱くのは大前提だ。
直人はほろ酔いぐらいにさせると感度も上がるし、何より体温がいつもより高くなって、挿《い》れた時、俺自身が直人を抱いてる!って実感できるのが堪らなくいい。
あまり飲ませすぎると眠ってしまうから丁度いい塩梅《あんばい》を見極める必要があるけれど、そういう変化を観察することも含め、直人相手だと楽しいと思えてしまうから不思議だ。
よく冷えたビールを開けて、グラスに移すのが面倒でそのまま口をつけたところで直人に問いかけられた。
一応直人の前にも俺の前にもグラスは置いてあるんだが、直人はまだプルタブに手を掛けてすらいない。まぁ、恐らく彼も缶から直飲みするだろうからグラスは使われないだろう。
「は? なんだそれ」
今日がまさに13日の金曜日だからこんなことを言い出したんだろうか?
敬虔《けいけん》なプロテスタントだったうちの両親は、割とそういうのを気にしている風ではあったけれど、俺自身は糞食らえと思って過ごしてきた。
まさか直人からそんな言葉が出るとは思ってもみなくて、俺は正直戸惑う。
「今日がそうだからか?」
言いながら、「とりあえず飲めよ」と直人の前に置かれたままの缶ビールを、自分が手にした空の缶でほんの少し彼の方へ押しやると、俺は立ち上がって冷蔵庫に新しいのを取りに行く。
「え? もう飲んだの?」
冬の寒い時期によくそんながぶ飲みできるね、とやや呆れ顔の直人を尻目に、「エアコン、ガンガンにきかせてんだから普通に飲めるだろ」と答える。
っていうか実際、俺が飲んでも仕方ねぇんだって。
「けど直人、お前だって冬だからって熱燗《あつかん》つけるようなタイプじゃねぇだろーが」
分かっていて不機嫌そうにそう言うと、「まぁね」と軽く微笑まれた。
くそっ。笑顔、可愛すぎんだろっ。
ほろ酔いにしてから……とか段々どうでも良くなってきて、取ってきたばかりの冷えた缶を手にしたままテーブルに手をついて直人の方へ身を乗り出したら、寸でのところでガードされてしまう。
(くそっ。キスのお預けって……一体何の焦らしプレイだよ!)
「話、まだ終わってない」
どうやら直人は13日の何とやらの話をまだ続けたいらしい。
(俺は今すぐにでもお前を押し倒したいんだよ。あまり長く待ては出来ねーぞ?)
思いながら座ると、俺は半ば自棄《やけ》になってビールを煽る。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
おねしょ癖のせいで恋人のお泊まりを避け続けて不信感持たれて喧嘩しちゃう話
こじらせた処女
BL
網谷凛(あみやりん)には付き合って半年の恋人がいるにもかかわらず、一度もお泊まりをしたことがない。それは彼自身の悩み、おねしょをしてしまうことだった。
ある日の会社帰り、急な大雨で網谷の乗る電車が止まり、帰れなくなってしまう。どうしようかと悩んでいたところに、彼氏である市川由希(いちかわゆき)に鉢合わせる。泊まって行くことを強く勧められてしまい…?
エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので
こじらせた処女
BL
大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。
とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
男の子たちの変態的な日常
M
BL
主人公の男の子が変態的な目に遭ったり、凌辱されたり、攻められたりするお話です。とにかくHな話が読みたい方向け。
※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。
隠れSな攻めの短編集
あかさたな!
BL
こちら全話独立、オトナな短編集です。
1話1話完結しています。
いきなりオトナな内容に入るのでご注意を。
今回はソフトからドがつくくらいのSまで、いろんなタイプの攻めがみられる短編集です!隠れSとか、メガネSとか、年下Sとか…⁉︎
【お仕置きで奥の処女をもらう参謀】【口の中をいじめる歯医者】
【独占欲で使用人をいじめる王様】
【無自覚Sがトイレを我慢させる】
【召喚された勇者は魔術師の性癖(ケモ耳)に巻き込まれる】
【勝手にイくことを許さない許嫁】
【胸の敏感なところだけでいかせたいいじめっ子】
【自称Sをしばく女装っ子の部下】
【魔王を公開処刑する勇者】
【酔うとエスになるカテキョ】
【虎視眈々と下剋上を狙うヴァンパイアの眷属】
【貴族坊ちゃんの弱みを握った庶民】
【主人を調教する奴隷】
2022/04/15を持って、こちらの短編集は完結とさせていただきます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
前作に
・年下攻め
・いじわるな溺愛攻め
・下剋上っぽい関係
短編集も完結してるで、プロフィールからぜひ!
山本さんのお兄さん〜同級生女子の兄にレ×プされ気に入られてしまうDCの話〜
ルシーアンナ
BL
同級生女子の兄にレイプされ、気に入られてしまう男子中学生の話。
高校生×中学生。
1年ほど前に別名義で書いたのを手直ししたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる