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一線の越え方
24-2
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「…っあ、……待っ」
一瞬呆気に取られた俺に、更に触れるだけのキスを重ねてから、彼は捲り上げて顕わにさせた俺の胸元に、指先を滑らせた。
一度焦らすみたいに、周辺の肌を辿ったのち、不意に弾かれた胸の先から、思いがけない痺れが走る。
殺す余裕も無く漏らした自分の声に、たちまち眦が熱を持った。
そんな程度で、どうしてここまで動揺しているのか理解できない。でも、
「わ、やめ…ちょっ……」
それを理解するより先に、彼の唇は俺の首筋に触れて、鎖骨へと落ち、やがて胸元へと位置を変えていく。
長めの髪先が肌の上を掠めるだけでも、心許無い浮遊感が背筋を競り上がり、
「ン、あ……っ」
指とは逆側の突起にまで舌先が及ぶと、信じられないほど甘い声が勝手に口から漏れた。
脚を割って片膝を置かれ、そのまま何かを探るように下腹部を押し上げられる。
俺は咄嗟に息を呑んだ。
俺の上に影を落としている彼の、腰辺りまでは布団が掛かっていて、その動きまでは目には見えない。
だけど、見なくても何をされているかは明白で、わけも解らないまま、俺は自分の反応を自覚するしかなかった。
彼の手が、下方へと伸びて、下着ごと俺の衣服を摺り下げる。
抗いたいと思うのに、それもできない。彼のひたむきな眼差しや仕草は確かに俺の胸を打って、その全てを手放したくないとさえ思い始めていた。
「…あ、……っ」
気恥ずかしさばかりが先に立ち、どこを見ていいんだか、取り留めない視線が中空を彷徨う。
と、彼の手が俺の下肢へと触れて、次いで温かな掌に屹立を握りこまれると、知らず腰がびくりと跳ねた。
指先が絡みつき、緩やかにその手が上下する。
勝手に漏れそうになる吐息を堪えながら、俺は手元のシーツを握り締めた。
「直人…」
胸元から顔を上げた彼が、切なげに俺の名前を口にする。
応えるように彼を見ると、その眼差しは酷く熱っぽく揺れていて、迂闊にも心情が煽られる。
「…山、端…さんっ……」
彼の手の中で、俺は既に雫を溢れさせていて、時折響く微かな水音が一層気分を高揚させた。
* * *
「――逸樹って呼べよ。直人」
そう言って両脚を抱え上げられた時は、流石に茫洋としていた意識も一瞬正気に戻りかけた。
それでも、やっぱりイヤだとは言えなくて、…言う気にもなれなくて。
俺は自分でも過剰だと思えるほどの羞恥に肌を染めながらも、そっと彼へと手を伸ばした。
「ぃ――…っ、…あっ……!」
入口へと宛がわれた彼の屹立が、徐々に中へと押し入るのに、引き攣ったような呼気が漏れる。
力を抜こうにも身体は勝手に強張って、不慣れな圧迫感はやっぱり俺の心を怯ませて止まない。
「直人……」
だけどそれも、何度も宥めるように名を呼ばれ、強く閉じた瞼にキスを落とされると、不思議と安堵に摩り替わって行くような気がするから不思議だ。
今まで考えたこともなかったことなんだから、怖いのは当たり前――。そう先に口にしたのは、彼の方だった。
本音を言えば、俺は怖いと思うことすら悔しくて、そんなだから、自分から怖いとはなかなか言えなかった。
だけどそれすら解っていたみたいに、彼は何でもない風に優しく言った。
それもまた、今まで知らなかった彼の一面だった。
俺は胸の奥がじんと熱くなるのを感じながら、
「…もう…いい、平気だから……」
彼の肩に添わせていただけの手に少し力を込めた。最後の覚悟を決めたように。
(そこで躊躇うキャラじゃねーだろ……)
見上げた瞳に、彼の相貌が映る。
いつになく、気遣わしげで必死な表情だった。
「――…っ」
一瞬の逡巡の末、応えるように彼はゆっくり俺の上へと上体を倒した。
唇を重ね、気を散らすように俺の中心へと再び手を伸ばし、そうして、
「…い、……逸、樹…さっ……」
ようやく全てを収めきった頃には、いつの間にか俺も彼の背を強く抱きしめていた。
一瞬呆気に取られた俺に、更に触れるだけのキスを重ねてから、彼は捲り上げて顕わにさせた俺の胸元に、指先を滑らせた。
一度焦らすみたいに、周辺の肌を辿ったのち、不意に弾かれた胸の先から、思いがけない痺れが走る。
殺す余裕も無く漏らした自分の声に、たちまち眦が熱を持った。
そんな程度で、どうしてここまで動揺しているのか理解できない。でも、
「わ、やめ…ちょっ……」
それを理解するより先に、彼の唇は俺の首筋に触れて、鎖骨へと落ち、やがて胸元へと位置を変えていく。
長めの髪先が肌の上を掠めるだけでも、心許無い浮遊感が背筋を競り上がり、
「ン、あ……っ」
指とは逆側の突起にまで舌先が及ぶと、信じられないほど甘い声が勝手に口から漏れた。
脚を割って片膝を置かれ、そのまま何かを探るように下腹部を押し上げられる。
俺は咄嗟に息を呑んだ。
俺の上に影を落としている彼の、腰辺りまでは布団が掛かっていて、その動きまでは目には見えない。
だけど、見なくても何をされているかは明白で、わけも解らないまま、俺は自分の反応を自覚するしかなかった。
彼の手が、下方へと伸びて、下着ごと俺の衣服を摺り下げる。
抗いたいと思うのに、それもできない。彼のひたむきな眼差しや仕草は確かに俺の胸を打って、その全てを手放したくないとさえ思い始めていた。
「…あ、……っ」
気恥ずかしさばかりが先に立ち、どこを見ていいんだか、取り留めない視線が中空を彷徨う。
と、彼の手が俺の下肢へと触れて、次いで温かな掌に屹立を握りこまれると、知らず腰がびくりと跳ねた。
指先が絡みつき、緩やかにその手が上下する。
勝手に漏れそうになる吐息を堪えながら、俺は手元のシーツを握り締めた。
「直人…」
胸元から顔を上げた彼が、切なげに俺の名前を口にする。
応えるように彼を見ると、その眼差しは酷く熱っぽく揺れていて、迂闊にも心情が煽られる。
「…山、端…さんっ……」
彼の手の中で、俺は既に雫を溢れさせていて、時折響く微かな水音が一層気分を高揚させた。
* * *
「――逸樹って呼べよ。直人」
そう言って両脚を抱え上げられた時は、流石に茫洋としていた意識も一瞬正気に戻りかけた。
それでも、やっぱりイヤだとは言えなくて、…言う気にもなれなくて。
俺は自分でも過剰だと思えるほどの羞恥に肌を染めながらも、そっと彼へと手を伸ばした。
「ぃ――…っ、…あっ……!」
入口へと宛がわれた彼の屹立が、徐々に中へと押し入るのに、引き攣ったような呼気が漏れる。
力を抜こうにも身体は勝手に強張って、不慣れな圧迫感はやっぱり俺の心を怯ませて止まない。
「直人……」
だけどそれも、何度も宥めるように名を呼ばれ、強く閉じた瞼にキスを落とされると、不思議と安堵に摩り替わって行くような気がするから不思議だ。
今まで考えたこともなかったことなんだから、怖いのは当たり前――。そう先に口にしたのは、彼の方だった。
本音を言えば、俺は怖いと思うことすら悔しくて、そんなだから、自分から怖いとはなかなか言えなかった。
だけどそれすら解っていたみたいに、彼は何でもない風に優しく言った。
それもまた、今まで知らなかった彼の一面だった。
俺は胸の奥がじんと熱くなるのを感じながら、
「…もう…いい、平気だから……」
彼の肩に添わせていただけの手に少し力を込めた。最後の覚悟を決めたように。
(そこで躊躇うキャラじゃねーだろ……)
見上げた瞳に、彼の相貌が映る。
いつになく、気遣わしげで必死な表情だった。
「――…っ」
一瞬の逡巡の末、応えるように彼はゆっくり俺の上へと上体を倒した。
唇を重ね、気を散らすように俺の中心へと再び手を伸ばし、そうして、
「…い、……逸、樹…さっ……」
ようやく全てを収めきった頃には、いつの間にか俺も彼の背を強く抱きしめていた。
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