5 / 22
ドッペルゲンガー編
⒌そっくりな彼女の思い(フローライト視点)
しおりを挟む
屋敷に勤めているメイド長に彼女の部屋を用意するよう伝えてとディアンに言いつけ、下がらせた。
一礼して退室した彼を見届け、私は彼女へ笑みを向ける。
「すぐに用意されますから、もう少しお待ちくださいね」
「申し訳ありません…」
心底申し訳なさそうに肩を落としている彼女は、私と同じ顔、同じ声で全く違う感情を表している。
違う世界から来たらしい彼女は、珍しい衣装をしていて、最初はドレスなのかと思っていた服は、足元をよく見ると左右に分かれているようで。
それに、何故か彼女は先程から床に膝をつき、足を綺麗に揃えた状態で座っているのが気になります。
「ケイ様……その、どうして床に座られていらっしゃるの?」
「え? あぁ、失礼しました。これは私の国では、相手へ感謝を示す時にとる姿勢なのです」
背筋を真っ直ぐに伸ばした姿は、確かに見ていて綺麗だと思いました。
しかし、国の話を出した瞬間、彼女の顔が少し曇る。
ディアンの言う通り、彼女が本当に私の姿を真似た魔物の類ではないかーーーそれよりも、もっとタチの悪いものではないか、疑っていないわけではありません。
だけど、それ以上に「彼女は大丈夫」だと言っているのです。私の深奥が。
普段の私なら、そんな曖昧なものに頼ったりしないでしょう。だからこそ、幼い頃から一緒だったディアンもあれ程に戸惑っていたのですし。
エレスチャル王国を支える3大公爵が一つ、ハイルシュタイン。その一人娘にして次期当主として、私には適切な判断が常について回る。
私のミス一つで家が傾く可能性は十分あります……特に、今は。
余計なものや、怪しいものを懐へ入れるには時期が悪い。それを理解した上で、それでも「彼女なら」と。
ディアンにはきっと、私が考えもって、例えば彼女をこれからの事に利用しようと思って招き入れたのだと思っているのでしょうね。
その考えがない、とは言い切れませんけど。
「私もやってみようかしら」
「えっ⁉︎ そ、そのお召し物ですと、少し難しいかと…」
私の言葉に慌てて手で制してくる彼女に、少しでも力になりたいと、そう思う私も、嘘ではない。
一礼して退室した彼を見届け、私は彼女へ笑みを向ける。
「すぐに用意されますから、もう少しお待ちくださいね」
「申し訳ありません…」
心底申し訳なさそうに肩を落としている彼女は、私と同じ顔、同じ声で全く違う感情を表している。
違う世界から来たらしい彼女は、珍しい衣装をしていて、最初はドレスなのかと思っていた服は、足元をよく見ると左右に分かれているようで。
それに、何故か彼女は先程から床に膝をつき、足を綺麗に揃えた状態で座っているのが気になります。
「ケイ様……その、どうして床に座られていらっしゃるの?」
「え? あぁ、失礼しました。これは私の国では、相手へ感謝を示す時にとる姿勢なのです」
背筋を真っ直ぐに伸ばした姿は、確かに見ていて綺麗だと思いました。
しかし、国の話を出した瞬間、彼女の顔が少し曇る。
ディアンの言う通り、彼女が本当に私の姿を真似た魔物の類ではないかーーーそれよりも、もっとタチの悪いものではないか、疑っていないわけではありません。
だけど、それ以上に「彼女は大丈夫」だと言っているのです。私の深奥が。
普段の私なら、そんな曖昧なものに頼ったりしないでしょう。だからこそ、幼い頃から一緒だったディアンもあれ程に戸惑っていたのですし。
エレスチャル王国を支える3大公爵が一つ、ハイルシュタイン。その一人娘にして次期当主として、私には適切な判断が常について回る。
私のミス一つで家が傾く可能性は十分あります……特に、今は。
余計なものや、怪しいものを懐へ入れるには時期が悪い。それを理解した上で、それでも「彼女なら」と。
ディアンにはきっと、私が考えもって、例えば彼女をこれからの事に利用しようと思って招き入れたのだと思っているのでしょうね。
その考えがない、とは言い切れませんけど。
「私もやってみようかしら」
「えっ⁉︎ そ、そのお召し物ですと、少し難しいかと…」
私の言葉に慌てて手で制してくる彼女に、少しでも力になりたいと、そう思う私も、嘘ではない。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
王妃から夜伽を命じられたメイドのささやかな復讐
当麻月菜
恋愛
没落した貴族令嬢という過去を隠して、ロッタは王宮でメイドとして日々業務に勤しむ毎日。
でもある日、子宝に恵まれない王妃のマルガリータから国王との夜伽を命じられてしまう。
その理由は、ロッタとマルガリータの髪と目の色が同じという至極単純なもの。
ただし、夜伽を務めてもらうが側室として召し上げることは無い。所謂、使い捨ての世継ぎ製造機になれと言われたのだ。
馬鹿馬鹿しい話であるが、これは王命─── 断れば即、極刑。逃げても、極刑。
途方に暮れたロッタだけれど、そこに友人のアサギが現れて、この危機を切り抜けるとんでもない策を教えてくれるのだが……。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】
迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。
ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。
自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。
「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」
「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」
※表現には実際と違う場合があります。
そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。
私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。
※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。
※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる