異世界ドッペルゲンガー

Ryo

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ドッペルゲンガー編

⒌そっくりな彼女の思い(フローライト視点)

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 屋敷に勤めているメイド長に彼女の部屋を用意するよう伝えてとディアンに言いつけ、下がらせた。
 一礼して退室した彼を見届け、私は彼女へ笑みを向ける。

「すぐに用意されますから、もう少しお待ちくださいね」
「申し訳ありません…」

 心底申し訳なさそうに肩を落としている彼女は、私と同じ顔、同じ声で全く違う感情を表している。

 違う世界から来たらしい彼女は、珍しい衣装をしていて、最初はドレスなのかと思っていた服は、足元をよく見ると左右に分かれているようで。

 それに、何故か彼女は先程から床に膝をつき、足を綺麗に揃えた状態で座っているのが気になります。

「ケイ様……その、どうして床に座られていらっしゃるの?」
「え? あぁ、失礼しました。これは私の国では、相手へ感謝を示す時にとる姿勢なのです」

 背筋を真っ直ぐに伸ばした姿は、確かに見ていて綺麗だと思いました。
 しかし、国の話を出した瞬間、彼女の顔が少し曇る。

 ディアンの言う通り、彼女が本当に私の姿を真似た魔物の類ではないかーーーそれよりも、もっとタチの悪いものではないか、疑っていないわけではありません。

 だけど、それ以上に「彼女は大丈夫」だと言っているのです。私の深奥が。

 普段の私なら、そんな曖昧なものに頼ったりしないでしょう。だからこそ、幼い頃から一緒だったディアンもあれ程に戸惑っていたのですし。

 エレスチャル王国を支える3大公爵が一つ、ハイルシュタイン。その一人娘にして次期当主として、私には適切な判断が常について回る。
 私のミス一つで家が傾く可能性は十分あります……特に、

 余計なものや、怪しいものを懐へ入れるには時期が悪い。それを理解した上で、それでも「彼女なら」と。

 ディアンにはきっと、私が考えもって、例えば彼女をこれからの事に利用しようと思って招き入れたのだと思っているのでしょうね。

 その考えがない、とは言い切れませんけど。

「私もやってみようかしら」
「えっ⁉︎ そ、そのお召し物ですと、少し難しいかと…」


 私の言葉に慌てて手で制してくる彼女に、少しでも力になりたいと、そう思う私も、嘘ではない。
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