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ドッペルゲンガー編
⒊辿り着いた先
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呆然と立ち竦む私に、警戒は解かないが訝しげな顔をして青年が目を細める。
私が嘘をついていないか探ろうとしているようだが、私は本当に参っていた。
テーマパークのようなものではない。それどころか、青年の言葉が本当なら日本ですらない。
そうなると、言葉が通じている事が謎になるのだが、青年が嘘をついているようには見えなかった。
それは、剣術の大会で相手の目を見ていると分かるようになる。フェイントを入れる時の目は、嘘をつく時と同じものだ。
それが、全く感じられない。
つまり、彼は本当のことを言っている。
でも、そうなると私は一体どうやってここに? そもそもエレスチャル王国とはどこだ?
いろんな疑問が頭の中に浮かんでは沈み、ちゃんとした答えを自分の中で見つけられるものはない。
いや……確か、私は学校から家へ帰り、道場へ入ろうとしていたはず。
だが、踏み出した足は床の感触を確かめる事なく、体が宙に浮いた。
その後から、記憶がない。
「あの……」
控えめにかけられた声に、気付けば下がっていた顔をあげると、青年の背後から顔を出し、少女がこちらを伺っていた。
私と目が合うとビクッと体を震わせたが、それでも目を逸らすことはなかった。
「貴女……お名前は?」
「名前……私は、橘蛍と…いいます」
「私はフローライト・ハイルシュタイン…ねぇ、貴女はどこから来たの?」
「私は…日本から…」
「ニホン…というのは、貴女のいた街の名前?」
「いえ、国の名です…島国の…」
「…ディアン。この大陸にニホンという国はありますか?」
「いえ、お嬢様。大陸どころか、この世界にそのような名の国はございません。ましてや、島国など」
ディアンと呼ばれた青年は、きっぱりと否定した。悩む素ぶりすらなかったのは、それだけの知識があるからなのか、私を未だ疑っているからなのか。
だが、それが本当だったら? 私だってエレスチャルなんて名前の国は知らないじゃないか。
そんな名の国、私の「世界」になかった。
日本という名の国は、彼らの「世界」にはない。
なら、ここはーーー?
「別の……世界……?」
私が嘘をついていないか探ろうとしているようだが、私は本当に参っていた。
テーマパークのようなものではない。それどころか、青年の言葉が本当なら日本ですらない。
そうなると、言葉が通じている事が謎になるのだが、青年が嘘をついているようには見えなかった。
それは、剣術の大会で相手の目を見ていると分かるようになる。フェイントを入れる時の目は、嘘をつく時と同じものだ。
それが、全く感じられない。
つまり、彼は本当のことを言っている。
でも、そうなると私は一体どうやってここに? そもそもエレスチャル王国とはどこだ?
いろんな疑問が頭の中に浮かんでは沈み、ちゃんとした答えを自分の中で見つけられるものはない。
いや……確か、私は学校から家へ帰り、道場へ入ろうとしていたはず。
だが、踏み出した足は床の感触を確かめる事なく、体が宙に浮いた。
その後から、記憶がない。
「あの……」
控えめにかけられた声に、気付けば下がっていた顔をあげると、青年の背後から顔を出し、少女がこちらを伺っていた。
私と目が合うとビクッと体を震わせたが、それでも目を逸らすことはなかった。
「貴女……お名前は?」
「名前……私は、橘蛍と…いいます」
「私はフローライト・ハイルシュタイン…ねぇ、貴女はどこから来たの?」
「私は…日本から…」
「ニホン…というのは、貴女のいた街の名前?」
「いえ、国の名です…島国の…」
「…ディアン。この大陸にニホンという国はありますか?」
「いえ、お嬢様。大陸どころか、この世界にそのような名の国はございません。ましてや、島国など」
ディアンと呼ばれた青年は、きっぱりと否定した。悩む素ぶりすらなかったのは、それだけの知識があるからなのか、私を未だ疑っているからなのか。
だが、それが本当だったら? 私だってエレスチャルなんて名前の国は知らないじゃないか。
そんな名の国、私の「世界」になかった。
日本という名の国は、彼らの「世界」にはない。
なら、ここはーーー?
「別の……世界……?」
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