無口な魔法学生の昼寝場所

Ryo

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第1章

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 校舎本館のトイレから転移の魔法で飛んだブラッドは、敷地内にある森の中にいた。


 ここは図書館の裏手にある森で、一般生徒は基本的に立入禁止の扱いになっている。

 理由として、学院が建つ前からあるこの森には、精霊が住んでいて侵入者を迷わせる魔法がかかっている、と言われていた。


 しかし、幼い頃から魔法を研鑽けんさんしてきたブラッドには、この森にかけられた幻惑の魔法など、息をするように無効化できる。


 そもそも学院内での魔法の無許可使用はできないので、一般生徒も普通は無理に入ってはこない。

 いざ迷えば魔法を使って戻って来れても、魔法の無許可使用でバレたうえに無断侵入で怒られる。

 そこまでしてでも、森に用のある者はいなかった。


 とは言え、今のブラッドは特に魔法を使っているわけではない。

 普通に魔法耐性が強いので、何もせずとも幻惑にかからないのだ。これも鍛錬の賜物たまものだ。


 特別何か発見できるわけでもない森は教師でも入ることは稀で、ここなら誰にも邪魔されないはず、とブラッドは望みをかけていた。



「ん……?」



 だが、森の中に探索魔法をかけてみると、森の中心付近に人の反応があった。数は1。

 少し待ってみても動きはなく、見回りの教師でもないようだ。


 ここでも1人にはなれないのか、と落胆するのと同時に。

 こんな所で何をしているのか、と少しばかりの好奇心が湧いた。


 ブラッドは反応があった方角へ、ゆっくり足を進める。


 学院内で、普段は聴くことのない草木の擦れる音、木々の間から差し込む暖かい日差し、土や樹木の匂い。


 何より、自分の周りで無駄に騒ぐ声がないのが素晴らしい。
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