無口な魔法学生の昼寝場所

Ryo

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第1章

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 今日は、周囲で未だ女生徒が騒いでいるタイミングで席から立ち上がった。


 それだけで廊下の女生徒まで騒ぎ出すのだから、辟易して溜息が出る。



「あれ、ブラッド君! どこ行くの?」

「やっぱり私と帰るのよねー!」

「一緒にケーキ食べに行きましょ!」



 帰るのかと思った女生徒が慌てる中、ブラッドは面倒そうな顔で「トイレ」とだけ答えた。




「きゃっ、ごめんなさい!」

「じゃあ、それまでに決めとくから、待っていてね♡」



 何故、彼女達の中では、自分が付き合うのは決定事項なのだろう。


 さすがに手洗いにまでついて来ることはないので、ブラッドは鞄を置いて教室を出た。

 視線を感じながら男子トイレに入ると、中に他の生徒がいないことを確認。


 1つの魔法を発動させたーー。



「お、おーい。ブラッドー? そろそろ行かねーと女子達が突撃かまして来るぞー……?」



 ブラッドと同じクラスの男子生徒が、恐る恐るといった様子でトイレ内に声をかけた。


 自分の背中に女子からの強い視線が突き刺さっているのを感じ冷や汗を掻くが、トイレの中から返事はない。


 それどころか、他に人がいる気配もなかった。



「おーい……? な、なぁ、本当にブラッドはここのトイレに入ったのか?」

「そーよ! ちゃんと私達が見てたもの!」



 女生徒の主張に若干引きながらも、男子生徒はトイレの中に再び視線を送る。

 しかし、いくら見ても他に人影はない。



「いないんだけど……」

「はぁ? ふざけてないで、早くブラッド君呼んでよ!」

「いや、マジでいないんだって……」



 女子って怖いな、ブラッドも可哀想に、と男子生徒はクラスメイトに憐みの念を送るのだった。
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