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司祭長 キール

その13

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「───お待ちしておりました、マレットさん。日頃の協力を感謝いたします」

他の司祭よりもさらに装飾の施された司祭服の司祭長キールが少女を迎える。

「お久しぶりですの、キールさん。遠くからご苦労様ですの」

「いえいえ、これはある意味魔法史に残るかもしれない貴重な出来事かもしれません。本国で報告を待つだけなど、出来ようはずもありません!」

司祭長は鼻息も荒く、少女に答える。

周囲の職員は、そんな司祭長を、軽く引きながら生暖かく見守るのだった。



先日の夕方、ルビナの村に馬車4台にもなるちょっとした商団キャラバン並みの団体がジュライより到着する。

もちろん司祭長キールと側近の司祭数名、それを護衛する騎士、更に今後の研究の助けになる様にと研究材料の諸々など。


やってきた司祭長と司祭達は、エリー達先行の司祭たちの借りている元空き家で過ごし、兵士や騎士は外の仮設のテントの様なもので夜を明かすのだった。


そして次の日の昼前、待ちに待っていたあの少女が村のこの建物を訪れる。

一緒に来た黒衣の冒険者は建物に入る事もなく、表で木陰に腰かけると、リュックから楽器を取り出しポロンポロンと奏でだした。



「ではマレットさん、早速ですがよろしいでしょうか?」

司祭長が目の前に座る少女に尋ねる。

「いいんですけれど、コレはどなたに入れたらよろしいんですの?」

少女は目の前の司祭長を見て言う。

「出来れば被験者として体験したいので、私にお願いしたいんですけど、よろしいですか?」

「そうなんですの?。では背中をこちらに向けてくださいですの」


言われた司祭長は少女に背を向け……ようとしたところで、1つ質問をした。

「あの、正面からやる事は可能でしょうか?。出来たら私もその様子を見ておきたいのですが?」

「ん~…正面からはやった事はありませんが、多分大丈夫だと思いますの。それでは、背をまっすぐに伸ばしてくださいですの」

言われた司祭長は背のピンと伸ばして座ると、司祭服の前をまくり上げ裾を持ち上げる。

そこには透き通るような真っ白な肌と、豊満な胸を包む布製の肌着があった。

不意の事にその肌を一瞬見てしまった兵士や騎士は、慌てて背を向ける。


「キールさん?…あの、とても言いにくいんですけれど、服の上からやれますのよ?」

「っ!!!?」

慌てて裾をおろす司祭長の顔は、元々が白い肌なのもあって真っ赤に見えた。


「すいませんでした…改めてお願いします」

未だ赤いままの顔の司祭長は、両手を膝に乗せ背すじをピン!と立てる。

少女は目をつぶり、大きく深呼吸をすると、胸の前で手を合わせた。

少しすると合わせた掌が回復魔法とは違う感じにぼんやりと光り出し、その光を包むように掌がふわりと曲げられる。

司祭長が正面を見ると、その行動を行っている少女の顔は少し険しく見えた。


まるでソフトボール位の小さな光る球を大事に持つようにして、少女はその光を司祭長の胸に当てる。

「いいですか。鑑定士ウォッチャーはしっかり魔力の流れを見ておいてください。司祭達は何か少しでも気になる事があれば、メモなりを残してあとで報告できるように」

司祭長が号を飛ばし、司祭や鑑定士ウォッチャー達は真剣に謎の行動をする少女と司祭長を見守る。



「本当にこれ、さっきまでマレットさんの体と繋がっていたのに、今は完全に切り離されていますね」

「切り離されているのに魔力自体はきちんと流れたままです…本当に不思議な現象ですね…」


少女は司祭長に当てた光の球を、ゆっくりと押し込むようにしていく。

「魔力球、キール様の体内に入っていきます」

「キール様、痛みや不快感などはありませんか?」

司祭達が司祭長を心配する様に見るが、当の司祭長に変化は見られなかった。

「なんだか入っているあたりが柔らかく暖かいですが、痛み等はありません」

司祭長の報告を、魔力の流れはじっと見たままに、忘れない様に書き残す高位鑑定士ハイウォッチャーたち。

そして光る球は全て司祭長の中へと吸い込まれていき、少女は大きく息を吐いて深く椅子に座った。


少女は見た感じかなりの汗が流れており、他者から見てもかなり辛そうにも見える。

「マレットさん、大丈夫ですか?」

「…だ、大丈夫ですの。これをやるとかなり疲れるんですの。でも、少ししたら落ち着くので、気にしないでいいですの」

エリーは「そうですか?」とまだ不安そうに少女を見て、兵士から渡された水を少女へと差し出す。

「マレットさん、はいお水です。飲めますか?」

「あ、ありがとうございますですの。ありがたくいただきますの」

少女はゆっくりと水を口に含み、息を正しながらゆっくりと喉に流していくのだった。
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