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居場所
その19
しおりを挟む魔族……それも魔王軍王の一人ともいわれるトロールの王が、人間へと頭を下げた事に周囲は驚きを隠せなかった。
「王よ、私からもお願いします。どうかトロール達にも理解を」
先程の戦を率いた兵士隊長さえも王へと願いを訴え、その横に立つ少女も声をあげる。
「王様、トロールさんもこう言ってますの。お願いしますので、ちゃんと応えて欲しいんですの」
「むぅ…しかし…」
あまりの事に王は言葉に詰まり、その横では大臣も何も言えずにおたおたしてる。
「それでは、街のトロール達に監視をつけてはいかがですか?。そしてしばらく見て大丈夫なら監視を外せばいいのです」
兵士隊長がなんとかしようと意見を言った。
隊長とは言え一兵士が王に進言しているのだ、よっぽどな事だと周囲は理解する。
「その通りですの。そしてトロールさん達がどれだけ街に役に立てるかを自分達で証明すればよいのですの」
少女も王へと頑張って何とかしようと意見を言う。
しばらく考えた後、王が閉ざされていた口を開いた。
「では、トロール達の街での生活を限定的に許可しよう。ただし、兵士達が監視するものとする」
王はトロールの王へと顔を向ける。
「そして、貴方には城に残ってもらいトロール達への抑止力とします。良いですね、トロール王?」
「ありがたい……」
トロール王が再び人の王へと頭を下げた。
「トロール達の生活の場が用意できるまで、数日は城で過ごしてもらうものとする。武器は没収した上で、応接室の1つに軟禁という事になるがよろしいかな?」
王様が問うと、トロール王は深々と頭を下げて納得の意を示す。
後ろにいるトロール達も、同じ様に深々と頭を下げていた。
そんなトロール達を少女は満足そうにうんうんと頷いていた。
「…そういえば、魔術師殿の姿が見えないのですが、どうされました?」
今更ですがと大臣が兵士隊長へと尋ねる。
「えーっと…魔術師殿達はシェイド殿とトロール王の戦いが終わって城に戻ると、『ではあとは任せたのじゃ』とだけ残してどこかへ行かれました…」
「えぇーっ!?」
大臣がちょっと飛び上がり、驚きの声をあげる。
「まだあの魔術師殿達への謝礼もしてないのですよ!?。なんで引き止めなかったのですか!」
「すみません…一応止めたのですが、ただ後の事はシェイド殿にとのゴリ押しでして…」
「むむむ…あの、シェイド殿は、あの魔術師殿達の居場所はご存じで?」
大臣は不死王へと顔を向けると疑問した。
「どこに住まわれてるとかは分かりませんの。でも、たまに会うので、今度会った時にでもお礼は伝えておきますの」
不死王の代わりに、隣にいた少女が大臣に答える。
「そうですか……では謝礼等はマレット殿に渡したらよいですかね」
そう言うと腕を組んで、大臣はブツブツ言って何かを考えている。
「では兵士達よ。トロール王達を奥の応接室へと連れて行くよう。一応何名か監視につけますが、よろしいですね?」
「気遣い感謝する、人の王よ」
それだけ言い残して、トロール達は兵士達に連れられて大人しく応接室へと向って行った。
残された少女、そして不死王に王が声をかける。
「…シェイド、そしてマレットよ。あぁは言ったものの不安は消えぬ。トロール達が落ち着くまで、お前達にも監視を頼めないだろうか?」
「…分かりましたの。とりあえずしばらくはわたくし達もお城に厄介になりますの。王様、それでよろしいですの?」
王は「よろしく頼む」と言い残してまた城内へと戻っていった。
残された2人に大臣が寄ってくる。
「あのところで、魔術師殿とあなた達2人への報酬のお話なのですが…」
少女は不死王の方へと顔を向けると、不死王は何も言わずにこくりと頷く。
「報酬は別に要りませんの。その代わりといってはなんですけど、トロールさん達をよろしくお願いしますの」
そう言われて大臣は、嬉しさが隠しきれてない少し笑顔のまま少女達へと頭を下げると「ありがとうございました」と城内へと戻っていった。
「では、シェイドさん。とりあえずトロールさん達のところに行きますの」
少女が声をかけると不死王は「そうだな」とぶっきらぼうに答えると、兵士に連れられて応接室へと歩いて行った。
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