101 / 133
迎撃
その11
しおりを挟む「なんだ、まだ生きてるのか?。鬱陶しくへばりつきやがって!。離れやがれ!」
オークが声を荒げてはがそうとする中、人影は殴られた頭から血を流しながら、すがりついた腰に手を回すと腰の後ろで両手をクラッチさせる。
「てめぇ、離れ───」
「だっしゃーーーーっ!!」
そして、後ろに反りながら今度は雄叫びと共に後方へとオークを投げ飛ばす。
投げられたオークは大木に当たり落下して、そのままずり落ちる様にその場に尻から着地する。
そして人影は、右腕を横に突き出しそのままオークへと突進してきた。
「ダーーーーっ!!」
そして木と挟むようにオークの首めがけて突っ込んだ。
ドスンという鈍い音と共に人影の腕が首を打撃して、オークを大木と腕に挟む様に叩きつける。
少し遅れてベキベキと音をたてながら、人影が首を打撃した場所から大木がへし折れていく。
いきなり現れた人影に一気に蹂躙された仲間を見て、残されたオークは逃げようと背を向けた、その時だった。
「───麻痺」
そんなオークの背へと、上空から魔法が飛んできて、オークはそのまま地面に俯せで倒れる。
大木をへし折った人影は、そのままさっき逃げようとして、魔法で倒れたオークへと近寄っていく。
「ふんっ!!」
そして、背後から首に両腕を回すと、腕に一気に力を込めて捻る。
バキッという鈍い音がして、オークは完全に動きを止めた。
「…もう動けるのはいないな?。あとはそこの山で終《しま》いだ」
人影はそう言うと、兄貴オーク達の山へと歩を進めていく。
「て、てめぇは何者だっ!。く、来るんじゃねぇっ!!」
「「「ひぃーーーーーっ!」」」
痺れて動けない兄貴オークは、精一杯の虚勢を張りながら人影を威嚇する。
だがそんなもので怯むはずもなく、人影はおもむろに1匹づつオークを持ち上げると、首をバキっとして淡々と止めを刺していく。
そして最後の一匹まで止めを刺し終わると、上空へと顔を向けた。
オークも倒し終え安全になった地上へとラベンダーはゆっくり降りてくる。
そして、助けてくれた人影を恐る恐る見る。
「…あの、ホーガンさん…ですよね?」
「おう!…ではないですね、はい。ラベンダーさんのおかげで手早く処理できました。ホッホッホ」
さっきまで暴れてた姿がウソのように、優しいおじいさんに戻ったこの村のまとめ役。
そして目の前のラベンダーをじぃーっと上から下まで見る。
「褐色のエルフとは珍妙と思ってましたが、やはり夢魔だったのですね」
言われてラベンダーは今更ながらハッと気付く。
空を飛んでるところも、魔法を使ってるところも、そして背中の羽も隠さないまま、この老人に見られてしまっている事を。
「いや…あの…これはですね…そのっ!」
頭をフル回転させて考えるものの、良い言い訳が全く浮かばないラベンダー。
暫くワタワタした後、観念したように顔を地面に向ける。
「えっと…その…はい…」
そんなラベンダーを見る老人の目は、とても穏やかに見える。
ラベンダーは上目遣い気味に老人を見ると、弱弱しい声で言う。
「…あの、私もこのまま退治されちゃうのでしょうか…?」
そう言われて老人は、堪えきれずに笑い出す。
「ホッホッホ、そんな訳ないじゃないですか。貴女は一人で村を守ろうとしてくれてたのでしょう?」
「…あ、えっと…その…はい。旦那さんもいますし、私が守らないと、と…」
老人はそんなラベンダーを見ながら、うんうんと頷く。
「では、私が貴女を退治する理由はありません。むしろ村の者を代表して言わせていただきます…ラベンダーさん、本当にありがとうございました」
そう言って老人は、ラベンダーに深々と頭を下げた。
「ちょ、ちょっと!。ホーガンさん、そんなのやめてください!。それに、結局私は足止めすらまともに出来なかったわけですし、そんな言われることは…」
老人は頭を上げ目の前のラベンダーを見て、ワタワタと忙しく動いて焦っているラベンダーの手をそっと取ると、まっすぐ見る。
「貴女はこの村の為に戦ってくれた。そしてそのおかげで村には何一つ被害は出ていない。これが全てです」
「ホーガンさん…」
老人は目を細め、うんうんと頷きながら「よく頑張りましたね」とラベンダーにやさしく語りかける。
ラベンダーの視界は一気に滲み、しばらく治まる事はなかった。
「………でも、よく夢魔なんか知ってましたね?、ホーガンさんは」
オークの遺体を片付けながら、ラベンダーは老人に話しかける。
「今は隠居してますが、私は冒険者をしてた事もあるんですよ。…昔々の話ですけれどね」
老人は作業の手は休めないまま、楽しそうにホッホッホと笑う。
ただ、オークの巨体を軽々と持ち上げ、掘った穴へと放り込んでる姿は、どう考えても一般的な老人ではなかった。
「へえー、そうなんですねー」
人知れず動いた2人の活躍で、村の危機はとりあえず回避されるのであった。
20
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる