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第三章 ダース=D=スレイヤー
序 その1
しおりを挟む槍使いが腕を引き渾身の力を込めで戦戟《ハルバード》で突く。
しかも突きながら手首の捻りを加える事で、破壊力を底上げする。
(…この前の二の轍はふまない!)
この様に捻る事で、この前の様に槍の面を殴られズらすことは出来なくなっているはずだ。
その高い威力の突きに対して、大剣使いは遠心力を乗せた逆袈裟斬りで跳ね上げる。
剣士の筋力で振る大剣の重量に加え、遠心力まで乗った切り上げの威力はとてつもなく、槍使いの渾身の突きすらも跳ね飛ばし、相手共々をふっ飛ばす。
槍使いが倒れ、すぐに立ち上がろうと上半身を起こした目の前には、大剣の切っ先が向けられていた。
手に持っていた槍を手放し両手を上げ、槍使いは降参の意思を審判に示す。
「勝負あり。勝者、ダース選手!」
「「「わーーーーーーーーっ!!」」」
観客席が一気に沸く。
『ダース選手の勝利です!。今大会、優勝はダース選手です!!』
アナウンスが闘場に響き、観客席のボルテージはさらに上がっていく。
槍使いのゲイダは立ち上がると、目の前の大剣使いのダースに頭を下げた。
「いや、お強かった。その称号は伊達ではないという事ですね、勉強になりました」
「いや、アンタもなかなかのモノだったぞ。今度はちゃんと格闘家《モンク》として戦ってくれ」
大剣使いも相手の健闘を称える。
戦いの後も互いに敬えるのは、闘技大会故の美しい瞬間かもしれない。
ただ、槍使いは不思議そうな顔をしていた。
「あの、私は槍一本なので、格闘家《モンク》はやったことありませんが、どなたかと思い違いをしてませんか?」
「え?…アンタ、ウィズ=ダムの指定枠だろう?。前回優勝したっていう?」
言われて、槍使いは「なるほど」と納得した。
「確かに私は今回の指定枠なのですが、前回はまた別の方が指定枠だったのです。そして、その方に私は負けたのですが、あれはとても良い経験でした」
「はぁぁぁぁっ!?。アンタじゃないのかっ!!?」
闘技場の中央には、渋いイケボな絶叫が響いていた。
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