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夢魔

その25

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「ラベンダーさんも無事受け入れて貰えてよかったですの」

神官の少女は黒衣の青年と並んで、村の教会の方へと歩きながら感想を述べる。


少女の言う様に、次の農家でもラベンダーは好意的に受け入れられていた。

ガーベラの世話になった農家でもやったように、同じくそこの息子にあの光を埋め込むのも、少女は忘れなかった。



少女は農家の息子の回復力をあの光で高め、ガーベラ達夢魔の食事を極力そこだけで済ませるようにお願いしていたのだ。

ただ、どの程度夢食いで減って、あの光でどの程度回復できるかは分からないので、様子を見ながらやってくれとも伝えてある。


(…もしあれで足りない様なら、他の人にも光を入れて、そちらからも食べてもらうなりしないといけないですの)

少女は上手くいくといいなと思いながら、道を進んでいく。



ところで、少女は夢魔達を農家へと預けたが、それは決して適当に選んだわけではなかった。

夢食いで体力を減らされるのなら、なるべく健康的で体力のありそうな若者がいる家を、出発前に選んでおいたのだ。


その上でまず畑作業をしている息子の方へ足を運び、まず夢魔本人に、生活共にして大丈夫かどうかを尋ねる。

一応男女が一緒に生活するのだ、好みに合う異性の方がすこしは楽しいだろうというの神官の少女の提案だった。

───もっとも、出発の際夢魔王から聞いていた二人の嗜好を聞いていたので、それほど心配はしていなかったのだが。


次に息子と夢魔を対面させて、男性の方が例えば女性が苦手等の不具合がないかを確認してから、最後に家で家主に説得をしていたのだ。

ちなみに生活費として夢魔達が差し出していた金貨は、少女達の所持金からそれなりの金額を渡してある。

店もない村では街の様に使う機会もそうないので、すぐになくなることはないとは思うが、次に訪れた時に追加で渡した方がいいかもしれないと少女は思う。



「…しかし、あのクールな感じの夢魔さん達が筋肉質な男性が大好きとは、なんか不思議ですのね」

そう、夢魔王から教えて貰った二人の嗜好とは、ズバリ『マッチョ好き』であった。

健康的に日に焼けた肌だと更にいいという話も聞いていた。

なので、普通に日に焼けて、農作業で鍛えられた農家の息子というのは、あの夢魔達にとって嗜好のど真ん中だったのだ。


最初に畑の方を見に行って、汗を流しながら畑仕事をしている男性を見つめる…というかガン見していた2人。

興奮が抑えられす、鼻息荒く口許のマスクがふわふわ揺れていて、これはこれで大丈夫なのかと逆に不安になったものだった。

(…夢魔王のピーディーさんといい、夢魔族の皆さんはなんか嗜好がすごいですのね)



教会で夜を明かして、久々の教会を軽く掃除を済ませると、この村の冒険者ギルド(という名のホーガン老人の家)へと向かう。

自分の代わりに管理を任せているホーガンがきちんと定期的に掃除をしてくれてるのか、教会はきれいだった。

家を訪ねると教会の管理のお礼と、また顔を出しますという挨拶を済ませて、2人はウィズ=ダムの街へと戻っていく。



街へ戻り、夢魔族のドタバタで行けていなかった、今回の護衛クエスト完了報告をするべく冒険者ギルドへ向かう。

入り口の扉を開けてカウンターに向うと、中で書類と格闘していた受付のお姉さんが出てきた。


「あ、マレットさんお帰りなさい。サンド=リヨンへの旅はどうでしたか?」

正直きついクエストだったかと不安だったので、お姉さんは無事に帰ってきた2人を見てとても安堵していた。

「ところで今日は、クエストの受注ですか?」

お姉さんは笑顔で眼の前の少女に質問をする。


「えっとまずは…これをお願いしますの」

鞄から出されたのはクエスト完了証であった。

(…なるほど。帰りもジョンさん達の護衛をして戻ってきたんですね)

お姉さんは完了証に不備がないのを確認すると、少女に笑顔で言う。

「はい、確かにクエスト完了を確認しました。ごくろうさまでした、ポイントは加算しておきますね。あと、こちらが報酬となります」

お姉さんは報酬金をトレーに乗せて、少女の前に差し出す。



「これでギルドの査定は十分超えましたよ。次の査定まで頑張ってくださいね。お疲れ様でした」

お姉さんが少女に言うと、目の前でまた鞄をごそごそ探す少女がいた。

「あと、えーと…ありましたの。これを預かってきてますの」

しばらく鞄を漁っていた少女は、そこから一通の手紙を差し出してきた。


(…あれ?。なんかこの流れ、妙に既視感を感じるんですけど?)

お姉さんは、なんとも言えない嫌な予感がしてならなかった。

 
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