上 下
27 / 103
査定ポイント

その2

しおりを挟む
 

「下位でも討伐系のクエストなら、獲得ポイントは結構ありますよ?。例えば…」

お姉さんはクエストの書類を何枚か見繕って机に並べる。

だが、肝心の神官の少女の表情はなぜか厳しいままだった。


「出来れば討伐クエストは避けたいんですの。他に何かありませんの?」

少女なりに何か思うことがあるのだろう。

目の前に並べられたクエストの書類を見比べながらうんうん唸っている。


「あっ、例えばもう少し上の採集クエストなんかどうですの?。それならポイント多く貰えるのではありませんの?」

名案を思い付いたという満面の笑顔で言われると本当に辛いですが、でも受付として告げなきゃいけないのです。

「冒険者が無理しないよう、自分のランク以上のクエストは受けられないって話だろう?。少し前にランク2の採集クエストもやったし、受けれるのは受けてるぞ?」

(…ナイスお兄さん!。少女を悲しませるような、つらい宣告をしないですみました!)

「では、採集じゃなくてもいいので、受けれるような他のクエストとかってありませんの?」

少女は並べてある書類を見渡すがそんなものはなかった。

そもそもクエスト受注を管理してるは私なので、それは間違いないのです。



「す、すみませんっ!。クエスト依頼ってまだ大丈夫ですか!?」

突然入口の扉が勢いよく開き、男性の大きな声がした。

見てみると商人風の恰好をした30代くらいの男性がいて、かなり急いできたのか、軽く息を荒げている。


「はい、まだ大丈夫ですけど…あと半刻ほどで受付は締めますので、クエスト貼り出しは明日からになりますが大丈夫でしょうか?」

少女達に「ごめんね」と声をかけカウンターに戻ると、やってきたお客様の相手をすることにする。

「明日からですか…緊急ってことで今すぐ何とかなりませんか!?」

また無茶を…と思っても顔に出さないのは、流石プロの受付ですよね、私…と自画自賛。


「何か事情がありそうですね、とりあえずお話を伺いましょう。そちらの席にどうぞ」

とりあえず受付横の椅子を指さし座ってもらうことにする。

すいませんと席に着き少し落ち着いたらしい男性は、状況を話し出した。



「私、実は行商人をやっておりまして。明日からサンド=リヨン王国へ出発する予定だったのです。」

サンド=リヨンといえば、馬車で数日ほどかかる同盟三国の1つですね。

騎士文化を重視しており、三国で唯一騎馬団を保有している国だとか。


「それなりの距離ですからね、いつも護衛は懇意にしてあるパーティーにお願いしていたのですが、そのパーティーが飛竜討伐クエストを失敗したとかで、命からがら戻ってきたらしくですね」

差し出したコップの水を少し飲んで落ち着けると、更に話を続ける。

「幸い命に別状はないという事なのですが、さすがに護衛は無理という事で断りの話が入ってきたのがさっきでして、急いで代わりの護衛をしていただけるパーティーをお願いしたいのです」

あぁ、そういえばさっき、ランク4のパーティーのクエスト失敗の書類を処理しました…きっとあの人たちの事ですね。


「とりあえず、時間は短いですが出来る限りの対応はさせていただきます。ところで、クエスト依頼に際してなにか条件はございますか?」

愚痴を聞いてても仕方ないので、ここは敢えて事務的に話を進める。

目の前の男性もそうだったと姿勢を正し、こちらの問いに答えた。


「依頼内容はここからサンド=リヨンまでの荷馬車と私達商人の護衛。サンド=リヨンまでなので片道3日ってとこですかね」

ふんふん、たしかにそれくらいですね─────という事は報酬の相場は…と。

「あと、依頼する冒険者の条件はありますか?。職業やランク、人数等他なにかあれば伺いますが?」

目の前の男性は軽く頭をひねると、仕方なくというのがありありと分かる顔で答える。

「人数・職業は私達を守ってもらえさえすれば問いません。ランクは…出来れば元々のパーティーと同じ4と言いたいところですが、緊急なので不問という事で。明日の朝…最悪昼までにここを出発出来たらそれでいいです」



視界の端で神官の少女がこちらを見た気がした。

待ってる間にこちらの話を聞いていたらしい…個人情報とかあるので、本当はダメなんですからね?。


そんなことを考えてたら、向こうから少女が歩いてきた。

そして商人の男性横に立つと、右手の平を自分の胸に当て声をかけてくる。

「何やらお困りの様子ですね?。わたくしたちでも何かお力になれませんの?」



(…なんか心のどこかがざわざわします)

私の嫌な予感って無駄に的中率がいいんですよね。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。 しかし、仲が良かったのも今は昔。 レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。 いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。 それでも、フィーは信じていた。 レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。 しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。 そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。 国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。

「恋がしたい」と幼馴染から婚約破棄されました。その後を笑って眺める私です。

百谷シカ
恋愛
「君を愛する気持ちは変わらないよ、モリー」 私はタウンズ伯爵令嬢モリー・ドノヴァン。 彼は幼馴染で許婚のライルズ伯爵令息デビッド・イング。 「でも僕は燃えるような恋がしたい!!」 「……は?」 なんと、彼ったらブロドリック伯爵令嬢に求婚するそうだ。 「アホね」 まったくバカバカしい。 彼は知らないのだ。肖像画に騙されているという事を。 だってブロドリック伯爵令嬢キャスリン・グウィルトって…… 「たたっ、助けてくれ! モリー!!」 「……イヤ(笑)」 私はどんなに泣いて縋られたって、助けたりしないわよ。 せいぜい苦しみなさい、この裏切り者!! ※このざまぁはコメディです。 ※イケメンに求婚されます。 ※みんなでハッピーエンドを迎えます。

私をもう愛していないなら。

水垣するめ
恋愛
 その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。  空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。  私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。  街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。  見知った女性と一緒に。  私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。 「え?」  思わず私は声をあげた。  なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。  二人に接点は無いはずだ。  会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。  それが、何故?  ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。  結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。  私の胸の内に不安が湧いてくる。 (駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)  その瞬間。  二人は手を繋いで。  キスをした。 「──」  言葉にならない声が漏れた。  胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。  ──アイクは浮気していた。

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

【完結】私の婚約者は、親友の婚約者に恋してる。

山葵
恋愛
私の婚約者のグリード様には好きな人がいる。 その方は、グリード様の親友、ギルス様の婚約者のナリーシャ様。 2人を見詰め辛そうな顔をするグリード様を私は見ていた。

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

××町に朝日は昇る

Tsuna8
現代文学
じんわり、ほっこりする話 町に暮らす人々にフォーカスをあてた短編集

処理中です...