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出会い

その22

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「飢えるのだ…渇くのだ…楽に、なりたいのだ…」

目の前の膝をつき顔を覆い、まるで泣いてるかの様に積年の思いを吐露する、骸骨王スケルトンキング姿を見る少女の目には涙が溢れていた。

先ほどまでの怯えや恐怖からの涙ではなく、共感の涙だ。


(…この人を助けたいと、心から思いますの)

少女は手に持ったフォークを投げ捨てると、目の前で膝をつく骸骨王スケルトンキングの目の前に正座で座った。

そして目に浮かぶ涙を袖で拭うと、真面目に強い口調で少女は骸骨王スケルトンキングへと告げる。

「わたくしならあなたを助けれるかもしれませんの」



(…本当に何を言ってるのだろう、この女は)

自分は高位の不死族アンデットだ。

それ故に、普通の神官が使う浄化ターンアンデットなんかでは全く通じない。

世界中探しても、自分を浄化ターンアンデットできる者は居ないのでは?…とすら思っている。


(…そんな自分を浄化ターンアンデット出来るというのか?。このまだ幼い少女が?)

天を仰いでた顔を下げ、何もない眼孔にふよふよと浮かぶ、目玉で少女を見る。

少女の目はまっすぐこちらを見つめており、確かに真剣さは伝わってきた。

「…お前は何を言っているのだ?。お前ごときが俺を浄化ターンアンデット出来るとでも思ってるのか?」

幼さ故の自惚れだろ─────少し癒しの力を使えるからと、何でも出来ると勘違いしているだけなのだ。


「残念ながら、今のわたくしには浄化ターンアンデットは使えませんの。でも、わたくしでもやれる事がありますの」

少女はまっすぐ彼を見つめたまま、自分の胸に手を当てて更に言葉を繋ぐ。

「わたくしにあなたを、助けさせてもらえませんの?」



呆れがむしろ怒りになりそうであった。

自分がどれだけの長い間苦しみ続けてきたと思っているのだ。

何も知らないだけでは許しがたい─────叶わぬ夢など無駄…いや、害悪とすら言っても過言ではない。


「いいだろう。だがこの俺にそれだけの大口を叩いたのだ、出来なかった時の覚悟は当然出来てるのだろうな?」

聞くだけで首を絞められる様な、そんな冷たい声だった。

だが少女は怯えた様子もなく、むしろ多少不器用ながらも笑顔で告げる。


「えぇその時は、あなたの好きなようにすればいいですの。わたくしを食べて飢えを満たすといいですの」

ただ、と少女は言葉を続ける。

「その時はわたくしを連れて遠くでお願いしますの。わたくしが納得して選んだ、謂わば自業自得の結果だとはいえ、それで村の皆様を悲しませたくはないですの」



そして、骸骨王スケルトンキングは少女の言うままに、手近な岩に腰掛ける。

少女は自分の胸の前でしばらく手を合わせていたと思うと、その両手の間に徐々に大きくなるぼんやり光る何かを作っていった。

肩幅くらいまで大きくなったその光を、両手で押す様に骸骨王スケルトンキングの背中に当てると、光はそのままゆっくりと押し込まれていく。

体を傾けたせいで大きく口を開けているローブの首周りの隙間からは、光が肋骨の中に完全に入っているのが見え、中でゆらゆら揺らいでいた。


「…終わりましたの。これで大丈夫のはず、で………」

言い切る前に少女は、眼の前の骸骨王スケルトンキングの広い背に体を預けると、そのまま意識を失っていった。



少女が目を覚ますと、視界には高く伸びる大木の幹、そしてその先には満天の星空があった。

気配を感じて横に顔を向けると、少女のすぐ横に鎮座する黒い人影がある。


「…お前は何をしたのだ?」

骸骨王スケルトンキングは少女に問いかける。

どうやら少女が起きるまで、ずっとそこに座って待っていたらしい。



よいしょと小さく声をもらしながら少女は体を起こすと、少女は正座をして骸骨王スケルトンキングと対面する。

「飢えや渇きはどうですの?」

少女は質問に骸骨王スケルトンキングが、逆に質問を投げた。

「不思議と消えている…一体これは何なのだ?、お前は何をしたのだ?、この光は一体なんなのだ?」

余程興味深いのか、骸骨王スケルトンは前のめりになりながら少女に問う。


「それはですね、わたくしの一部ですの」

(…相変わらず何を言ってるのだ、この女は?)

「わたくしの中から取り出して、それをそちらに預けたんですの」

(…全く意味が分からない。本当に何を言ってるのだろう)

「わたくしのやれる目一杯まで預けてますのよ?。大事にして欲しいですの」

「…すまない、全く意味が分からないのだ」

まだ幼く見える少女に教えを乞う骸骨王スケルトンの姿に、もはや軍王の威厳などなかった。


「あなたは王冠をかぶってますし、何かの王様なんですのよね?。王様が分からない程難しい言葉は使ってないはずですの?」

「いや、言ってる単語の意味は勿論《もちろん》分かるのだ。なのに、お前が言ってる言葉の意味が全く分からないというかだな…」



その後説明を受けなんとなく分かった事は、これは少女のおそらく魔力を切り取ったものであり、そして切り取ってもずっと少女とは繋がっているものらしい。

そして、この切り取った魔力が骸骨王《スケルトンキング》の中で常に回復力を放出し続けるので、それが飢えや渇きを満たすのだと少女は言っていた。


なんとなく概要は分かったものの、色々不明なところがあるので、骸骨王スケルトンキングは更に質問してみることにした。

そして少女本人もはっきりとは分からないが、今までの経験上分かる範囲で答えて貰ったところがこれである。


・光は少女と繋がっており、少女が生きている限り在り続ける…はず。
・この光と少女の距離がある程度離れても消える事はない(更に距離が離れた時は分からない)。
・光は少女が寝てる起きてる関係なく、常に回復力を出し続ける…と思う。
・一度切り離した光を、戻す方法は分からない。
・時間がたてばまた切り離せる…気がする。


全体的にぼんやりしてるが、こういう事らしかった。

 
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