20 / 133
闘技大会
その20
しおりを挟む
神官の少女と国威の青年の二人が授賞式も終え城を出ると、とりあえず日課にもなってきているクエストを受注しに冒険者ギルドを目指して通路を歩く事にした。
大通りからギルドへの近道の細い路地に曲がって暫く進むと、大きな人影が通路をふさぐように立っていた。
悪趣味な鎧、異形の両手斧─────昨日のダメージなのか、顔の下半分は包帯が巻かれている。
そう、いたのは昨日の決勝で戦ったドルガ=ドルガだった。
ザザっと音がしたと思うと、少女たちの後ろにも、いつの間にか3人の武器を持った男が立っていた。
「ちょっと顔貸しな…」
大男はそう言うと、顎で暗い裏路地の方を示す。
少女が青年に寄りしがみついてきたので、青年は少女の頭に軽く手を載せると「大丈夫だ」とだけ、小さくつぶやいた。
大男は二人が着いて来てるのを確認するとツカツカと裏路地を進んでいき、その突き当りまで辿り着く。
「偶々俺が躓き、そこにラッキーパンチが当たっただけで優勝とは運がいいよな、てめぇ」
ドルガは青年分かりやすい因縁をつけてきた。
いつの間に増えたのか、二人の周囲にはドルガを含めて7人が囲む形で立っている。
服装を見る限り魔法使いや神官もいるようだった。
「ラッキーパンチだから優勝を取り消せと国に言ってもそれは通らねぇだろう。だから優勝はくれてやる─────代わりに貰った賞金は全部置いていきな」
周囲ではニヤニヤいやらしい笑いをした男達が武器を構えている。
「そんな言いがかりはないですの!あれだけ派手に負けたんだからおとなしくしてたらいいんですの!」
少女は強気に言い返すものの、青年の横からは動けない。
青年は軽く周りを見回すと、面倒くさそうに一息吐いた。
「いいから早く出せって言ってるんだよっ!。それとも痛い目をみたいのかっ?」
真横にいる男が剣を振り威嚇して、二人を脅してくると、周りからは下品な笑いが響く。
「…おい、そこの大男」
周りの男達は全く気に留めず、青年はドルガに声をかける。
「はぁ?。なんか文句あんのか?」
大男は体を前に倒し、両手斧の柄を肩にぶつけながら威圧をかけていく。
「…お前は戦いの最中、何もないところで躓くような,本物の阿呆か?」
青年が顔を上げ大男を睨み返す。
「何言ってんだ、てめぇ?。まだ自分の立場が分かってねぇみたいだな!。もぅいい、やっちまえ!」
大男が周りの男達に指示を出す…が、誰も向ってこなかった。
「貴様ら、やれって言ってんだろうが!」
更に怒号を飛ばし周りを見る大男、そこには目を疑う光景があった。
「ど、ドルガさん…助けてください…」
やっとの事絞りだしたような男の声がする。
周りの男達のほとんどは、いつの間にか鎧を着た人影に押さえ込まれていた。
その人影は歯をカチカチ鳴らし、目があるべきところは完全な孔になっている─────そう、骸骨兵だ。
「なんでこんなとこに骸骨兵《スケルトン》が?。おい神官、さっさと浄化《ターンアンデット》しやがれ!」
横に頭を向ける、そこには既に後ろから骸骨兵に羽交い絞めにされている神官がいた。
「それが、いくら浄化しても抵抗されて出来なかったんです…」
「はあぁっ!?。浄化を抵抗する骸骨兵とか聞いたことねぇぞ!?」
ならば自分で殴りかかろうと足を踏み出そうとしたドルガは、自分の足が全く動かせないことに気付く。
足元に目を向けると、そこには地面から生えてる様に足を掴む、白骨の手が何本もあった。
いつの間にか両脇にも骸骨兵が現れて、すぐに両手も押さえ込まれ、大男は身動き一つ出来ない状態だになる。
ドルガは目の前の青年達を見る─────これだけ自分達が骸骨兵に襲われているのに、何故か目の前の二人には一体も襲いかかってない。
ここにきてやっとドルガは状況が分かり始める。
「てめぇ、まさか死霊術死かっ!?」
死霊術死とは、魔法を用いて人や魔物の死体を操る術者たちの事である。
そのあまりに禍々しさの為一般的に忌避されており、ほとんど術者は存在しないとされている。
青年は前に進み出ると、ドルガを前蹴りで突き当りの壁へと蹴飛ばす。
青年の蹴りが大男に当たる瞬間、骸骨兵達は手を離し、壁にぶつかった大男の横に新たに現れると再び四肢にまとわりつき自由を奪う。
少女が「やりすぎちゃダメですのよ!」と声を出しているが青年からの返事はなく、面倒くさそうに肩を回しながら、青年は大男の目の前まで進んでいく。
「はっ!!…まさかあの試合の時に足が動かなくなったのも、この骸骨兵か!?」
ドルガは目を見開き青年に疑問するが、青年は何も言わずにそこに立ったままである。
「てめぇ、きたねぇぞ!。きちんと正々堂々戦いやがれ!」
今自分がやってることを棚に上げ、ドルガの抗議は続いていた。
青年は言われる言葉に全く興味は示さないまま、大男に近付くと口を開く。
「ところでお前、デッドマスターを倒したって話だよな?」
まったく話の流れの分からないまま大男は、「それがどうした!」と強気に答える。
大男の顔の前まで顔を寄せた青年は、目の前で口元のフードをずらす。
そして大男にだけ聞こえる、感情のこもってない声でボソリと告げる。
「喋らなくていいから首だけを振って答えろ─────お前が倒したっていうデッドマスター、こんな顔をしてたんじゃないか?」
青年の顔を見た大男は、一瞬で目を大きく見開き、驚いた顔になった。
釘を差されるまでもなく言葉すら出せなくなり、ただただ首を左右に動かす事しかできなくなっていた。
なぜなら、大男の目の前には明らかに頭がい骨とわかる白い肌?と、眼孔にふよふよと浮かぶ眼球があったのだから。
大通りからギルドへの近道の細い路地に曲がって暫く進むと、大きな人影が通路をふさぐように立っていた。
悪趣味な鎧、異形の両手斧─────昨日のダメージなのか、顔の下半分は包帯が巻かれている。
そう、いたのは昨日の決勝で戦ったドルガ=ドルガだった。
ザザっと音がしたと思うと、少女たちの後ろにも、いつの間にか3人の武器を持った男が立っていた。
「ちょっと顔貸しな…」
大男はそう言うと、顎で暗い裏路地の方を示す。
少女が青年に寄りしがみついてきたので、青年は少女の頭に軽く手を載せると「大丈夫だ」とだけ、小さくつぶやいた。
大男は二人が着いて来てるのを確認するとツカツカと裏路地を進んでいき、その突き当りまで辿り着く。
「偶々俺が躓き、そこにラッキーパンチが当たっただけで優勝とは運がいいよな、てめぇ」
ドルガは青年分かりやすい因縁をつけてきた。
いつの間に増えたのか、二人の周囲にはドルガを含めて7人が囲む形で立っている。
服装を見る限り魔法使いや神官もいるようだった。
「ラッキーパンチだから優勝を取り消せと国に言ってもそれは通らねぇだろう。だから優勝はくれてやる─────代わりに貰った賞金は全部置いていきな」
周囲ではニヤニヤいやらしい笑いをした男達が武器を構えている。
「そんな言いがかりはないですの!あれだけ派手に負けたんだからおとなしくしてたらいいんですの!」
少女は強気に言い返すものの、青年の横からは動けない。
青年は軽く周りを見回すと、面倒くさそうに一息吐いた。
「いいから早く出せって言ってるんだよっ!。それとも痛い目をみたいのかっ?」
真横にいる男が剣を振り威嚇して、二人を脅してくると、周りからは下品な笑いが響く。
「…おい、そこの大男」
周りの男達は全く気に留めず、青年はドルガに声をかける。
「はぁ?。なんか文句あんのか?」
大男は体を前に倒し、両手斧の柄を肩にぶつけながら威圧をかけていく。
「…お前は戦いの最中、何もないところで躓くような,本物の阿呆か?」
青年が顔を上げ大男を睨み返す。
「何言ってんだ、てめぇ?。まだ自分の立場が分かってねぇみたいだな!。もぅいい、やっちまえ!」
大男が周りの男達に指示を出す…が、誰も向ってこなかった。
「貴様ら、やれって言ってんだろうが!」
更に怒号を飛ばし周りを見る大男、そこには目を疑う光景があった。
「ど、ドルガさん…助けてください…」
やっとの事絞りだしたような男の声がする。
周りの男達のほとんどは、いつの間にか鎧を着た人影に押さえ込まれていた。
その人影は歯をカチカチ鳴らし、目があるべきところは完全な孔になっている─────そう、骸骨兵だ。
「なんでこんなとこに骸骨兵《スケルトン》が?。おい神官、さっさと浄化《ターンアンデット》しやがれ!」
横に頭を向ける、そこには既に後ろから骸骨兵に羽交い絞めにされている神官がいた。
「それが、いくら浄化しても抵抗されて出来なかったんです…」
「はあぁっ!?。浄化を抵抗する骸骨兵とか聞いたことねぇぞ!?」
ならば自分で殴りかかろうと足を踏み出そうとしたドルガは、自分の足が全く動かせないことに気付く。
足元に目を向けると、そこには地面から生えてる様に足を掴む、白骨の手が何本もあった。
いつの間にか両脇にも骸骨兵が現れて、すぐに両手も押さえ込まれ、大男は身動き一つ出来ない状態だになる。
ドルガは目の前の青年達を見る─────これだけ自分達が骸骨兵に襲われているのに、何故か目の前の二人には一体も襲いかかってない。
ここにきてやっとドルガは状況が分かり始める。
「てめぇ、まさか死霊術死かっ!?」
死霊術死とは、魔法を用いて人や魔物の死体を操る術者たちの事である。
そのあまりに禍々しさの為一般的に忌避されており、ほとんど術者は存在しないとされている。
青年は前に進み出ると、ドルガを前蹴りで突き当りの壁へと蹴飛ばす。
青年の蹴りが大男に当たる瞬間、骸骨兵達は手を離し、壁にぶつかった大男の横に新たに現れると再び四肢にまとわりつき自由を奪う。
少女が「やりすぎちゃダメですのよ!」と声を出しているが青年からの返事はなく、面倒くさそうに肩を回しながら、青年は大男の目の前まで進んでいく。
「はっ!!…まさかあの試合の時に足が動かなくなったのも、この骸骨兵か!?」
ドルガは目を見開き青年に疑問するが、青年は何も言わずにそこに立ったままである。
「てめぇ、きたねぇぞ!。きちんと正々堂々戦いやがれ!」
今自分がやってることを棚に上げ、ドルガの抗議は続いていた。
青年は言われる言葉に全く興味は示さないまま、大男に近付くと口を開く。
「ところでお前、デッドマスターを倒したって話だよな?」
まったく話の流れの分からないまま大男は、「それがどうした!」と強気に答える。
大男の顔の前まで顔を寄せた青年は、目の前で口元のフードをずらす。
そして大男にだけ聞こえる、感情のこもってない声でボソリと告げる。
「喋らなくていいから首だけを振って答えろ─────お前が倒したっていうデッドマスター、こんな顔をしてたんじゃないか?」
青年の顔を見た大男は、一瞬で目を大きく見開き、驚いた顔になった。
釘を差されるまでもなく言葉すら出せなくなり、ただただ首を左右に動かす事しかできなくなっていた。
なぜなら、大男の目の前には明らかに頭がい骨とわかる白い肌?と、眼孔にふよふよと浮かぶ眼球があったのだから。
30
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。
梅雨の人
恋愛
私にはイザックという愛しの婚約者様がいる。
ある日イザックは、隣国の王女が私たちの学園へ通う間のお世話係を任されることになった。
え?イザックの婚約者って私でした。よね…?
二人の仲睦まじい様子を見聞きするたびに、私の心は折れてしまいました。
ええ、バッキバキに。
もういいですよね。あとは好きにさせていただきます。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
五年目の浮気、七年目の破局。その後のわたし。
あとさん♪
恋愛
大恋愛での結婚後、まるまる七年経った某日。
夫は愛人を連れて帰宅した。(その愛人は妊娠中)
笑顔で愛人をわたしに紹介する夫。
え。この人、こんな人だったの(愕然)
やだやだ、気持ち悪い。離婚一択!
※全15話。完結保証。
※『愚かな夫とそれを見限る妻』というコンセプトで書いた第四弾。
今回の夫婦は子無し。騎士爵(ほぼ平民)。
第一弾『妻の死を人伝てに聞きました。』
第二弾『そういうとこだぞ』
第三弾『妻の死で思い知らされました。』
それぞれ因果関係のない独立したお話です。合わせてお楽しみくださると一興かと。
※この話は小説家になろうにも投稿しています。
※2024.03.28 15話冒頭部分を加筆修正しました。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
婚約者に忘れられていた私
稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」
「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」
私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。
エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。
ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。
私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。
あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?
まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?
誰?
あれ?
せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?
もうあなたなんてポイよポイッ。
※ゆる~い設定です。
※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。
※視点が一話一話変わる場面もあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる