上 下
14 / 103
闘技大会

その14

しおりを挟む
 

「─────やぁぁぁっ!」

槍使いが戦戟ハルバードで突いて攻撃をする。

黒衣の青年が軽く横に避けると、それに反応して戦戟ハルバードを捻り斧の部分で刈る。

後ろに避けた青年を再び突く、避けつつ向ってきそうな雰囲気を察し戦戟《ハルバード》を捻ると手元に戻すように、刃を後ろから襲い掛からせる。

それに気付いた青年はまた横に避ける。

今度は避けにくいように足元を狙って突く、青年は下がって避ける、槍使いは追うように突く…。



「あいつ、やるもんだな。武器の使い方に淀みがない」

ルークは闘場のゲイダをそう評価した。

ルークが言う様に、戦戟ハルバードという武器の特性を活かして距離を取りつつ、かつ隙を作らないように堅実に攻めてくる。


仮に自分があそこにいたら…と考えてしまうのは剣士の性というやつなのかもしれない。

どちらにも決定打どころか、一撃も被弾しないまま緊張感ある時間が流れる。

(…ただ実際、未だに距離を詰める事が出来ず避けるしかない、あいつの方がやばそうか?)

ルークはちらりと横の少女を見る。

この少女は最初と変わらず、声をあげ応援を続けている。

接近できてない事や攻められ続けてる事に、まだ悲観してる様子はない。

(…信頼されてるねえ)

このどちらが勝った方が次の自分の相手なのだ。

ルークは油断なく2人の戦いを見続けた。



(…想像以上に防御が固いですね)

まさかこれだけ攻めてるのに全く当てれないとは、とゲイダは唸る。

向こうとしても全力で避けているのか、何度か距離を詰められようとはしたものの、無茶をして突っ込んでくるといった感じはまだない。


ただ、さすがにこちらの疲れだけは隠せない。

これだけの長時間、緊張感を保ちながらそれなりの重量のある戦戟《ハルバード》を振り続けているのだ、当然と言えば当然なのだが。

(…少し無理してでも攻めを激しくするべきでしょうか?)

ゲイダは攻撃を続けながらも思案する。

相変わらず共に攻撃は当たらない、そんな苦しい時だけが流れていった。



「…あと何か出しそびれてるものはないか?。そろそろこちらから、いくぞ?」

試合開始してそれなりの時間が経過して、初めて対戦相手が話しかけてきた。

あれだけの動きをし続けていたというのに、少なくとも聞こえてくる声に息が乱れている感じはない。

(…化け物じみた体力ですね)

切っ先は相手に向け牽制は維持したまま、ゲイダは疑問を投げてみる。


「出しそびれとは一体何のことですか?」

青年は自然体の構えのまま動きはない。

この質問に便乗して攻めてこようとした─────というわけではないようである。


「倒すための技とかそういうものだ。あとで出しておけば勝てたのにとか言われるのもあれなんでな」

なかなかカチンとくることを言ってくる相手だと、ゲイダは感じていた。

言葉にバカにした感じが全くないのが、逆に腹立たしいというか。


でも確かに、状況を変えたいと思い始めていたのは事実。

あれだけ攻め続けられていた相手に疲労が感じられない以上、時間経過で先に不利になるのは間違いなくこちらである。

多少ごり押しをしてでも当てに行かないといけない、ならば攻め手を増やすのも戦術的に間違いはない。


「確かに牽制しあってても観客としても退屈でしょうし。いいでしょう、このゲルダの技をその目に刻んで、この闘技大会の思い出にでもするといいでしょう!」

言うとゲイダは前に出ながら突きをしてくる、それも3連突。

更に斧で薙ぎ接近されないようにしつつ再び連続突き、そして斬りと繰り返していく。

まさに猛攻といった感じであった。



「おー。あいつなんかギア上げやがったな」

ルークはゲイダの雰囲気が変わったのを感じた。

今までのような牽制で距離を取りつつ隙を伺う感じから、無理矢理にでも隙を作って攻め落とす、そんな風にも感じる。

(…自分的にはこっちの方が好みだけどな)


しかし、も、よくあれを避けている。

真後ろから刈ってくる刃とか、結構やばい技をつかわれているのに、だ。

それにしても、開始からずっと1回として殴れてないどころか、まともに接近すら出来ていないのだ。

当然それなりに焦りも感じてるだろうに、よく緊張感が保てているなと評価をする。



「うおぉぉぉぉっ!」

ゲイダの槍による猛攻はさらに激しさを増し、圧倒的な手数で黒衣の青年を攻めだてる。

(…これだけ打ってなぜ当たらないのですかっ!?。相手はランク1という話だったはずじゃっ!?)

ゲイダは攻め続けながらも疑問する。


正直こちらの体力的にもきついところまで来ている。

まだ準決勝、そして決勝と優勝までにあと2試合やらなければいけないのだ。

ここで体力を使い果たすわけにはいかない。

ゲイダは持つ手に力を込めなおすと、勝負を決めに前に出た。

「出し惜しみはなしですっ!。いきますっ!!!」

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。 しかし、仲が良かったのも今は昔。 レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。 いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。 それでも、フィーは信じていた。 レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。 しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。 そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。 国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。

「恋がしたい」と幼馴染から婚約破棄されました。その後を笑って眺める私です。

百谷シカ
恋愛
「君を愛する気持ちは変わらないよ、モリー」 私はタウンズ伯爵令嬢モリー・ドノヴァン。 彼は幼馴染で許婚のライルズ伯爵令息デビッド・イング。 「でも僕は燃えるような恋がしたい!!」 「……は?」 なんと、彼ったらブロドリック伯爵令嬢に求婚するそうだ。 「アホね」 まったくバカバカしい。 彼は知らないのだ。肖像画に騙されているという事を。 だってブロドリック伯爵令嬢キャスリン・グウィルトって…… 「たたっ、助けてくれ! モリー!!」 「……イヤ(笑)」 私はどんなに泣いて縋られたって、助けたりしないわよ。 せいぜい苦しみなさい、この裏切り者!! ※このざまぁはコメディです。 ※イケメンに求婚されます。 ※みんなでハッピーエンドを迎えます。

私をもう愛していないなら。

水垣するめ
恋愛
 その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。  空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。  私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。  街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。  見知った女性と一緒に。  私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。 「え?」  思わず私は声をあげた。  なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。  二人に接点は無いはずだ。  会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。  それが、何故?  ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。  結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。  私の胸の内に不安が湧いてくる。 (駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)  その瞬間。  二人は手を繋いで。  キスをした。 「──」  言葉にならない声が漏れた。  胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。  ──アイクは浮気していた。

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

【完結】私の婚約者は、親友の婚約者に恋してる。

山葵
恋愛
私の婚約者のグリード様には好きな人がいる。 その方は、グリード様の親友、ギルス様の婚約者のナリーシャ様。 2人を見詰め辛そうな顔をするグリード様を私は見ていた。

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

××町に朝日は昇る

Tsuna8
現代文学
じんわり、ほっこりする話 町に暮らす人々にフォーカスをあてた短編集

処理中です...