33 / 34
第三十三話
しおりを挟む
石原は、黒地に紫の柄が特徴的な天井を見上げながら「結局、こうなるんだな」とぼやいた。ちょうど、シャワーの音が止まり、ベッドから首だけ上げると、奥の部屋の鏡に下半身だけタオルで隠した桐生が映っていた。前髪がだらりと垂れ下がり、滴る雫に煩わしい表情をしている。石原は、ベッドに沈み寝返りをうった。ベッドの中の体はシャツと下着だけ纏っている。どうせ脱がされるのに、ボタンはきちんと締めている。ベッドが軋み、桐生が石原の顔を覗き込む。
「先生から告白する気になったか」
「いや全く。むしろ頭が冴えたよ」
石原はうつ伏せになり、大きな枕を抱え込んだ。
「今からヤるんだよな。俺と桐生さん」
「そうだな」
「告白したら、それは変わるのか?」
「どういう意味だ」
「……俺、年下は嫌って言ったよな」
「ああ」
「ちゃんと理由がある。それは、体の関係抜きにして共通してる。最後に付き合った人が年下で、こんな仕事だからな、「先が見えない」って言われて振られたんだ。俺もそう思うよ。結婚したところで、仕事の量が変わるわけじゃない。寂しい思いを余計にさせるだけだ。年下ならなおのこと、これから未来があるのに、それを壊すことになる」
「……だから、なんだ」
「桐生さんは、まだ35歳だ。警察官で女性にもモテるだろ。わざわざこんな中年と付き合って時間を無駄にするんじゃないのか」
「モテてたら、とっくに結婚してる」
「俺である必要がどこにある? 男だぞ」
「あんただからだろ。それは何回も言ってる。人柄が好きだ。体の相性だって悪くないし。付き合うには十分な条件を満たしてると思うけどな」
「気に入った人と体を重ねるーーセフレで十分じゃないのか。身を固めるために恋人の席は空席にしておいた方が……おいっ!」
石原の話の途中で、桐生は枕を奪い、石原の上に叩きつけた。
「さっきから枕によく喋るやつだな」
「はあ?」
「俺だけ見てほしい、そしてあんたを独占したい。それはセフレにはできないことだろ。少なくとも俺は、他の人間があんたに触れようもんならぶっ飛ばすぞ」
「物騒だな」
「もちろん、先生が心変わりするようなら、それも食い止める。俺だけのものになって欲しいんだよ」
石原は、佐藤と桐生が一緒にいるときに抱いた感情を思い出す。あの時、セフレという関係が、感情の爆発を無理矢理抑えつけた。付き合っていないという事実が、自分を苦しめ、余計な感情を生み出した。付き合っていれば、違う信頼関係が生まれ、教え子に魔が差すなどという間違いを起こさせなかっただろう。
桐生がベッドの中へ潜り込み、石原を後ろから抱き締める。
「独占したい。理由がなくても会いたい。ヤって終わりの関係は、もう満足できない」
「恥ずかしいこと言うな」
「あんたは、どうなんだ」
「俺?」
「先生の本当の気持ちは」
「……俺は……桐生さんなら年下でも構わないと思ったよ」
桐生が分かりやすく嬉しそうに微笑む。
「付き合うか」
「物好きだな」
「返事は?」
石原は、桐生の首に手を回し、自分から唇を重ねた。
「後悔するなよ」
「しねーよ」
視線がかちりとあったままお互い離れない。石原は覚悟を決める。
「よろしく頼むよ」
「ああ。頼まれた」
告白を終え、解放された心と体をお互い絡めあう。ようやく優しく激しい愛撫の理由を理解した石原は、素直に受け入れ、乱れていく。いつもより体も熱く、声は我慢を知らない。熟れた後孔に雄があてがわれ、石原は桐生にしがみつく。
「はや、く……」
「もう、誰にも触らせねぇから」
押し広げて入ってきた性器に、石原は腰を浮かせる。コリコリと先端が当てられ、射精しかけた自分の性器を慌てて握った。
「まだイきたくない……」
「だったら、我慢しな」
しかし、桐生は1番激しい刺激を与えてくる。
「ああ……もっと……そこ、が、いい……桐生さん」
桐生は自分の下で乱れる教師を抱え、自分の上に跨らせた。そして真っ赤な耳に口を寄せ囁く。
「正義」
「?」
「俺の名前。桐生正義」
「……せい、ぎ……」
「なんだ、克樹さん」
まさか「さん」づけで呼ばれると思っていなかった石原は、肩を震わせる。
「乱れてくれ、もっと。克樹さんの乱れるところ、たまんねえんだよ」
下から催促するように腰が突き上がってくる。
「ずるいぞ」
石原の顔は、溶けそうなほど、ほぐれている。潤んだ瞳が、桐生を見つめる。年上とは思えない、その姿は最初と変わらない。
「ずるいのは、あんただよ」
桐生は幸せを噛み締めながら、石原をもう一度、ベッドに押し倒した。
「先生から告白する気になったか」
「いや全く。むしろ頭が冴えたよ」
石原はうつ伏せになり、大きな枕を抱え込んだ。
「今からヤるんだよな。俺と桐生さん」
「そうだな」
「告白したら、それは変わるのか?」
「どういう意味だ」
「……俺、年下は嫌って言ったよな」
「ああ」
「ちゃんと理由がある。それは、体の関係抜きにして共通してる。最後に付き合った人が年下で、こんな仕事だからな、「先が見えない」って言われて振られたんだ。俺もそう思うよ。結婚したところで、仕事の量が変わるわけじゃない。寂しい思いを余計にさせるだけだ。年下ならなおのこと、これから未来があるのに、それを壊すことになる」
「……だから、なんだ」
「桐生さんは、まだ35歳だ。警察官で女性にもモテるだろ。わざわざこんな中年と付き合って時間を無駄にするんじゃないのか」
「モテてたら、とっくに結婚してる」
「俺である必要がどこにある? 男だぞ」
「あんただからだろ。それは何回も言ってる。人柄が好きだ。体の相性だって悪くないし。付き合うには十分な条件を満たしてると思うけどな」
「気に入った人と体を重ねるーーセフレで十分じゃないのか。身を固めるために恋人の席は空席にしておいた方が……おいっ!」
石原の話の途中で、桐生は枕を奪い、石原の上に叩きつけた。
「さっきから枕によく喋るやつだな」
「はあ?」
「俺だけ見てほしい、そしてあんたを独占したい。それはセフレにはできないことだろ。少なくとも俺は、他の人間があんたに触れようもんならぶっ飛ばすぞ」
「物騒だな」
「もちろん、先生が心変わりするようなら、それも食い止める。俺だけのものになって欲しいんだよ」
石原は、佐藤と桐生が一緒にいるときに抱いた感情を思い出す。あの時、セフレという関係が、感情の爆発を無理矢理抑えつけた。付き合っていないという事実が、自分を苦しめ、余計な感情を生み出した。付き合っていれば、違う信頼関係が生まれ、教え子に魔が差すなどという間違いを起こさせなかっただろう。
桐生がベッドの中へ潜り込み、石原を後ろから抱き締める。
「独占したい。理由がなくても会いたい。ヤって終わりの関係は、もう満足できない」
「恥ずかしいこと言うな」
「あんたは、どうなんだ」
「俺?」
「先生の本当の気持ちは」
「……俺は……桐生さんなら年下でも構わないと思ったよ」
桐生が分かりやすく嬉しそうに微笑む。
「付き合うか」
「物好きだな」
「返事は?」
石原は、桐生の首に手を回し、自分から唇を重ねた。
「後悔するなよ」
「しねーよ」
視線がかちりとあったままお互い離れない。石原は覚悟を決める。
「よろしく頼むよ」
「ああ。頼まれた」
告白を終え、解放された心と体をお互い絡めあう。ようやく優しく激しい愛撫の理由を理解した石原は、素直に受け入れ、乱れていく。いつもより体も熱く、声は我慢を知らない。熟れた後孔に雄があてがわれ、石原は桐生にしがみつく。
「はや、く……」
「もう、誰にも触らせねぇから」
押し広げて入ってきた性器に、石原は腰を浮かせる。コリコリと先端が当てられ、射精しかけた自分の性器を慌てて握った。
「まだイきたくない……」
「だったら、我慢しな」
しかし、桐生は1番激しい刺激を与えてくる。
「ああ……もっと……そこ、が、いい……桐生さん」
桐生は自分の下で乱れる教師を抱え、自分の上に跨らせた。そして真っ赤な耳に口を寄せ囁く。
「正義」
「?」
「俺の名前。桐生正義」
「……せい、ぎ……」
「なんだ、克樹さん」
まさか「さん」づけで呼ばれると思っていなかった石原は、肩を震わせる。
「乱れてくれ、もっと。克樹さんの乱れるところ、たまんねえんだよ」
下から催促するように腰が突き上がってくる。
「ずるいぞ」
石原の顔は、溶けそうなほど、ほぐれている。潤んだ瞳が、桐生を見つめる。年上とは思えない、その姿は最初と変わらない。
「ずるいのは、あんただよ」
桐生は幸せを噛み締めながら、石原をもう一度、ベッドに押し倒した。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
警察官は今日も宴会ではっちゃける
饕餮
恋愛
居酒屋に勤める私に降りかかった災難。普段はとても真面目なのに、酔うと変態になる警察官に絡まれることだった。
そんな彼に告白されて――。
居酒屋の店員と捜査一課の警察官の、とある日常を切り取った恋になるかも知れない(?)お話。
★下品な言葉が出てきます。苦手な方はご注意ください。
★この物語はフィクションです。実在の団体及び登場人物とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる