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第九話 中二と乙女
しおりを挟む高橋がいなくなったトイレ。
小池は、先日は自慰をし、先ほどは涙を流した個室で、今度は不敵な笑みを零す。
(やったぞ)
小池は手に入れてしまった。
松崎の本当の秘密と大切な物を。
相手は「見られたい願望120%の高橋」手に入れるのは意図も簡単だった。その代り自慰を見せられる羽目になったがゲイの小池には関係ない。が、オッサン受けが好物なのでさほど興奮もしなかった。
それ以上に興奮する物は
「我が手中にある」
中二めいたことを呟くほどにイカれていた。興奮は大人の階段を音速で登っていく。
しかし同時に悩んでいた。
(嫌いな奴の弱みじゃない……好きな人の弱みなんだ)
今度は乙女になる。
片思いの女学生がラブレターに口づけをして想いを馳せる様に、ピンクのショーツに口づけをした。
鼻から侵入してくる松崎の香りに「んん」と耐えるような声を出す。
(まさか部長にこんな趣味があるなんて……)
完璧に誤算だった。
小池は、松崎がノーパンの解放感を楽しむ性癖の持ち主だと思っていたからだ。
なのに事実はこれ。あの仕事ができるダンディー部長からは想像もつかない。
だからこそ、イカれたり、乙女になったりと困惑してしまう。
そしてその大きな秘密を握ってしまった事はある種の高揚感を生む。
「……二人だけの秘密、ってやつですよね」
それは松崎に対する想いを加速させてしまう。
「あんな事したけど、やっぱり部長が好きだ」
まだ謝ることもできていない。
それにこのショーツも返さねばならない。
もう一度ショーツに視線を落とした小池の頬が緩む。
そして、そのまま個室を出てしまった。
「松崎部長……」
ドアを開けるとそこにはかの人がいた。
「会議室に来たまえ」
そう冷たく言い放たれ、小池の気持ちは天から地球の核まで落ち込む。
「はい……」
トボトボと件の会議室まで松崎の背中を追う。松崎が何か抱えていたがそれにも気づかない程、小池は項垂れていた。
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