おじ産直送 おパンティータイム

ベンジャミン・スミス

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第七話 もち肌コースは地雷危険地域

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「デザインDですか!」

一度は没になりながらも小池によって一番性行為を楽しめそうな代物に出来上がった奇跡のランジェリーだ。

「君の努力の結晶ともいえる代物だ。その企画へ向けるひたむきさ、同じサラリーマンとして尊敬する。君にとってやりがいのある仕事だと少しでも感じてくれたなら私も嬉しい。私もこれが成功するよう全力で挑もう」

と仕事という単語を誇張した。

(小池君、これは仕事なんだ耐えてくれ)

小池の瞳が微かに暗くなったが、先ほどの様に後ろ向きになってポーズを決めた松崎には見えていない。

「仕事ですもんね」
「ああ」
「きちんと隅々まで不備がないか確認しないとですよね……その紐、取っていいですか?」

いつの間にか背中にくっつくほど近寄っていた小池を彼より背の高い松崎は見下ろす。
小池の視線は松崎の臀部にあるが、声のトーンからして仕事に気合を入れたのだろうと思った。

「勿論だ。仕事の為なら私はいくらでも構わんよ」

仕事への一途な松崎の思いに、小池は紐に伸ばした手を止めた。

「いえ、やっぱりいいです。これは自分で確かめます。流石に同性とはいえ、局部を晒させるのは申し訳ないですから」
「そうか。では止めておこう。すまなかった。次のに着替えてくる」
「いえ。俺の方こそ仕事熱心な部長をそんな目で見てすみません……」

小池の最後の言葉はついたてに遮られた。
そしてデザインAも難なくクリアし、最後はデザインBだ。
再び小池の前に躍り出た松崎はデザインB──Tバックを履いている。そしてクルリと回りポーズを決める。

「これで最後だ」
「……」

デザインDからしおらしくなった小池の目が、デザインBを履いてポージングを決める松崎を見て丸く見開かれる。

「……」
「小池君?」

表情は歪んでいるが声を出さない小池。
前面は性器がレース越しに丸分かりだ。やはりそれは失礼だっただろうかと、せめてもの情けとして、松崎は臀部の方を向けてもう一度ポーズをとった。

「ち……」
「ち?」

大人しかった小池が「ち……ち……」と漏らしてユラユラと松崎に近寄る。

「ち……ち……」
「ち? ……うおッ?!」

——ガシッ‼

としゃがみ込んだ小池がTバックのせいで晒された綺麗な臀部を鷲掴みにする。
肩の震えは全身へ、そして松崎にも伝わる。
震える小池は鬼の形相をクワッと上げた。
そして口を大きく開く。

「ちがーーーう‼‼」

あまりの剣幕に松崎は固まった。
 下から松崎を見上げる小池の尻への握力が強くなる。

「違う違う違う! オッサンの尻っていうのは綺麗じゃ駄目なんですよ‼ これ何でこんなツルぺカ何ですか?!」
「何故ってエステに」
「エステェェェェェェ?!」

指圧で赤くなるほど握った臀部を

——パチーン‼

と叩く。

「ちょッ、どうしたというのだ小池君」
「エステって……エステってなんですか……まさか通ったんですか?」
「高級もち肌コースだ」
「はああああああ?!」

勢いよく立ち上がった般若の小池。
もう松崎には何が起こっているのか分からず、腫れた臀部を突き上げたまま、小池の怒りの視線を浴び続けた。

「オッサンといえば加齢臭、ほうれい線、つやのない肌は鉄板! そこに顎鬚があればなおよし‼ なのに……なのに部長はエステなんて行って……魅力半減じゃないですか‼ 俺は、どうすればいいんですか? この気持ちを抱えたまま、その尻を愛せと? 俺にはそんな苦行耐えられません! ぶ、部長の馬鹿ーーーーーー‼‼」

荷物を全て引っ掴み、小池は騒ぐだけ騒いだ挙句、ドアを蹴破る勢いで会議室を飛び出した。

「小池君! 待ちたまえ!」

慌ててスラックスを履き、松崎は会議室を出て追いかけた。
 しかしその姿は何処にもなく、オフィスへ戻ったが、小池はまだ帰ってきていなかった。

(小池君……)
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