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第四章 心満たされぬ九月
第二話 純粋な想い(※)
しおりを挟む モンスターの亡骸の口から出て来たライさんを見て、声も出せずに固まってしまう。
だってそれもそうだろう、死んだと思っていた人がいきなり目の前に出て来て平静を装える人がいるわけない。
「ラ、ライさん……?」
「ん?あぁ……、レース君何故君がここにいるんだい?首都に行った筈じゃなかったかな」
「あ、えっと……」
「顔が真っ青だね、暫くゆっくり深呼吸して落ち着いた方がいい、落ち着くまで待ってるからね」
ライさんはそういうと中にある袋のような物を口から外すと綺麗に折りたたんでいく。
とりあえず言われたように深呼吸をして、少しずつ気持ちは落ち着いては来たけど……冷静になる程彼がどうしてあの超広範囲を灰にする攻撃の中で生き残れたのかが疑問に思ってしまう。
「さて、落ち着いたかい?」
「……はい」
「なら良かった、とりあえずレース君の事だからどうして俺が生きているのか気になっているのだろうから……先にそっちを答えるよ、さっき出て来た袋に付与された魔術と能力のおかげだよ」
手に持った袋をぼくに見せてそういうけれど、あれは多分【空間収納】の魔術が付与された魔導具だと思う。
ただ素材が布だから燃えたら意味が無いと思うし、それ以上に空間収納の中に人が入れる何て聞いた事が無い。
「……空間収納に人が入れるの?」
「勿論入れるさ、ただ本来であれば術者が中に入ったら最後……出てこれないという意味ではとても危険だね」
「そうなんだ……、なら魔導具が壊れてしまったら出てこれないんじゃ?」
「そこはトキに付与して貰った能力のおかげだね、ハスと組む事が多いから俺の着る服や道具には【不燃】という一定時間燃えないようになっているんだ」
「あぁ……ハスの戦い方はいつも周辺に炎をばらまくから、確かに必要かも」
たまたまそういう火属性や、その派生形に対して耐性がある装備をしていたから助かったという事だったみたいだ。
そのおかげで今こうして生きているのだから、本当に良かったと思う。
「ただこの能力は発動してから魔力が尽きるまでの間決して燃える事が無い変わりに、非常に燃費が悪くてね……使えても半刻が限度だよ」
「一時間も使えるなら充分な気がするけど?」
「君はまだ体験してないから分からないと思うけど、ハスの特性【陽炎】は周囲の温度を急上昇させ近づく事さえ困難な状況を作り出すからね、状況次第では半刻でも足りない位だよ」
「一緒に戦ってる時に使ってるの見なかったけど……そんなに危険なんだ」
本当にそんな能力があるなら、使われた時に耐える事が出来るだろうか……。
……ただアキラさんと一緒に行動していた際に使っていただろうし、もしかしたら何らかの方法があるのかもしれない。
例えば自身の属性を纏ってみるとかだろうか、雪の魔力で冷気を纏えば熱気に耐えられるかも、ハスと合流したら相談してみようかな。
「それにしても驚いたよ、俺がアンデッドの身体を詳しく調べていたら、ドラゴンのアンデッドが現れてね」
「周囲に人のアンデッドもいたから危なかったんじゃ?」
「人のアンデッドに関しては雷の魔術で、筋肉を収縮させて動けないようにしておいたから問題無かったけど、ドラゴンに関しては不意を突かれたから反応に遅れたよ」
「……よくその状態で生き残れたね?」
「俺もそう思うよ、あの時遠くから閃光が近づいて来るのに気づいて咄嗟にドラゴンの口に魔導具をひっかけて中に入らなかったら間違いなく死んでたよ、そういう意味ではこの個体に感謝しないとね」
そう言ってドラゴンの方を向くと深く頭を下げて動かなくなる。
「ライさん?」
「ん?あぁ、そういえばメセリーにはこの風習は無かったね、栄花では死者に向けて目を閉じてお辞儀をした後暫く心の中で感謝の気持ちを伝える風習があるんだよ、君の育った国だと死者は直ぐに火葬した後に魔術で圧縮して魔力の篭った宝石にするんだったよね」
「そうらしいけど、身近で亡くなった人を見たこと無いから……経験した事は無いかな」
メセリーでは亡くなった人を宝石にする事で、その人が生前使えた魔術を込められた魔力の量に応じて使えるようになるらしい。
過去に【魔王】ソフィア・メセリーに、歴代の魔王の遺体を宝石に加工して指輪にしたものを見せて貰った時は綺麗に見えたけど、何時かはぼくも誰かを宝石にする日が来るのだろうか。
育ての親であるカルディア母さんか、又は老いて死別することになったダートかカエデのどちらかかもしれないし、無いとは思うけどルードとの戦いで死んだらぼくがそうなるかもしれない。
「まぁ、いずれ経験する事になるよ」
「ライさんは経験した事あるの?」
「勿論あるさ、栄花騎士団の任務で殉職した仲の良かった団員の葬式とかね……ってつい話が長くなって変な所に行ってしまったね」
「いえ、結構来てて楽しかったから大丈夫だよ」
「そう言って貰えると嬉しいけど、今はそれよりもどうしてここがこうなって、首都に行った筈の君が俺を探しに来たんだい?」
……ライさんの質問に答えるように、彼に会う前に【滅尽】アナイス・アナイアレイトとの間に起きた事や、その後のぼく達の行動について話すのだった。
だってそれもそうだろう、死んだと思っていた人がいきなり目の前に出て来て平静を装える人がいるわけない。
「ラ、ライさん……?」
「ん?あぁ……、レース君何故君がここにいるんだい?首都に行った筈じゃなかったかな」
「あ、えっと……」
「顔が真っ青だね、暫くゆっくり深呼吸して落ち着いた方がいい、落ち着くまで待ってるからね」
ライさんはそういうと中にある袋のような物を口から外すと綺麗に折りたたんでいく。
とりあえず言われたように深呼吸をして、少しずつ気持ちは落ち着いては来たけど……冷静になる程彼がどうしてあの超広範囲を灰にする攻撃の中で生き残れたのかが疑問に思ってしまう。
「さて、落ち着いたかい?」
「……はい」
「なら良かった、とりあえずレース君の事だからどうして俺が生きているのか気になっているのだろうから……先にそっちを答えるよ、さっき出て来た袋に付与された魔術と能力のおかげだよ」
手に持った袋をぼくに見せてそういうけれど、あれは多分【空間収納】の魔術が付与された魔導具だと思う。
ただ素材が布だから燃えたら意味が無いと思うし、それ以上に空間収納の中に人が入れる何て聞いた事が無い。
「……空間収納に人が入れるの?」
「勿論入れるさ、ただ本来であれば術者が中に入ったら最後……出てこれないという意味ではとても危険だね」
「そうなんだ……、なら魔導具が壊れてしまったら出てこれないんじゃ?」
「そこはトキに付与して貰った能力のおかげだね、ハスと組む事が多いから俺の着る服や道具には【不燃】という一定時間燃えないようになっているんだ」
「あぁ……ハスの戦い方はいつも周辺に炎をばらまくから、確かに必要かも」
たまたまそういう火属性や、その派生形に対して耐性がある装備をしていたから助かったという事だったみたいだ。
そのおかげで今こうして生きているのだから、本当に良かったと思う。
「ただこの能力は発動してから魔力が尽きるまでの間決して燃える事が無い変わりに、非常に燃費が悪くてね……使えても半刻が限度だよ」
「一時間も使えるなら充分な気がするけど?」
「君はまだ体験してないから分からないと思うけど、ハスの特性【陽炎】は周囲の温度を急上昇させ近づく事さえ困難な状況を作り出すからね、状況次第では半刻でも足りない位だよ」
「一緒に戦ってる時に使ってるの見なかったけど……そんなに危険なんだ」
本当にそんな能力があるなら、使われた時に耐える事が出来るだろうか……。
……ただアキラさんと一緒に行動していた際に使っていただろうし、もしかしたら何らかの方法があるのかもしれない。
例えば自身の属性を纏ってみるとかだろうか、雪の魔力で冷気を纏えば熱気に耐えられるかも、ハスと合流したら相談してみようかな。
「それにしても驚いたよ、俺がアンデッドの身体を詳しく調べていたら、ドラゴンのアンデッドが現れてね」
「周囲に人のアンデッドもいたから危なかったんじゃ?」
「人のアンデッドに関しては雷の魔術で、筋肉を収縮させて動けないようにしておいたから問題無かったけど、ドラゴンに関しては不意を突かれたから反応に遅れたよ」
「……よくその状態で生き残れたね?」
「俺もそう思うよ、あの時遠くから閃光が近づいて来るのに気づいて咄嗟にドラゴンの口に魔導具をひっかけて中に入らなかったら間違いなく死んでたよ、そういう意味ではこの個体に感謝しないとね」
そう言ってドラゴンの方を向くと深く頭を下げて動かなくなる。
「ライさん?」
「ん?あぁ、そういえばメセリーにはこの風習は無かったね、栄花では死者に向けて目を閉じてお辞儀をした後暫く心の中で感謝の気持ちを伝える風習があるんだよ、君の育った国だと死者は直ぐに火葬した後に魔術で圧縮して魔力の篭った宝石にするんだったよね」
「そうらしいけど、身近で亡くなった人を見たこと無いから……経験した事は無いかな」
メセリーでは亡くなった人を宝石にする事で、その人が生前使えた魔術を込められた魔力の量に応じて使えるようになるらしい。
過去に【魔王】ソフィア・メセリーに、歴代の魔王の遺体を宝石に加工して指輪にしたものを見せて貰った時は綺麗に見えたけど、何時かはぼくも誰かを宝石にする日が来るのだろうか。
育ての親であるカルディア母さんか、又は老いて死別することになったダートかカエデのどちらかかもしれないし、無いとは思うけどルードとの戦いで死んだらぼくがそうなるかもしれない。
「まぁ、いずれ経験する事になるよ」
「ライさんは経験した事あるの?」
「勿論あるさ、栄花騎士団の任務で殉職した仲の良かった団員の葬式とかね……ってつい話が長くなって変な所に行ってしまったね」
「いえ、結構来てて楽しかったから大丈夫だよ」
「そう言って貰えると嬉しいけど、今はそれよりもどうしてここがこうなって、首都に行った筈の君が俺を探しに来たんだい?」
……ライさんの質問に答えるように、彼に会う前に【滅尽】アナイス・アナイアレイトとの間に起きた事や、その後のぼく達の行動について話すのだった。
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