L

Lの正しい使い方

　Lの使用が制限されたことで、「フーディズム・タブレティズム騒動」は鎮静していった。
　Lに関する規制について、ベイカー博士はこう述べている。


　「Lは文明に脅威をもたらすものではない。人体に必要な栄養を供給し、健康を守る。それだけだ。

　今回の『L規制法』は、その目的に大きく貢献した。だが、18歳以上のみに許可されたことで、栄養失調症の乳幼児、そして未成年に供給することがほとんど不可能になった。

　私はこれについて、不満を抱いている。特に、貧困層の未成年は、日々栄養失調の問題に晒されている。Lをもっと治療の必要な人々に届けなければならない」


　以上の意見を受け、州議会では更なる議論が行われた。
　結果、Lは栄養失調の者に対して優先的に供給されることが決定した。

　方法としては、次の通りである。まず、患者は医師から「低栄養」などの診断を受け、Lを処方される。
　診断書や処方データはL・ライセンスセンターによって記録される。そして、Lを治療目的で使用すると認められた場合、Lを無料で使うことができる。

　診断がない限りは、Lは有料になる。Lは元々医療用医薬品だが、診断内容をより厳密にすることによって、以前のあり方と区別した。
　つまり、「慢性的な低栄養」と判断されない限り、Lは無料では処方されないことになった。
　
　また、Lは「メディケイド」に加入している者に対して優先的に供給されるようにもなった。
　これは、メディケイドに加入する人々が、貧困によって低栄養に陥っている可能性が高いと考えられるためである。
　しかし、やはりこの場合においても医師の厳密な診断が必要になる。


　また、今回の会議では、過剰摂取についても取り上げられた。
　会議では、過剰摂取の防止のため、L・ライセンスセンターの管理をより厳しくした方が良いとの声が上がった。

　その方法としては、同センターで、患者に対して過剰摂取をしないという同意書を書かせ、万が一過剰摂取した時は今後の使用を禁止するなどが挙げられた。
　過剰摂取防止について、州議会は今後も議論を進めると述べた。


　今回の決定について、ベイカー博士はこう反応した。

　「Lを正しく使うには、正しい制度が必要であることを思い知った。

　開発者として、私は人々にLを正しく使ってもらいたいと思っている。だから、Lを使う際は、くれぐれも使い方に気をつけてほしい。

　Lは文明に脅威をもたらすものではない。人体に必要な栄養を供給し、健康を守る。何度でも言おう。目的はそれだけだ」