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エロストラート
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『エロストラート』のポールは無差別殺人を図っていた。それは、後世に名を残したいという単純な理由からだった。
彼は6発の弾が込められた銃で、6人を殺害しようとしたが、結局正確に撃ったのは1人だった。
彼は最後の1発を残し、その銃口を自分の口に入れて自殺を試みた。
ポールが発砲を中断した理由は明らかにされていない。
恐怖で撃てなかったのか、良心に従ったからなのか、我に帰ったからなのか、その点を知るための手がかりがほとんどない。
ただ最後に銃を投げ捨てたことだけが描写されているだけで、本質的な説明は何処にもない。
読み取れるのは、無差別殺人を試みる前の彼が相当な自信家だったということだけだ。
彼は自身を爆薬と見なし、いずれ自分が世界をマグネシウム閃光のように輝かすであろうと想像を膨らませていた。
ポールはキリーロフやジャックのように、形而上学や本能に突き動かされるということがなく、「後世に名を残したい」という、極めて実存主義的な目標のもとに行動した。
加えて、彼は102名のフランス作家に送った102部の手紙の中で、人間を愛する思想に対して反感を表していた。
彼は、自分は生来人間を愛することができないのだと書いた上で、フランス作家をユマニストと見なし、無差別殺人を持って彼らの思想に対抗しようとした。
つまるところ、彼は反ユマニストとして、アンチヒーローとして偉業を成し遂げたかったのかもしれなかった。
しかし、その目標のために自殺や他殺を選ぶことはなく、彼は結局扉を開け、逮捕を選んだ。
僕は首に包帯を巻きながら、サルトルの『エロストラート』を読んでいた。
あまりにも良心的な本だったので、僕は傷口が開くほど笑ってしまった。
何も命を捧げろと強いるわけではないが、あまりにも一貫性のない結末に拍子抜けしてしまったのだ。
皮肉なことに、その結末はあまりにも人間的だった。しかし、僕はその結末を好んだ。
それは単純に、今までの本とは異なる結論を出したからという理由だった。
ポールは死のうとしたが、死ななかった。それで充分だった。
生来人間を愛することができないことに苦悶し、抑圧に満ちた世界を変えてみたいがどうすることもできないと無力感に陥るのは、何もポールだけではなかったからだ。
彼は6発の弾が込められた銃で、6人を殺害しようとしたが、結局正確に撃ったのは1人だった。
彼は最後の1発を残し、その銃口を自分の口に入れて自殺を試みた。
ポールが発砲を中断した理由は明らかにされていない。
恐怖で撃てなかったのか、良心に従ったからなのか、我に帰ったからなのか、その点を知るための手がかりがほとんどない。
ただ最後に銃を投げ捨てたことだけが描写されているだけで、本質的な説明は何処にもない。
読み取れるのは、無差別殺人を試みる前の彼が相当な自信家だったということだけだ。
彼は自身を爆薬と見なし、いずれ自分が世界をマグネシウム閃光のように輝かすであろうと想像を膨らませていた。
ポールはキリーロフやジャックのように、形而上学や本能に突き動かされるということがなく、「後世に名を残したい」という、極めて実存主義的な目標のもとに行動した。
加えて、彼は102名のフランス作家に送った102部の手紙の中で、人間を愛する思想に対して反感を表していた。
彼は、自分は生来人間を愛することができないのだと書いた上で、フランス作家をユマニストと見なし、無差別殺人を持って彼らの思想に対抗しようとした。
つまるところ、彼は反ユマニストとして、アンチヒーローとして偉業を成し遂げたかったのかもしれなかった。
しかし、その目標のために自殺や他殺を選ぶことはなく、彼は結局扉を開け、逮捕を選んだ。
僕は首に包帯を巻きながら、サルトルの『エロストラート』を読んでいた。
あまりにも良心的な本だったので、僕は傷口が開くほど笑ってしまった。
何も命を捧げろと強いるわけではないが、あまりにも一貫性のない結末に拍子抜けしてしまったのだ。
皮肉なことに、その結末はあまりにも人間的だった。しかし、僕はその結末を好んだ。
それは単純に、今までの本とは異なる結論を出したからという理由だった。
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