NATE

九時木

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55. スタジオ

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　「こちらS2、S2。ただ今、Nテレビ局のスタジオに到着しました」

　NATESのメンバーの一人が、IP無線機でダンに状況を報告する。

　「了解。そのまましばらく待っていてくれ。
　主調整室と副調整室の方は、もう着いたか？」

　「到着しました」NATESのメンバーたちの声が、無線機を通じて同時に伝わる。

　「オーライ。コマーシャルに切り替わる瞬間に、俺とザイオンがハッキングで停電を起こす。それまではしばらく待機だ。いいな？」

　「オーケー」NATESのメンバーたちはIP無線機をポケットにつけたまま、その場でじっと身を固めた。

　10月21日月曜日、午後21時。
　NATESのメンバーたちは、ダンの指令のもと、テレビ局に潜入していた。

　『NATEを巡る事件について、ニュースをお伝えします。
　先日に逮捕された2人の男性についてですが……』

　「チャンネル8では、NATEに関する事件が生放送中だ。
　今、俺たちの仲間が警察に現行犯逮捕されている様子がテレビに映っている。何とも屈辱的な光景だな」

　「全く許せないね」メンバーの男の言葉に、もう一人の男がささやく。
　男たちは警備員と清掃員に扮装していた。彼らは肩を並べながら、スタジオのドア前に構えていた。

　「コマーシャルがもうじき終わる。お前たち、準備はいいな？」ダンの声がIP無線機を通じて伝い、男たちは身構える。

　「いつでもオーケーですよ」

　「了解。これよりカウントダウンを始める。停電まで、残り5秒、4秒……」

　3、2、1、ダウン。スタジオの照明が落ち、途端に真っ暗になる。

　「今だ。一斉に入れ」

　ダンの掛け声とともに、NATESのメンバーたちはドアを素早く開け、次々と中に入っていく。

　スタジオに、スタッフの悲鳴が響き渡る。NATESのメンバーたちは急いでスタッフの手首をテープで縛り、彼らにささやいた。

　「安心しなよ。俺たちは武器を持っていない。
　たった30秒だけ欲しいんだ。その間だけ、俺たちに発言権をくれ。いいな？」

　NATESのメンバーがスタッフを諭している間に、選抜メンバーが響き渡るスタジオカウンターを占拠する。

　主調整室と副調整室には、全頭マスクを被った彼らの姿が映し出されていた。
　
　電力が一時的に復活し、スタジオが薄明かりで包まれる。
　スタッフたちは目を見開きながら、NATESのメンバーたちの姿を見ていた。

　メンバーの一人がマスクを外し、顔を見せる。
　彼はカメラを真っ直ぐに見つめ、ゆっくりと口を開いた。

　「こちらA3、A3。Nスタジオに無事到着。ただ今より声明を始める」

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