NATE

九時木

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45. 講演会

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 「30、31、32……よし、皆集まったようだね」

 ゴスがマイク越しに、テーブル席に座ったメンバーたちを数える。
 部屋の前にはホワイトボードが置かれており、大きな文字で『講演会』と書かれている。


 10月17日、木曜日。私はNATESを訪れ、講演会に参加していた。
 会場はざわついており、ゴスが制するように声を張った。

 「静かにするんだよ、あんたたち。21時を回ったら、講演会があるんだからね」

 58、59、60秒……時計が21時に到達し、会場が一斉に静まり返る。
 ゴスはホワイトボードの前に立ち、マイクを持って話を始めた。


 「午後21時0分。これより、第5回目の講演会を始める。
 今日の講演者はあたし、ゴスだよ。耳を澄まして最後まで聴くんだね」

 ゴスは挑戦的な眼差しで、メンバーたちを眺め回す。
 ふと彼女と私の視線がぶつかり、私はぎくりとした。一方のゴスは不敵な笑みを浮かべ、話を続けた。

 「皆、酒は持ってきているかい?今夜はとびきりシケた話をするよ。だが、私にとっちゃ二度と忘れられない思い出だ。
 そいつはあたしの頭の中で、常にぐるぐる回っている。暗い暗い思い出さ……」

 ゴスはトーンを落とし、白い目元に触れた。
 会場の照明が落ち、ゴスの下に明かりがつく。

 人々は固唾を飲み、話にじっと耳を傾けた。


 「見ての通り、あたしの片目は白い皮膚で覆われている。これが何だかわかるかい?」

 メンバーたちは「ノー」と言い、首を振って見せる。
 ゴスは少し間を置いてから、口を開いた。

 「尋常性白斑じんじょうせいはくはんだよ。皮膚の色が抜けて、目元だけ真っ白になっちまったんだ。
 原因はよくわかっていない。だが、医師からは自己免疫疾患の一つだと言われている。

 自分の免疫が皮膚を攻撃して、脱色したんだよ」

 ゴスの説明を聞いた人々が、悲しげな声で相槌を打つ。
 ゴスはマイクをぎっと握り、話を続けた。

 「こいつは生まれつきの症状だった。目元が白い。それ以外の症状はなかった。
 だけど、周りは散々にあたしをからかったんだ」

 ゴスが一歩踏み出し、語気を強める。
 私はゴスの白斑をじっと見ながら、話を聞いた。

 「今夜の講演会では、あたしの過去について語るるよ。
 聞きたくないやつは、今からでもウチに帰っちまっていい。だが、あたしは最後まで聞いてもらいたい。わかるね?」
 
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