NATE

九時木

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13. 参加

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 レオの言った通り、討論は2時間続いた。
 会場は騒がしい。メンバーは疲弊しきった様子を見せることもなく、終始討論にのめり込んでいた。

 23時になり、メンバーが帰る支度をする。荷物を持ち、会場を次々と去っていく。
 
 「今夜は楽しめたかい?」

 席から立ち上がったレオが、私たちのもとへ歩み寄り、声をかけた。
 ダンが私に視線を送り、様子を伺う。私は顔を上げ、レオをまっすぐに見つめながら言った。

 「今までにない、新鮮な体験でした。すっかり見入ってしまって、時間を忘れたほどです」

 「そいつは良かったよ」レオが満足げに笑う。

 「次は火曜日の同じ時間にやるんだ。良かったら、君も来るといいよ」

 レオは期待のこもった視線を向けると、「また次回」と愛想良く言い、会場を後にした。


 静まり返った会場に、ダンと私が残る。
 私はそれぞれの椅子を整えるダンに、そっと話しかけた。

 「いつからこの場所を?」

 ダンが私の言葉に反応し、椅子を1つ引く。
 彼は椅子に座り、ゆったりとくつろぎながら話した。

 「半年前、オーナーからこの場所を借りたんだ。
 元々はカフェを経営していたらしいが、辞めちまってな。コワーキングスペースと言ったが、ほとんど貸切状態だ」

 ダンが室内をぐるりと見渡す。私がテーブルを眺めていると、彼が独り言のように呟いた。

 「はじめはテーブルも1つだった。メンバーも俺とダチの4人で話し合っていた。
 だが、ウェブサイトを作ったら、いつの間にか人が増えちまった。何が起こるかわからないもんだな」

 ダンが私に目を移し、静かに笑う。
 少しの沈黙が訪れた後、彼はそっと口を開いた。


 「メンバーになるのなら、俺は歓迎するぜ。

 会員費もなければ、毎週参加の義務もない。好きな時に来れば、それでいい。」

 「討論好きにはうってつけの場所だと思うが」ダンが椅子を1つ引き、そっと座りながら言う。

 「討論に自信はないのですが……」私は目を伏せ、やや躊躇いがちに返す。

 「見るだけでも構わないさ」ダンが私を見つめ、スマートフォンをいじりながら説明する。

 「メンバーになれば、会員限定のサイトが見れる。今日の討論内容もサイトからチェックできる。見て楽しむやつも少なくないぜ」

 ダンがスマートフォンの画面を見せながら、私を勧誘する。

 『NATES』と書かれたウェブサイト。アーカイブがずらりと並び、興味をそそるテーマが載せられている。

 NATE。未知の世界。人々の好奇を掻き立てる存在。
 私はしばらく考え込んだが、やがて意を決してダンに伝えた。

 「参加します」


 手続きは簡単だった。
 ウェブサイトを訪問し、登録欄に必要事項を打つだけだった。
 確認メールが届き、「入会完了」の文字が目に映る。

 ダンが椅子から立ち上がり、私の肩に手を置いた。
 
 「手続き完了だ。よろしくな、エマ」
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